フィン|表面積拡大で対流と放熱効率向上

フィン

フィンとは、熱伝達面積を人工的に拡大して熱交換量を増やすための伸長面である。基材からの熱伝導と、周囲流体との対流・放射を組み合わせて作動し、ヒートシンクや熱交換器、内燃機関の冷却など幅広い用途で用いられる。材料は高熱伝導のAlやCuが主で、腐食・強度・コストとの総合最適化が要点である。

熱伝達における役割

フィンは、限られた基板面積で有効伝熱面積Aを増やし、q=hAΔTのAを拡大して熱量qを高める装置要素である。基部温度T_bからフィン内部へは熱伝導k、周囲へは対流hと放射εσが関与する。実際の温度は先端に向け低下するため、理想面積増加分すべてが有効とはならず、効率評価が重要となる。

形状と種類

  • 平板フィン:押出や積層で作りやすく、電子機器の放熱で一般的
  • ピンフィン:丸柱や正方柱で多方向から流れを受け、混合促進に有利
  • 環状フィン:管外面の面積拡大に適し、空調・冷凍用熱交換器で広用
  • 波形・ルーバフィン:境界層を繰り返し破壊し高伝熱、ただし圧損増
  • 櫛形・分岐フィン:軽量化と整流を両立させる設計で用いられる

フィン効率 η_f

フィン効率η_fは、「実際のフィン熱流」/「全体が基部温度T_bだと仮定した熱流」で定義する。直線一様断面・先端断熱ではη_f=tanh(mL)/(mL)で近似され、m=sqrt(hP/(kA_c))である。kが高く、Lが短く、断面A_cが大きいほどη_fは高い。

フィン有効度 ε_f

フィン有効度ε_fは、付加したフィン1枚が、同じ基板面積の平滑面に比べどれだけ熱移動を増やすかの指標である。一般にε_f>2程度を目標にし、圧力損失や重量を含めた全体最適で採否を判断する。

設計パラメータ

  • 材料k、厚みt、長さL、周長P、断面A_c(伝導)
  • 流速u、h、レイノルズ数Re、ヌセルト数Nu(対流)
  • ピッチp、枚数N、基部幅W(実装制約)
  • 接触熱抵抗R_c、仕上げ、表面粗さ

圧力損失とトレードオフ

フィンで流れが狭まり乱れが増すとΔpが上昇し、送風・ポンプ動力が増える。伝熱性能はColburn j-factor、抵抗はfで評価し、j/fやj^3/fのような複合指標で熱・流体の総合効率を比較する設計が有効である。

製造法

  • 押出・圧延:Al合金で長尺の平板フィンを量産
  • 機械加工:Cuブロックからフィンを切削、高性能だが高コスト
  • ブレージング/ロウ付け:管と環状フィンの接合に多用
  • 積層造形:自由形状フィンで局所最適、試作向け

自然対流・放射の要点

自然対流はhが低く、過密配置のフィンは境界層干渉で性能が頭打ちになる。適切なフィン間隔と表面放射率の確保が効き、黒化処理で放射寄与を高める設計も有効である。

応用分野

  • 電子機器ヒートシンク:小型フィンで空冷
  • 空調・冷凍熱交換器:ルーバフィン+管列
  • 自動車:ラジエータやオイルクーラフィン
  • 発電:ボイラ節炭器、空冷凝縮器の環状フィン
  • 建築:暖房ラジエータフィン

航空・サーフ分野の用語

航空機では垂直尾翼をfinと呼び、サーフボードの舵面もfinと称する。工学で言うフィンは主に伝熱要素であり、文脈で区別して扱う。

設計の簡易手順

  1. 熱負荷と許容温度差ΔTの把握
  2. 流体条件からhを推定
  3. 仮のフィン形状を設定しm、η_f、ε_fを計算
  4. 圧損と体積・質量を評価
  5. ピッチ・高さを最適化しR_c対策を施す
  6. 試作・実測で妥当性を確認

よくある誤り

  • 低k材料の採用でフィン内部に温度降下が大きい
  • 基部のR_c無視で実力低下
  • 過度な薄肉・高アスペクトフィンで曲げ・共振
  • 過密ピッチで詰まり・清掃困難
  • 送風騒音や消費電力の過小評価

記号の定義

  • h:対流熱伝達率、k:熱伝導率、L:長さ、t:厚み、P:周長
  • A_c:断面積、A_f:フィン表面積、m=sqrt(hP/(kA_c))
  • η_f:フィン効率、ε_f:フィン有効度、T_b:基部温度

参考式

直線フィン(一様断面・先端断熱)の代表式は、q_f=η_f h A_f (T_b−T_∞)、η_f=tanh(mL)/(mL)、m=sqrt(hP/(kA_c))である。先端対流や放射、先細フィン、高レイノルズの乱流促進形状では適用範囲が異なるため、実験相関やJIS/ISO整合の設計資料で補正することが望ましい。