24時間換気システム
24時間換気システムとは、住宅やオフィスなどの室内空気を常に入れ替えることで、人体に有害な物質や湿気を抑制し、快適かつ健康的な居住空間を維持する仕組みである。近年、高気密・高断熱化が進んだ建物では空気の滞留によりシックハウス症候群などの問題が顕在化しやすくなり、これを防ぐための手段として24時間換気システムが注目されるようになった。定期的な換気に頼らず、常時一定の換気量を確保することで揮発性有機化合物(VOC)や二酸化炭素濃度を低減し、カビやダニの繁殖を抑える効果が期待できる。また、昨今の省エネルギー志向の高まりに伴い、熱交換器などを組み込んで室温を極力変えずに空気を入れ替える技術も普及しており、省エネと健康管理の両立を図る点でも重要視されている
導入の背景
日本では気密性の高い住宅が普及し、断熱性能を重視した建築が増加している。しかし従来の住宅に比べて隙間風による換気量が大幅に減少したことで、室内に滞留する化学物質や湿気の濃度が上昇する傾向が見られる。このような状況を受け、建築基準法の改正により一定規模以上の建築物には24時間換気システムの設置が原則として義務付けられることとなった。シックハウス症候群や花粉症などの健康被害を未然に防ぎ、快適な生活環境を実現するための施策として、国や自治体も普及を後押ししている
種類と特徴
24時間換気システムには大きく分けて第1種・第2種・第3種の換気方式が存在する。第1種換気方式は給気と排気を共に機械で行うため、外気を取り込む際に熱交換器を利用しやすいのが利点である。第2種換気方式は機械で給気し、排気は自然排気を利用するため、比較的導入コストを抑えられるが、湿度制御が難しい場合もある。第3種換気方式は自然給気で機械排気を行う方式であり、既存住宅への設置に適しているが、外気の導入量を精密にコントロールしにくい面がある。いずれの方式を採用するにしても、設計段階での換気経路の確保やフィルター性能の選定などが重要なポイントとなる
第1種換気方式
給気と排気の両方を機械に頼る方式であり、全熱交換器や顕熱交換器を組み込むことにより、吸気と排気の温度差を緩和する効果が得られる。室内温度を大きく変化させずに換気できるため、省エネルギーを重視する新築住宅や高性能建築でよく採用される。さらに調湿機能を備えた装置もあり、極端な乾燥や結露を防ぐことが可能である。一方で装置の初期費用やメンテナンスコストが高くなりやすいことも考慮すべき点として挙げられる
第2種換気方式
給気を機械で行い、排気を自然換気に依存する方式である。外部から強制的に空気を取り入れることで正圧状態をつくり、余分な空気を隙間や換気口から排出していく形となる。導入コストは第1種に比べて低い傾向があるが、排気の経路が十分に確保されていない場合には室内の湿度が高くなりやすいという課題がある。また外気の取り込み量に対して室内圧が上がり、建物の構造によっては隙間から空気が漏れ出てしまう可能性も否定できない
第3種換気方式
排気を機械で行い、給気は自然換気に委ねる方式である。低コストで設置がしやすく、後からリフォームやリノベーションを行う際にも対応しやすい点が特徴といえる。ただし負圧状態をつくり出すため、外気が室内に流入する経路を綿密に管理しなければ、花粉や外部汚染物質も同時に取り込みやすくなることがデメリットとなる。換気量が不十分なまま稼働すると結露やカビの発生リスクが高まるため、吸気口の位置やフィルター交換の頻度などを定期的にチェックする必要がある
設計上の考慮点
24時間換気システムを導入する際には、まず換気量と換気経路を適切に設定する必要がある。換気計画では居室だけでなく、浴室やキッチン、トイレなどの水回りにおける湿気と臭気の処理も視野に入れなければならない。さらに断熱材の種類や建物の気密性能、窓の配置などとあわせてシステムをプランニングすることで、熱損失を抑えながら高い換気性能を実現することができる。また、外気導入口付近にフィルターや花粉除去網を設置することも重視されるようになっており、室内環境の快適性を左右する重要な要素となっている
運用とメンテナンス
24時間換気システムは常に稼働させることが基本であるが、フィルターの目詰まりやファンの故障を放置すると十分な換気性能が得られなくなる。定期的な点検やフィルター交換を怠ると、室内空気が汚染されたまま循環してしまい、健康被害を引き起こすリスクが高まるため注意が必要である。また換気口周辺に埃や汚れが堆積すると通気が妨げられ、システム全体の効率低下を招く恐れがある。建築物の使用年数が増していくと、ダクト内にホコリやカビが蓄積するケースもあるため、必要に応じて清掃や部品交換を検討することが求められる