半月キー、キー溝および適応する軸径

半月キー、キー溝および適応する軸径

半月キー、キー溝および適応する軸径は、回転要素(歯車、プーリ、カップリングなど)と軸との間でトルクを確実に伝達するための要素である。半月キー(Woodruff key)は半円板を一部切り取った形状で、軸側の円弧状のキー溝(キーシート)に収まる。自己位置決め性に優れ、テーパ軸や小径軸に用いられることが多い。キー溝は軸とハブの両方に加工され、はめあい、公差、強度計算を踏まえて選定・設計する。

半月キー(Woodruff key)の概要

半月キーは円弧面が軸の円筒外周と親和するため、組立時に自然と姿勢が定まり、芯出しが容易である。平行キーに比べて有効長さが短くなりやすいが、嵌合の自己調芯性によりテーパ軸や面取りの大きいハブでも接触が安定する。標準はJISやISOで形状・寸法系列が規定され、呼び番号に応じて「幅、直径、半径、厚み」の組合せが決まる。

キー溝(キーシート)の形状と加工

キー溝は、軸側は半月キーに合わせた円弧状、ハブ側は直線状である。加工は軸側にWoodruffカッタ、ハブ側にエンドミルやキーシータを用いる。溝端は応力集中を避けるため、底部に適切なRを設ける。面粗さは接触面圧と嵌合の安定性に影響するため、一般にRa数μmオーダを目安とし、切削痕の段差やバリは除去する。切削後は脱脂・防錆を行い、組立前に面当たりを点検する。

適応する軸径の考え方

適応する軸径は、標準規格(例:JIS B 1302:半月キー及びキー溝)における「軸径区分→キーの呼び番号・幅」の組合せに基づいて選ぶ。設計ではトルク、許容面圧・せん断応力、ハブ幅、加工可能な溝深さを同時に満たす必要がある。一般に軸径が大きいほどキー幅・径は大きい系列を採るが、ハブの座屈や端部からの縁距離もチェックする。

選定手順(実務フロー)

  1. トルクT、軸径d、ハブ幅Lの想定値から、規格の「軸径区分→呼び」表で候補のキー幅bを得る。
  2. 有効長さl(ハブ幅から面取り・逃げ・余裕を差し引いた長さ)を見積もる。半月キーは曲率のため、実効長さleff≒k·l(k≒0.6〜0.8)を用いる。
  3. せん断と面圧の照査を行い、許容値以下かを確認する。過大なら幅・呼び番号を上げるか、ハブ幅を確保する。
  4. 加工性(使用カッタ径、溝深さ、干渉)と公差等級を再確認し、図面に寸法・公差・表面粗さ・熱処理を明記する。

設計計算の基本式

キーの設計では、主に「せん断」と「面圧」を照査する。平均せん断応力は τ = 2T / (d · b · leff)、平均面圧は p = 4T / (d · b · leff) を用いるのが通例である(平行キーの基本式を半月キーの実効長さで補正)。許容値は材料強度と安全率から設定し、一般的に τallow は材料降伏の約0.3〜0.5程度、pallow は接触面の許容面圧に依存する。ねじりによる微動とフレッティングを避けるため、軸・ハブのはめあい、キーの面当たりを良好に保つことが重要である。

概算例(数値は一例)

例えば d=30 mm、T=120 N·m、規格候補で b=8 mm、l=18 mm、k=0.7 とすると leff=12.6 mm。τ=2·120/(0.03·0.008·0.0126)≒790 MPa、p=4·120/(0.03·0.008·0.0126)≒1.58 GPa となり、これは明らかに高い。実務ではハブ幅を増やす、呼びを上げてbやlを大きくする、トルクピークを低減するなどの対策を検討する。数値は荷重条件・材料により大きく変わるため、最終設計は規格表と材料データで確認する。

材料・熱処理・表面性状

キー材は機械構造用炭素鋼(例:S45C)や合金鋼(例:SCM)を用いる。焼入れ焼戻しで耐摩耗・耐面圧性を高めることがある。面粗さは過度に粗いと局部面圧が上がり、過度に鏡面でも油膜保持が難しくなるため、設計意図に沿った適正値を図示する。腐食環境では防錆油、リン酸塩皮膜、化学被膜なども選択肢となる。

はめあい・公差・幾何公差

キー幅bはキー側に「h級」、溝幅は軸側「P級」、ハブ側「N級」を用いるのが一般的で、公差差で確実な面当たりを作る。半月キーは軸側の円弧溝深さが機能を左右するため、溝深さのばらつき管理、軸径との同心度、キー面の直角度を幾何公差で管理する。組立後は偏心や振れが許容内であるかをダイヤルゲージ等で確認する。

半月キー、キー溝および適応する軸径 1×4-(6×32)

キーの呼び寸法
b×d0
キーの寸法 参考
b b d₀ d₀ h h h1 h1 C
(計算値)
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差 基準寸法 許容差
(h11)
基準寸法 許容差
1×4 1 0
-0.025
4 0
-0.120
1.4 0
-0.060
1.1 ±0.1 0.16~0.25
1.5×7 1.5 0
-0.025
7 0
-0.150
2.6 0
-0.060
2.1 ±0.1 0.16~0.25
2×7 2 0
-0.025
7 0
-0.150
2.6 0
-0.060
2.1 ±0.1 0.16~0.25
2×10 2 0
-0.025
10 0
-0.150
3.7 0
-0.075
3.0 ±0.1 0.16~0.25
2.5×10 2.5 0
-0.025
10 0
-0.150
3.7 0
-0.075
3.0 ±0.1 0.16~0.25 9.6
(3×10) 3 0
-0.025
10 0
-0.1
3.7 0
-0.075
3.55 ±0.1 0.16~0.25 9.6
3×13 3 0
-0.025
13 0
-0.180
5.0 0
-0.075
4.0 ±0.2 0.16~0.25 12.6
3×16 3 0
-0.025
16 0
-0.180
6.5 0
-0.090
5.2 ±0.2 0.16~0.25 15.7
(4×13) 4 0
-0.030
13 0
-0.1
5.0 0
-0.075
4.75 ±0.2 0.16~0.25 12.6
4×16 4 0
-0.030
16 0
-0.180
6.5 0
-0.090
5.2 ±0.2 0.25~0.40 15.7
4×19 4 0
-0.030
19 0
-0.210
7.5 0
-0.090
6.0 ±0.2 0.25~0.40 18.5
5×16 5 0
-0.030
16 0
-0.180
6.5 0
-0.090
5.2 ±0.2 0.25~0.40 15.7
5×19 5 0
-0.030
19 0
-0.210
7.5 0
-0.090
6.0 ±0.2 0.25~0.40 18.5
5×22 5 0
-0.030
22 0
-0.210
9.0 0
-0.090
7.2 ±0.2 0.25~0.40 21.6
6×22 6 0
-0.030
22 0
-0.210
9.0 0
-0.090
7.2 ±0.2 0.25~0.40 21.6
6×25 6 0
-0.030
25 0
-0.210
10.0 0
-0.090
8.0 ±0.2 0.25~0.40 24.4
(6×28) 6 0
-0.030
28 0
-0.2
11.0 0
-0.110
10.6 ±0.2 0.25~0.40 27.3
(6×32) 6 0
-0.030
32 0
-0.2
13.0 0
-0.110
12.5 ±0.2 0.25~0.40 31.4
キーの呼び寸法
b×d0
キーの寸法 参考
b b d₀ d₀ h h h1 h1 C
(計算値)
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差 基準寸法 許容差
(h11)
基準寸法 許容差

表面粗さは両側面はRa1.6とし、その他はRa6.3とする。
()をつけた呼び寸法のものは、国際規格ではない。

半月キー、キー溝および適応する軸径 (7×22)-(12×80)

キーの呼び寸法
b×d0
キーの寸法 参考
b b d₀ d₀ h h h1 h1 C
(計算値)
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差 基準寸法 許容差
(h11)
基準寸法 許容差
(7×22) 7 0
-0.036
22 0
-0.1
9.0 0
-0.090
8.5 ±0.2 0.25~0.40 21.6
(7×25) 7 0
-0.036
25 0
-0.2
10.0 0
-0.090
9.5 ±0.2 0.25~0.40 24.4
(7×28) 7 0
-0.036
28 0
-0.2
11.0 0
-0.110
10.6 ±0.2 0.25~0.40 27.3
(7×32) 7 0
-0.036
32 0
-0.2
13.0 0
-0.110
12.5 ±0.2 0.25~0.40 31.4
(7×38) 7 0
-0.036
38 0
-0.2
15.0 0
-0.110
14.0 ±0.2 0.25~0.40 37.1
(7×45) 7 0 -0.036 45 0 -0.2 16.0 0 -0.110 15.0 ±0.2 0.25~0.40 43.0
(8×25) 8 0
-0.036
25 0
-0.2
10.0 0
-0.090
9.5 ±0.2 0.25~0.40 24.4
8×28 8 0
-0.036
28 0
-0.210
11.0 0
-0.110
8.8 ±0.2 0.40~0.60 27.3
(8×32) 8 0
-0.036
32 0
-0.2
13.0 0
-0.110
12.5 ±0.2 0.25~0.40 31.4
(8×38) 8 0
-0.036
38 0
-0.2
15.0 0
-0.110
14.0 ±0.2 0.25~0.40 37.1
10×32 10 0
-0.036
32 0
-0.250
13.0 0
-0.110
10.4 ±0.2 0.40~0.60 31.4
(10×45) 10 0
-0.036
45 0
-0.2
16.0 0
-0.110
15.0 ±0.2 0.40~0.60 43.0
(10×55) 10 0
-0.036
55 0
-0.2
17.0 0
-0.110
16.0 ±0.2 0.40~0.60 50.8
(10×65) 10 0
-0.036
65 0
-0.2
19.0 0
-0.130
18.0 ±0.3 0.40~0.60 59.0
(12×65) 12 0
-0.043
65 0
-0.2
19.0 0
-0.130
18.0 ±0.3 0.40~0.60 59.0
(12×80) 12 0
-0.043
80 0
-0.2
24.0 0
-0.130
22.4 ±0.3 0.40~0.60 73.3
キーの呼び寸法
b×d0
キーの寸法 参考
b b d₀ d₀ h h h1 h1 C
(計算値)
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差 基準寸法 許容差
(h11)
基準寸法 許容差

表面粗さは両側面はRa1.6とし、その他はRa6.3とする。
()をつけた呼び寸法のものは、国際規格ではない。