非破壊分析
非破壊分析(Nondestructive Analysis, NDA)とは、対象物を破壊・切断したり内部を侵襲的に加工したりすることなく、材料や製品の内部構造や特性を評価する手法の総称である。X線や超音波、放射線などを利用した物理的手段を用いて欠陥検出や強度評価、組成分析を行える点が特徴であり、製造業や建設業、航空・宇宙分野から文化財保存や医療分野まで、非常に広範に活用されている。通常の破壊試験では、試験体の一部または全部を損なう必要があるが、非破壊分析ならば実際の稼働部品や構造物を現状のまま検査できるため、コストの削減や信頼性確保に寄与している。
非破壊分析と非破壊検査
一般的に、内部欠陥の有無を調べる「非破壊検査(Nondestructive Inspection, NDI)」と、材料組成や物性情報を把握する「非破壊分析」はしばしば混用される。どちらも物理手法で対象物を損なうことなく情報を得る点は共通しているが、非破壊検査は主に品質管理や安全確認を目的に行われる一方、非破壊分析では元素組成や内部構造の定量・定性情報を得ることが重視される。実際の現場では検査と分析が組み合わせられることも多く、製品の健全性評価と材料特性解析を一体で行うケースが少なくない。
主な手法
非破壊分析には様々な物理現象を応用した手段が存在する。代表的なものを以下に示す。
- X線CT:X線を透過させ、内部の濃度分布を断層像として再構成する
- ガンマ線透過検査:放射性同位元素によるガンマ線で金属内部の欠陥を検出
- 中性子回折:結晶内部の応力や歪みを非破壊で測定、組織解析にも応用
- 超音波探傷:音波の反射や伝播時間から欠陥位置や形状を推定
- 渦流検査:導電性材料中に誘起される渦電流の変化から表面や近表面の欠陥を検出
- 赤外線サーモグラフィ:表面温度分布の変化から内部欠陥や異種材料の存在を推定
- 光学・レーザー干渉:光の干渉パターンから表面振動や微小変位を高精度で評価
元素・組成分析の手法
材料内部の元素組成を調べる際には、対象物を壊さずに放射線や電子線を照射し、発生する2次信号を検出する手法が用いられる。以下に幾つかの代表例を挙げる。
- X線蛍光分析(XRF):X線を照射し、元素ごとに特有の蛍光X線を測定することで組成を評価
- ガンマ線スペクトロメトリ:放射性核種を含むサンプルからのガンマ線スペクトルを解析し、核種や濃度を特定
- 中性子放射化分析(NAA):中性子照射で生成される放射性同位元素のガンマ線を測定し、元素定量を行う
- 電子線励起蛍光(EPMA):電子線を照射して発生する特性X線を検出(試料室など空間制限はあるが試料の多くが無加工で可能)
メリットと限界
非破壊分析は試料をそのままの形で評価できるため、コスト削減と迅速化、製品品質の向上に寄与する。一方で、以下のような課題も存在する。
- 分解能の制限:高分解能を得るには、大型の装置や高エネルギーの放射線源が必要となる場合が多い
- 材料や形状への依存:素材が厚すぎたり複雑な形状だと、情報が得にくい手法もある
- 装置コストと安全管理:X線・放射線や高出力レーザーを扱うため、設備・防護への投資が不可欠
これらの要因から、実験室や工場では複数の手法を使い分け、対象物と目的に合わせた最適な検査・分析プロセスを構築するのが一般的である。
産業応用
先端材料開発から製造ラインの品質管理、運用中の構造ヘルスモニタリングまで、多岐にわたる分野で非破壊分析が活躍している。
- 金属・鋳造製品:鋳巣や割れの検出、応力解析、微視組織評価
- 複合材料:CFRPやGLAREなどの層間剥離や繊維方向の欠陥確認
- 電子部品・半導体:BGAはんだ接合や内部ワイヤボンディングの検査
- インフラ・建設:コンクリート内部の鉄筋腐食や空洞検出、橋梁・トンネルの健全性評価
- 航空・宇宙:ジェットエンジンや機体パネルの亀裂、複合材の構造健全性の確認