インダクタ|電気回路の安定動作を実現する部品

インダクタ

インダクタとは、電気回路において磁界を利用してエネルギーを蓄えたり、電流の急激な変動を抑制したりする受動部品である。一般的にはコイル状の導線を巻き上げた形状が多く、英語でInductorと呼ばれる。電磁誘導の性質を活用することで、交流(AC)回路やスイッチング電源、ノイズフィルタなど幅広い分野で使われている。電流の変動があると磁界が発生し、その磁界が変化すると導線に電圧が生じる原理(自己インダクタンス)が基盤である。コンデンサが電荷を蓄える役割を持つのに対し、インダクタは磁界にエネルギーを蓄える点が大きな特徴と言える。

動作原理

インダクタの動作原理は電磁誘導に基づく。導線に流れる電流が時間的に変化すると、その周囲に時間的に変化する磁界が発生する。このとき、レンツの法則に従って変化する磁界が元の電流変化を打ち消すような方向に誘導起電力を生じさせる。これにより電流の変化が緩和され、短時間での急激な電流の立ち上がりや立ち下がりを抑制できる。直流(DC)成分に対しては抵抗成分がほぼゼロであり、交流成分には周波数に応じたインピーダンスを持つことから、フィルタ回路やチョークコイルとして多用されている。

材料と構造

インダクタに用いられるコア材料は、磁束の通り道として重要である。代表的なものとしてフェライトコアや鉄心コアが挙げられ、これらは高い透磁率を持つため小型で高インダクタンスを実現しやすい。一方、エアコア(空芯)の場合は磁性損失が小さく、より高周波帯での性能が期待できるが、同じインダクタンスを得るには巻き数を増やす必要がある。構造的には単層巻きや多層巻き、トロイダル型やロッド型など多彩な形状が存在し、目的とする周波数帯域や許容電流、使用温度範囲などに応じて選択される。

回路での応用

  • フィルタ回路:LCフィルタやπ型フィルタに組み合わせ、特定の周波数成分を抑制
  • 電源回路:スイッチング電源のチョークコイルやリアクタとして使用し、リップル電流を低減
  • 高周波回路:共振回路のコイルやアンテナ調整用のコイルとして、周波数選択特性を実現
  • ノイズ対策:ノイズの流入や放出を防ぐEMIフィルタの一部として機能

選定時の留意点

インダクタを選定する際は、動作周波数帯域、許容電流、直列抵抗(ESR)などを総合的に考慮すべきである。周波数特性がコア材質や巻数などの設計要素で大きく変化するため、想定動作周波数において十分なインダクタンス値を維持できるものを選ぶ必要がある。また、電流値が大きい場合はコアの飽和特性にも注意が必要で、飽和するとインダクタンスの急激な低下や発熱を招く可能性がある。実装形態としては、表面実装型やスルーホール型などがあり、基板のスペースや実装コストに合わせて選択することが多い。

安全性や留意事項

インダクタは発生する磁界やコアの損失によって発熱が生じることがあるため、熱設計は重要である。特に高周波領域で使用される場合は、渦電流損失やヒステリシス損失が大きくなる傾向があるので注意が必要だ。また、機械的な衝撃や振動が加わる環境では、コイル巻線の破損やコアの割れを防ぐための樹脂封止や振動吸収対策が行われることがある。実際の回路設計では周囲のコンデンサや抵抗と合わせて特性を最適化し、所望の周波数特性やエネルギー蓄積能力を引き出すことが重要となる。