位相制御技術
交流電源から供給される正弦波の一部を意図的に切り取ることで電圧や電力を制御する方法が位相制御技術である。具体的にはサイリスタやトライアックなどのパワーデバイスを用い、正弦波の位相角を調整してオンオフのタイミングを変化させることで、負荷に加わる有効電力を制御する仕組みが根幹となっている。比較的シンプルな構成で実装しやすく、調光器やヒーター制御など幅広い分野に応用されている一方、高調波成分や力率低下などの課題も抱える。高性能化が進む現代において、この位相制御技術をいかに効率的かつ安定的に活用するかが大きなテーマとなっている。
制御の基本原理
交流波形は正弦波として1周期ごとに極性が変わる。位相制御技術では、サイリスタやトライアックにゲート信号を与えるタイミングを遅らせることで、波形の一部を切り取り、出力電圧を下げる。切り取りが大きいほど平均電圧は低下し、負荷に流れる電流も減少する。逆に位相角を小さくすれば出力は大きくなる。こうした方法は構成要素が比較的少なく、アナログ的な回路制御でも実現可能であるため、家庭用や産業用の制御回路で広く用いられている。
「フーリエ解析」を学べば,すべて系統的に理解できます.
●リアルタイム信号処理における「FFT」や「z変換」
●制御理論における「ボード線図」や「位相余裕」
●電子回路における「インピーダンス」技術者のための本質を学ぶ数学3 フーリエ解析https://t.co/nk4NmEetNJ pic.twitter.com/qOt2nD2N7k
— リニア・テック 別府 伸耕 (@linear_tec) January 13, 2025
サイリスタとトライアック
位相制御を実現する中心的な半導体素子がサイリスタとトライアックである。サイリスタは主に単方向(片方向)での電流制御に使われ、交流の場合にはダイオードブリッジとの組み合わせで全周期制御を行う。一方、トライアックは交流を直接制御できる素子であり、家庭用調光器や小規模ヒータの制御などに適している。どちらも一旦オン状態に入ると、電流がゼロになるまでオフに戻れない特性を持ち、位相制御技術の要となっている。
サイリスタとトライアック
【HVDCの制御じゃ!】
前回に引き続き、400V昇圧回路の負荷側装置を研究していきます。トライアックで放電するところまでは同じですが、充電用のMOSFETも同期して動かし、1ボタンで充放電出来る構成に。スイッチは絶縁されているので、今後マイコン等で制御し連射したいですね!#毎日進捗 348 pic.twitter.com/epjjkblxXr— こいるガン⑨ (@coilgun_9) December 13, 2024
トライアック
部品を探しに倉庫漁ってたら
昔に仕事で使ってた部品が出てきた
最近は交流制御なんかあまりしないから全く使わなくなった
昔は大きな電流を扱う時はサイリスタよく使ったけど今はFETとIGBTに置き換わってる
若い頃にサイリスタで直流を制御出来るって言ってたなぁ〜
今なら試せる? pic.twitter.com/5jeoaGWoQN— yas (@yas0107) April 29, 2025
調光器への応用
最も身近な応用例として挙げられるのが調光器である。白熱電球やハロゲンランプなどを段階的に明るくしたり暗くしたりするには、正弦波の一部をカットして投入される電力を調整する。回路自体は簡素で低コストである一方、波形の歪みによって高調波が発生しやすく、LED照明ではちらつきや誤作動を起こすケースがある。そのため近年では、LED照明側でトライアック調光に対応したドライバを組み込むなど、双方の設計を調和させる方向で進歩している。
逆に技術的に面倒くさいのは、トライアックによる位相制御の(白熱電球用)調光回路に対応するLED電球用電源回路などという分野
— はとほるちゃん (@hathol_chan_) January 8, 2015
ヒーター制御の具体例
産業用や家庭用のヒータを制御する際も位相制御技術は有効である。電熱線やセラミックヒータに加わる電圧を段階的に変化させることで、温度の上昇カーブを調整し、過剰な消費電力を抑えながら所望の温度をキープできる。ただしヒーターは慣性が大きいため、位相制御で波形を細かく切ったとしても、温度の立ち上がりにタイムラグがある。そのためPID制御などのアルゴリズムと組み合わせ、全体的な熱管理を行うアプローチが広く採用されている。
位相制御のメリット
- 回路構成が簡素:サイリスタやトライアック、簡易なゲート回路で制御可能。
- 低コスト:電力制御のための追加部品や放熱機構が比較的少なくて済む。
- 瞬間的な制御が可能:ゲートのオンタイミングを変えるだけで素早く出力を調節できる。
高調波と力率低下
一方、正弦波の一部をカットすることで波形が歪むため、高調波成分が多く含まれるようになる。これが系統電源へ逆流すると、変圧器や配線に不要な電流を流し込むことになり、装置の発熱や故障リスクを高める。さらに力率が低下し、無効電力成分が増加するため、設備全体の電力効率が落ちる場合もある。そこで、フィルタ回路や力率補償装置(PFC)を併用して波形を補正し、系統側へ与える影響を抑える対策が行われる。
位相制御とPWM制御の比較
位相制御技術とよく比較されるのがPWM(Pulse Width Modulation)制御である。PWM制御は直流やインバータ出力のパルス幅を変調することで電力を制限する方式であり、一般に力率面で有利とされる。一方、位相制御は交流を直接扱うのが強みであり、追加の整流や大規模回路が不要という利点がある。負荷特性やシステム要件に応じてどちらを採用するか判断する必要があるが、低コスト・簡易性を重視する場面ではいまだに位相制御技術が選ばれるケースが多い。
多分、シリンダーに数十個のセンサーが入ってるんでストローク、加速度センサー、PWM制御、位相反転技術をマイコンで制御してサイクル、ジュール制御を行ってるはず、、。なんで外部から3端子レギュとか使ってジュール上げるのはできないはず pic.twitter.com/jRVg32q1kA
— CQBフィールド UNとカスタム工房 光線銃のやまぎょ (@yamagyo1) July 20, 2016
ノイズ対策と安全設計
サイリスタやトライアックのオンオフ切り替え時には急激な電圧変化が発生し、EMIノイズが生じやすい。これを放置すると周辺機器への干渉や誤動作を引き起こす恐れがあるため、スナバ回路やチョークコイルなどを用いたノイズ抑制策が欠かせない。また、強電を扱う場合は安全規格に基づき十分な絶縁距離を確保し、トランジェント電圧への保護機構を設けるなど、安全面での配慮も重要な課題となっている。
高効率化への取り組み
- 高調波フィルタ:LCフィルタやアクティブフィルタを組み合わせ、出力波形を整える。
- 力率改善:同期整流や専用制御回路を用いて、系統電流の歪みを低減する。
- 半導体素子の進化:IGBTやSiCデバイスなどの低損失化により、スイッチングロスを減らす方向性が模索されている。