静荷重ローラ
静荷重ローラは、機械自身の自重(静的荷重)を路床・路盤・アスファルト層へ伝達し、塑性変形と粒子再配列によって密度を高める転圧機械である。振動を用いず、接地圧と接触時間を制御して締固めエネルギーを供給する点が特徴であり、周辺構造物や既設配管への振動影響を抑えたい場面、仕上げ転圧で面状の均し効果を得たい場面で有効である。
定義と原理
静荷重ローラは鋼輪(ドラム)またはゴムタイヤの接地面から線荷重あるいは面荷重を与え、材料内部の空隙を減少させる。エネルギーは主として自重×走行距離に起因し、接地圧、走行速度、重ね代、走行回数が主要パラメータである。粒状材では粒子の再配列・かみ合わせの進行、細粒土では徐々に塑性流動が生じ、体積変化を伴いながら乾燥密度が上昇する。
構造と主要部品
静荷重ローラの基本構成はフレーム、前後の鋼輪(またはタイヤ)、動力伝達系、操向系、ブレーキ、散水装置、スクレーパ、バラスト(追加ウェイト)などである。鋼輪は平滑仕上げが一般的で、アスファルトでは付着防止のため散水とスクレーパの組み合わせで表面を清浄に保つ。バラストにより線荷重を調整し、層厚や材料に応じた接地圧を確保する。
ドラムと接地圧
鋼輪の線荷重(kN/m)はドラム幅と軸重で定義される重要指標である。線荷重が高いほど深層まで応力が届くが、過度な荷重は表層すべりや骨材破砕のリスクを高める。適正な線荷重は材料の粒度分布や含水比に依存し、試験転圧で最適域を見極めるのが実務的である。
種類と仕様
- スリー・ホイール(3輪鋼輪):前1輪・後2輪構成。面圧が高く、路盤の仕上げ転圧に用いられる。
- タンデムスチールホイール:前後2ドラムの直列配置。均一な面状仕上げに適し、アスファルト舗装で広く用いられる。
- ラバータイヤローラ:複数の空気入りタイヤで接地し、静的荷重主体に「練り効果」を与える。継目のなじみや表面閉塞に有効。
作用メカニズムと土質応答
粒状材(砂・砕石)は接触応力の繰り返しで骨材が再配列し、せん断抵抗の増大と弾性係数の向上が得られる。細粒土(シルト・粘土)では塑性流動が支配的で、最適含水比付近で締固め効率が最大となる。静荷重ローラは振動ローラに比べて深層へのエネルギー伝達は小さいが、表層均しやエッジ部の品質確保に優れる。
アスファルト混合物への適用
舗設直後の「ブレークダウン」は振動機で行い、温度低下に伴う「中間」「仕上げ」段階で静荷重ローラを用いる組合せが一般的である。静的転圧は骨材の再配列を穏やかに進め、表面の骨材飛びや押し出しを抑え、粗骨材の浮きや「オレンジピール」を防ぐ。
施工手順
- 敷均し後、初期走行で面の高低を把握し、必要に応じてバラストと空気圧(タイヤ式)を調整する。
- 重ね代はドラム幅の10〜20%を目安に設定し、蛇行を避ける。端部は内側から外側へ、継目は低側から高側へ踏む。
- 走行速度は一般に低速(例:3〜5km/h)で一定に保ち、回数は試験転圧に基づくターゲット密度到達までとする。
品質管理と試験
土工では含水比管理と現場密度管理が要である。Proctor試験で得た最大乾燥密度・最適含水比を基に、砂置換法やRI法で達成度を確認する。舗装では表面温度・層厚・空隙率の管理に加え、平板載荷試験やCBRなど支持力指標で構造安全性を評価する。仕上げ段階の静荷重ローラは平坦性・テクスチャの均一化にも寄与する。
安全・環境上の留意点
振動を用いないため騒音・微振動の外部影響は小さく、近接構造物や居住地で扱いやすい。一方で転落・転倒、巻き込み、後進時の死角が主要リスクである。散水時は滑走や油膜化を避け、燃料・油脂類の漏えい防止を徹底する。
長所と限界
静荷重ローラの長所は構造が簡潔で保守が容易、仕上げ品質が安定、周辺への振動影響が小さい点である。限界として厚層や粗粒材主体の層では深層締固めが不足しやすく、飽和細粒土では表層のすべり・ラテラルフローが生じやすい。適用層厚・材料条件を見極め、必要に応じて振動機やラバータイヤ機と組み合わせる。
選定指標とパラメータ
線荷重(kN/m)、ドラム径・幅、単位接地圧、走行速度、重ね代、走行回数が基本である。材料側は粒度分布、含水比、目標乾燥密度、支持力指標(例:CBR)を考慮する。アスファルトでは混合物の種類、温度ウィンドウ、舗装厚が重要であり、仕上げでの静荷重ローラの寄与を最大化するために温度低下曲線を前提にロールダウン計画を立てる。
保守と点検
始業前点検として、ブレーキ・操向・灯火類・バックアラームの機能確認、スクレーパ摩耗、散水ノズルの詰まり、ドラム表面の傷や付着材、油脂類の漏えいを点検する。バラスト搭載機は固定状態を確認し、空気タイヤ式は空気圧・偏摩耗の有無を確認する。
関連規格・指針の活用
道路土工や舗装施工の各種指針、密度・支持力に関する試験規格を参照し、現場条件に即した管理基準を設定する。試験転圧で得た管理曲線に基づき、静荷重ローラの走行回数・速度・重ね代を現場最適化することが、品質と生産性の両立に直結する。
よくある不具合と対策
速度が速すぎると接触時間が不足し、目標密度に到達しない。過転圧は骨材破砕や表層の押し出しを招く。端部・継目の踏み不足は段差やクラッキングの起点となるため、走行パターンと重ね代を厳守する。アスファルトでは温度管理が不十分だと表面のテクスチャ不良を生むため、散水量と走行タイミングを調整する。