3次元流れ
3次元流れとは、速度場が空間の3方向いずれにも依存し、流線が面内に閉じず立体的にねじれる流れを指す。速度成分は一般にu, v, wの3つで表し、各方向の速度勾配が絡み合うため、回転やせん断が複雑に共存する。境界層の三次元化、翼端渦、曲がり管の二次流れ、乱流の異方化などは典型例である。3次元流れはエネルギー輸送・混合・抵抗に大きく影響し、機械・建築・土木・化学装置の設計に不可欠である。
基本概念
速度ベクトル場v(x, y, z, t)で記述し、質量保存は連続の式∇·v=0(非圧縮)で表す。運動量保存はナビエ–ストークス方程式で与えられ、慣性項、圧力勾配、粘性拡散、体積力の釣り合いとして理解できる。3次元流れでは各方向での結合により、局所的な加速と減速、曲率効果が顕著に現れる。
速度勾配と歪み率
速度勾配テンソルは対称(歪み率)と反対称(回転)に分解できる。歪み率は体積変化のないせん断や伸長を与え、回転は局所的な固体回転を表す。3次元流れでは主歪み軸が位置で回転し、異方性が強化されるため、混合作用や乱流遷移に直結する。
渦度ベクトルと回転
渦度ω=∇×vは流れの回転強度であり、渦線は流体とほぼともに移動する。3次元流れには渦伸長ω·∇vが現れ、渦が引き伸ばされて強化される。これが翼端渦や後流の渦塊の持続、乱流のエネルギーカスケードを支える重要機構である。
ナビエ–ストークス方程式
無次元化により支配因子が整理される。代表速度U、長さL、動粘性係数νで定義するRe=UL/νは慣性と粘性の比である。3次元流れでは圧力・粘性・非線形移流の空間勾配が三方向で結合し、2D近似では再現できない剥離や再付着、二次流れが生じる。
非圧縮性と圧縮性
低マッハ域では密度一定近似が妥当となるが、M=U/aが上がると圧縮性が影響し、膨張・圧縮波、衝撃波が現れる。3次元流れでは衝撃波と境界層の干渉が三次元化し、スパン方向の流れや斜め剥離渦を誘発する。
代表的な流れ場
- 翼端で発生する強い縦渦とスパン方向の移流
- 曲がり管・ティー字合流での二次流れ(ディーン渦)
- 角柱・建築物周りのコーナー剥離と縦渦列
- 回転機械内の通路での通路渦と二次流
二次流れ
主流の曲率や壁面摩擦、乱流異方性により、主流直交方向に循環が生じる。曲がり管では遠心力と圧力勾配の不均衡から断面内に対向する渦対が形成される。3次元流れでは損失増大や混合促進を同時にもたらす。
乱流の特徴
乱流は空間・時間にわたる多尺度渦の連鎖であり、3次元流れでは伸長により渦が細分化して粘性散逸へ至る。異方性が壁近くで顕著となり、RANS、LES、DNSなどのモデル・手法選択が結果を左右する。
数値解析(CFD)
- 離散化:有限体積・有限要素・有限差分を用い、保存則を満たす格子を設計する。
- 乱流モデル:RANSのk-ε、k-ω、SST、LESのSmagorinskyやWALE、混成法DESを使い分ける。
- 収束・検証:格子独立性、時間刻み独立性、実験との妥当性確認を徹底する。
計測手法
可視化やPIV、LDV、HWAが用いられる。体積照射と多視点再構成を行うtomographic PIVや3D-PTVは3次元流れの渦構造抽出に有効である。屈折率整合法は複雑配管の内部計測で威力を発揮する。
物体まわりの流れ
翼では翼端渦とスパン負荷が誘導抗力を生む。鈍頭物体では端部や地面効果により縦渦が形成され、圧力抵抗と振動励起に影響する。3次元流れは剥離線を歪ませ、周期性や騒音源を変化させる。
境界条件とメッシュ設計
入口での速度プロファイルや乱流量、壁面の粗さを適切に与える。壁近傍はy+管理や壁関数/直解の選択が重要で、3次元流れではスパン方向解像度が精度の鍵となる。
次元解析と相似則
Re、Fr、We、Roなどの無次元数で支配性を整理する。同一の無次元群を合わせれば模型実験と実機の動的相似が成立し、3次元流れのスケーリングが可能となる。
典型的な失敗例
2D近似の過信、スパン方向境界の不適切な周期条件、格子のねじれ、時間平均と位相平均の混同が誤差を増幅する。3次元流れでは計測・解析ともに解像度の不足が致命的となる。
実務への応用
ターボ機械、HVAC、化学リアクタ、建築外装・都市風、河川合流や取水工で3次元流れは性能と安全性を左右する。損失低減、混合促進、騒音抑制、疲労回避を複合的に最適化する設計戦略が求められる。