風速計|現場の風速を正確に測る計測器

風速計

風速計は、空気の流れの速さを定量化する計測器である。気象観測、建築・土木の風環境評価、産業設備の換気・吸排気管理、風洞試験、労働安全や防災など、多様な場面で用いられる。代表的な指示量はm/sで、必要に応じてkm/hやknot、Beaufort階級へ換算する。測定原理は機械式から熱・音波・圧力差まで幅広く、目的・速度域・設置環境に応じて最適な方式を選定することが重要である。精度を担保するには校正と環境補償、設置姿勢や障害物の影響低減といった実務的配慮が欠かせない。

主な測定原理と方式

風速計の方式は、対象となる速度域、乱れ強度、方向性の要求によって選択する。以下に代表的な方式を示す。

  • 風杯式・プロペラ式:回転体が風で回る角速度から平均風速を算出する。堅牢で長期観測に適するが低風速の感度や瞬間応答は限定的である。
  • 熱線式(熱膜式):加熱素子の冷却量と電気抵抗変化から流速を推定する。微小流速と乱流解析に強く、風洞や研究用途で多用されるが、汚れや温度変化に敏感である。
  • ピトー管式:全圧と静圧の差(動圧)からベルヌーイの関係で速度を得る。ダクト内の高速域や高温流に有効で、方向合わせが必要である。
  • 超音波式:複数探触子間の音波伝搬時間差から三次元風速ベクトルを算出する。稼働部がなく、応答が速く乱流計測に適する。
  • 差圧式センサ内蔵型:微小差圧センサと整流体構造を組み合わせ、装置一体でダクト風速を連続監視する。

指示量・単位と換算

国際的に基本単位はm/sである。換算は、1 m/s=3.6 km/h、約1.9438 knotである。気象用途ではBeaufort階級が用いられることがあり、平均風速から階級へ対照する。瞬間風速(gust)と平均風速(mean)は評価目的が異なるため、観測間隔(例:10 min平均)を明記すべきである。

性能指標と特性

選定・評価で重要な特性は以下である。測定範囲と分解能、指示誤差(%rdg+%fsなどの表記)、直線性、応答時間(時定数)、方向性(風向依存性)、温度・湿度・気圧の影響、乱れに対する追従性、ゼロ点安定性、耐候・耐環境性(埃・水・塩害)。屋外の長期監視では耐UVと防塵防水等級、研究用途では帯域幅とノイズ特性が重視される。

設置と測定手順

屋外では地表面や構造物の影響で風が乱れるため、規程高さ(例:10 m)や開豁度、障害物からの距離を確保する。ダクト内では断面の速度分布を考慮し、等面積多点法などで代表値を推定する。プローブの向きは主流方向へ正確に合わせ、超音波式はアームが乱れを作らない配置とする。計測はウォームアップ、ゼロ点確認、温度・圧力の補正条件を記録し、データロガーのサンプリング周波数を目的(平均か乱流解析か)に合わせる。

校正とトレーサビリティ

信頼できる測定のためには、風洞基準あるいは一次標準へトレーサブルな校正が必要である。熱線式は温度ドリフトと感度係数、回転式は回転-風速係数、超音波式は時間基準と幾何校正、ピトー管は係数(Cd)を確認する。校正周期は使用環境と要求精度で決め、衝撃・污染・経年変化があった場合は臨時校正を行う。

誤差要因と低減

主な誤差要因は、乱流・脈動による瞬時偏差、温度・湿度の媒質特性変化、設置姿勢のズレ、探触子・回転部の汚れ、電磁ノイズ、ダクト壁面や曲がりによる二次流、氷雪付着である。対策として、整流区間の確保、探触子の定期清掃、遮熱・遮光、ケーブルシールドと接地、温度・圧力の併用測定、冗長配置による相互検証を行う。

用途別の着眼点

  • 気象・防災:耐候性、凍結対策、雷保護、長期安定性、低消費電力と遠隔監視。
  • HVAC・クリーンルーム:低風速の分解能、ダクト内プロファイル、多点平均、差圧併用。
  • 風洞試験・研究:高帯域・高サンプリング、乱流特性(u′、スペクトル)、三次元計測。
  • 建築・都市:平均風速と乱れ強度、歩行者風環境、突風評価、実測とCFDの整合。
  • 産業安全:局所排気・粉じん対策、爆発性雰囲気での防爆仕様、アラーム連携。

データ処理と評価指標

平均値(時間平均・空間平均)、標準偏差、乱れ強度、最大瞬間値、頻度分布、パワースペクトル密度などを用いる。観測間隔の統一や欠測処理、外れ値除去(メディアンフィルタ等)、単位の統一、温度・密度補正の有無をレポートに明記する。イベント検出では閾値判定のほか、移動平均とピークホールドの併用が有効である。

機種選定のポイント

  • 速度域:微小流(<0.1 m/s)なら熱線式、広域かつ堅牢性重視なら超音波式や回転式。
  • 応答:突風や乱流解析は高帯域、平均監視は安定性を重視。
  • 設置:屋外常設は防水・防塵・防氷、ダクト内は挿入長と点検性。
  • インタフェース:4–20 mA、0–10 V、RS-485(Modbus)、Ethernet、無線など運用系に合わせる。
  • 保守:清掃容易性、自己診断、校正サポート、交換部品の供給。

保守と運用管理

定期点検では、ゼロ確認、外観点検(汚れ・損傷・緩み)、配線とコネクタの接触、防水シール、ファームウェアやロガー設定を確認する。屋外は落雷・静電気対策、着雪・着氷対策を講じる。ログは時刻同期(NTP)を維持し、校正履歴や設置条件と紐づけて記録管理する。

安全・法規・品質管理上の留意

公共観測や品質保証に用いる場合は、関連するJISやISOの定義、計量トレーサビリティ、試験方法や不確かさ評価の手順を整備する。防爆エリアでは適合する防爆規格を確認し、電気的保護等級とあわせて選定する。データ公開時は計測高さ、周辺地形、平均化時間、欠測処理の方針を明記して再現性を確保する。

関連機器と補完測定

風速計は単独では風環境の全体像を捉えにくいことがある。温湿度、静圧・差圧、温度勾配、流量、粒子濃度などの補完データを組み合わせ、因果関係の解釈と対策立案につなげる。特にダクトでは、風速分布と断面積から体積流量を算出し、設備のエネルギー管理や品質管理に反映することが有効である。