こま形自在軸継手|平行ずれを等速で伝達する継手

こま形自在軸継手

こま形自在軸継手は、2本の平行軸あいだのわずかなオフセット(平行偏心)を吸収しつつトルクを伝達する機械要素であり、一般にOldham couplingとも呼ばれる。両側ハブ(軸に固定する側部品)と、その間に挟まれる円板状の中間部品「こま(スライダ)」で構成され、こまの互いに直交する摺動キーが左右のハブの溝に嵌合して回転力を受け渡す。構造が簡潔で、平行ずれに対して等速で回転を伝える点が特徴である一方、摺動面に相対運動を伴うため摩耗や潤滑に配慮が要る。精密位置決め用のゼロバックラッシュ仕様や、電動機の軽負荷連結、ポンプや送風機の一般産業用途まで幅広く用いられる。

構造と各部名称

本継手は左右のハブと中央のこまからなる。各ハブは外周にフランジ、内側に軸穴(キー溝や締結穴を備えることもある)を持ち、こまは両面に互いに直角な摺動キー(または舌片)を備える。左右ハブの溝方向は相互に90°となり、こまのキーがそれぞれに嵌合して回転を伝える。材質はハブに鋼やアルミ合金、こまにPOM(ポリアセタール)PEEKなどの高分子、あるいは青銅・鋼などが用いられる。こま材を樹脂とすることで自己潤滑性と低バックラッシュ化を図れるが、高温や高荷重では金属こまや表面処理・固体潤滑の適用を検討する。

作動原理

こま形自在軸継手は、入力軸と出力軸が完全に平行であるが、軸心がわずかに平行移動した状態でも等速で回転を伝える。回転時、こまは入力・出力と同角速度で自転しながら、軸間の偏心量と同じ半径で円運動(公転)する。このとき、こまの両側キーが左右ハブの溝内で往復摺動し、平行ずれによって生じる相対運動を吸収するため、出力軸の角速度変動は理論上生じない。摺動速度は偏心量と角速度に比例するため、高速回転や大偏心では摩耗・発熱が増える。

許容ずれと設計指標

  • 許容平行偏心:サイズ・材質・メーカー仕様に依存するが、小型で数0.1 mm程度、中〜大型で1 mm前後までを目安とし、余裕を見込む。
  • 許容角度ずれ:本質的には平行ずれ吸収用であり、角度ずれ許容は小さい(おおむね0.5〜1°程度に抑える)。
  • 許容軸方向変位:構造上のガタでごく小さく吸収できる場合もあるが、期待しない設計が無難。
  • 摺動面圧・せん断応力:こまキー断面の面圧、こま材の許容せん断、溝側の縁応力を評価する。トルク、偏心、回転数から摺動速度とPV値(圧力×速度)を算定し、材質・潤滑条件の許容範囲に収める。

長所と短所

長所は、(1) 平行ずれに対して等速伝達であること、(2) 構造が簡潔で加工・組立が容易なこと、(3) こま材の選択により絶縁・低慣性・低バックラッシュ化が図れること、(4) 軸受への曲げモーメントを相対的に抑えやすいこと、である。短所は、(1) こま・溝の摺動による摩耗と粉塵の発生、(2) 潤滑・材料選定を誤ると寿命が短くなること、(3) トルク容量が歯形継手やジョー継手に比べて劣る場合があること、(4) 高速・大偏心では発熱・騒音が増えること、である。

代表的な用途

こま形自在軸継手は、サーボモータやステッピングモータとボールねじ・送り機構の連結、各種ポンプ・送風機・ブロワの駆動、搬送・包装機、計測・検査装置などに広く用いられる。位置決め系ではゼロバックラッシュ仕様(こまのプリロードやスプリング内蔵など)を選ぶことで、反転時のガタを抑え、制御ゲインの確保と再現性を高められる。

材質・潤滑・表面処理

  • 樹脂こま:POMは汎用で自己潤滑・低摩擦、PEEKは耐熱・耐薬品・高強度。乾式で使えるが、高速・高荷重ではグリース併用が望ましい。
  • 金属こま:鋼・青銅など。高荷重・高温に有利だが、潤滑管理が重要。表面硬化や固体潤滑膜(MoS2等)で耐摩耗性を向上。
  • ハブ:S45Cなどの機械構造用炭素鋼やアルミ合金。キー溝・セットスクリュ・クランプなど締結方式に応じた熱処理・表面仕上げを行う。

選定の要点

必要トルク(起動・定常・過負荷)、回転数、偏心量、バックラッシュ許容、剛性(ねじり・曲げ)、慣性、環境(温度・粉塵・薬品)を条件化し、カタログの定格トルクと許容偏心・許容回転数の同時満足を確認する。摺動PV値が限界を超える場合は、こま材質・潤滑の見直し、サイズアップ、回転数低減、あるいは別種継手の採用を検討する。固定はキー併用やクランプ方式が確実で、セットスクリュの場合は座ぐり・平坦加工とねじゆるみ止め剤、場合によりボルト併用で軸方向の抜け止めを確保する。

据付・保守

据付時は、軸心の平行度・間隔・偏心量を規定値内に調整し、こまと溝の面当たりを均一にする。初期は摩耗馴染みが出やすいため、一定時間の運転後に増し締め・バックラッシュ確認を行い、必要に応じて潤滑補給や粉塵清掃を実施する。高サイクルの反転運転や高速域では定期点検周期を短く設定し、摩耗限度・異音・温度上昇を管理する。交換時は同等仕様(トルク・偏心・回転数・取付寸法・材質)のこま・ハブを選ぶ。

よくある設計・運用上の注意

  • 偏心の「見込み過多」に注意:許容の上限近くを常用すると摩耗が急増する。余裕を確保する。
  • 高速化時のPV超過:回転数上昇で摺動速度が増す。材質・潤滑と熱対策の再評価を行う。
  • バックラッシュ管理:位置決め用途ではゼロバックラッシュ型、またはプリロード調整が可能な構造を選ぶ。
  • 環境:粉塵や研磨粉は摺動面を傷める。シールやカバーで侵入を防ぐ。

こま形自在軸継手 A形およびAA形

こま形自在軸継手A・AA形

呼び径
d
D
最大
l
最小
L Lm S
最大
6 14 8 16 16 3
8 18 10 20 20 4
10 22 12 22 22 5
12 28 16 28 28 6
14 28 16 28 28 6
16 32 18 32 32 7
20 40 22 40 40 9
25 50 28 50 50 11
30 60 34 60 60 13
32 63 36 63 63 14
35 71 40 71 71 16
40 80 45 80 80 18
50 100 56 100 100 22
呼び径
d
D
最大
l
最小
L Lm S
最大

〔備考〕
1.呼び径にかっこの付いた寸法のものは、なるべく使用しない。
2.軸穴dの寸法許容差は、JIS B 0401-2(寸法公差およびはめあいの方式一第2部-)のH7による。なお、L、Lmは、基準寸法だけを示す。
3.lは、軸がはまる長さを示す。
4.図は、構造の一例を示す。

こま形自在軸継手の許容伝達トルクおよび最高回転数(折り曲げ角10°)

        

        

        

        

呼び径
d
(mm)
100rpm 100rpm 200rpm 200rpm 500rpm 500rpm 1000rpm 1000rpm 最高回
転数N
(rpm)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
6 3.92 93.1 3.92 93.1 3.14 73.5 2.45 58.8 3500
8 7.84 78.4 6.17 61.74 4.9 49 3.92 39.2 3500
10 15.68 78.4 12.25 61.74 9.8 49 6.17 31.36 2800
12 30.87 93.1 19.6 58.8 12.25 35.28 9.8 29.4 2240
14 30.87 54.88 19.6 35.28 12.25 22.54 9.8 17.64 2000
16 49 61.74 30.87 39.2 19.6 24.5 12.25 15.68 1800
20 78.4 49 61.74 39.2 30.87 19.6 19.6 12.74 1430
25 137.2 44.1 98 31.36 49 15.68 30.87 9.8 1120
30 196 37.24 137.2 26.46 69.58 12.74 39.2 7.84 950
32 219.5 34.3 156.8 24.5 78.4 12.74 49 7.84 900
35 274.4 32.34 176.4 20.58 88.2 10.78 800
40 392 31.36 245 19.6 12.25 9.8 710
50 617.4 34.3 392 15.68 196 7.84 560
呼び径
d
(mm)
100rpm 100rpm 200rpm 200rpm 500rpm 500rpm 1000rpm 1000rpm 最高回
転数N
(rpm)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)

こま形自在軸継手 B形およびBB形

呼び径
d
D
最大
l
最小
L Lm S
最大
6 12 8 15 18 3
8 16 10 19 22 4
10 20 12 23 28 5
12 25 16 30 36 6
14 25 16 30 36 6
16 28 18 34 40 7
20 36 22 42 50 9
25 45 28 53 63 11
30 53 34 63 75 13
32 56 36 67 80 14
35 63 40 71 85 16
40 71 45 80 95 18
50 90 56 100 118 22
呼び径
d
D
最大
l
最小
L Lm S
最大

〔備考〕
1.呼び径にかっこの付いた寸法のものは、なるべく使用しない。
2.軸穴dの寸法許容差は、JIS B 0401-2(寸法公差およびはめあいの方式一第2部-)のH7による。なお、L、Lmは、基準寸法だけを示す。
3.lは、軸がはまる長さを示す。
4.図は、構造の一例を示す。

こま形自在軸継手の許容伝達トルクおよび最高回転数(折り曲げ角10°)

        

        

        

        

呼び径
d
(mm)
100rpm 100rpm 200rpm 200rpm 500rpm 500rpm 1000rpm 1000rpm 最高回
転数N
(rpm)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
6 4.9 115.6 4.9 115.6 3.92 93.1 3.14 73.5 3500
8 9.8 98 7.84 78.4 6.17 61.74 4.9 49 3500
10 19.6 98 15.68 78.4 12.25 61.74 9.8 49 2800
12 39.2 115.6 24.5 73.5 19.6 58.8 15.68 47.04 2240
14 39.2 69.58 24.5 44.1 19.6 35.28 15.68 27.44 2000
16 61.74 78.4 49 61.74 39.2 49 24.5 31.36 1800
20 122.5 78.4 78.4 49 61.74 39.2 39.2 24.5 1430
25 196 61.74 122.5 39.2 98 31.36 61.74 19.6 1120
30 274.4 51.94 196 37.24 137.2 26.46 88.2 16.66 950
32 308.7 49 245 39.2 156.8 24.5 98 15.68 900
35 392 47.04 274.4 32.34 137.2 16.6 800
40 617.4 49 392 31.36 196 15.68 710
50 245 49 784 31.36 392 15.68 560
呼び径
d
(mm)
100rpm 100rpm 200rpm 200rpm 500rpm 500rpm 1000rpm 1000rpm 最高回
転数N
(rpm)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)
許容伝達トルク
T
(N・m)
軸のせん断応力
τ
(N/㎜²)

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