倍電圧整流|コンデンサとダイオードで二倍

倍電圧整流

ダイオードとコンデンサで交流の半周期ごとに電荷を蓄え、ピーク電圧を積み上げて直流を得る方式を倍電圧整流と呼ぶ。理想無負荷では入力ピークの2倍が得られ、半波型は簡潔、全波型はリップルが小さい。Greinacher、Delon、Villardの形があり、段数を重ねれば多倍電圧化できる。トランスを用いず高い直流を得られる反面、出力インピーダンスが高く負荷で電圧が下がりやすい。

動作原理

交番する極性に応じて一方の半周期でコンデンサC1をVpまで整流充電し、次の半周期でその電圧を入力に直列加算してC2を約2Vpまで充電する。以後は負荷消費分を各半周期で補う。非理想としてダイオードの順方向電圧Vd、コンデンサの漏れ・ESR、逆回復や配線インダクタンスが効き、理想値から低下・波形歪が生じる。

基本回路

  1. 半波Greinacher型:素子が少なく構造が単純で、倍電圧整流の基本形。
  2. 全波Delon型:2つのコンデンサを交互に直列化し、リップル周波数が2fとなる。
  3. Villard型:電圧ステップを直列に積むクランプ系の原形。
  4. Cockcroft-Walton:多段化して高電圧を得る代表的回路。

定数選定と耐圧

ダイオードの逆耐圧は各素子に生じる最大逆電圧より十分高く取る。半波倍電圧整流では各ダイオードに概ね2Vpがかかるため、少なくとも2Vp、実務では×1.5〜×2の余裕を推奨する。コンデンサは許容リップル電流とESRを確認し、容量CはI、許容リップルΔV、周波数fから概算する。

リップルと負荷特性

無負荷理想はVout≒2Vpだが、実際は2個分のVdで低下し、負荷での低下は放電に比例する。半波のリップルは近似ΔV≒I/(f・C)、全波は有効周波数が2fとなり同条件でリップルが半分となる。出力インピーダンスは1/(f・C)で支配され、Iが増えるほど電圧降下が顕著。

高電圧化と段数

Cockcroft-Waltonのn段は無負荷で約2nVp、負荷I下では電圧ドロップが大きく、近似的にI・n(n+1)/(f・C)のオーダで増える。段間の電圧ばらつきを抑えるためにバランス抵抗やブリーダ抵抗を設け、過渡の過電圧と帯電を緩和する。高電圧では沿面距離、コロナ、部分放電、誘電損失・発熱の管理が不可欠である。

応用例

  • CRTやPMTなどの高電圧低電流源
  • イオン源、静電チャック、帯電器
  • 家電の高圧源(電子レンジの半波倍電圧整流など)
  • トランスレスの簡易高圧電源やエナジーハーベスティング

設計例

100Vrmsから全波倍電圧整流で約280Vdc/10mAを得る。Vp≒141Vで理想2Vp≒282V、ダイオード2個で約1.4V低下。ΔV=5V、2f=100HzならC≒I/(ΔV・2f)=0.01/(5・100)=2e-5F、約20μF。逆耐圧は少なくとも2Vpで400V以上、余裕をみて600〜800V定格を選び、突入抑制の直列抵抗やNTC、残留電荷対策の数百kΩブリーダを置く。

安全と規格

高電圧を扱うため感電・発火の危険がある。クリアランスと沿面距離はIEC/JISの絶縁協調に準拠し、汚染度・過電圧カテゴリを踏まえて材料と距離を決める。定格超過の防止、放電経路の常設、筐体接地と遮蔽、試験時の残留電荷確認を徹底する。

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