電磁流量計|電極検出で導電性流体を高精度計測

電磁流量計

電磁流量計は、導電性をもつ液体の体積流量をファラデーの電磁誘導原理によって非接触に測定する流量計である。計測管内を流れる流体が磁界を横切ると起電力が生じ、その電圧が平均流速に比例する性質を利用する。可動部がなく圧力損失が小さいため、上下水道、化学、食品、パルプ・紙、鉱業スラリーなど幅広いプロセスに適用される。

原理(ファラデーの電磁誘導)

計測管にコイルで直交磁界を印加し、管内壁に対向配置した電極で起電力を検出する。理想化すれば起電力 E は E = k·B·L·v と表され、B は磁束密度、L は電極間距離、v は平均流速、k は係数である。配管の断面積 A が既知であれば、体積流量 Q = A·v により連続的に演算できる。液体の導電率が十分であるほど安定した検出が可能になる。

構造と主要部品

  • 計測管(ライニング):PTFE、PFA、硬質ゴム等で内面を被覆し、耐食・耐摩耗性と電気絶縁を確保する。
  • 電極:SUS316L、ハステロイ、タンタルなどから選定し、腐食環境やCIP対応を考慮する。
  • 励磁コイル:直流パルスや矩形波励磁で磁界を生成する。
  • 変換器:微小電圧を高インピーダンスで増幅し、デジタル信号処理、積算、通信を担う。

測定できる流体と導電率の条件

測定対象は導電性液体である。一般に数 μS/cm 以上(例:5 μS/cm 以上)が目安であり、超純水や有機溶媒のように導電率が極端に低い場合は不適である。スラリーや濁水、繊維を含む流体でも配管充満と電極設計が適切なら測定できる。

特長と利点

  • 可動部なし:摩耗が少なく長期安定性に優れる。
  • 圧力損失がほぼゼロ:計測管内面が平滑で、プロセス負荷増大を招きにくい。
  • 広いレンジ:低流速から高流速まで直線性に優れる。
  • 清掃性:サニタリ配管と組み合わせればCIP/SIPに対応しやすい。

代表的な形式

  • フルボア型:配管口径と同一の通路を持つ最も一般的な形式である。
  • 挿入型:大口径配管での後付けやコスト低減に適する。
  • サニタリ型:クランプ接続、鏡面仕上げで衛生性を重視する。

励磁方式と信号処理

直流パルス励磁、低周波/高周波の矩形波励磁などが用いられる。電極起電力は数 mV レベルであり、工業ノイズや電極極化の影響を低減するため、同期検波、サンプル&ホールド、デジタルフィルタ、自己診断(ゼロ点監視、電極抵抗監視)が組み合わされる。近年は高周波励磁と高度なノイズモデル化により低流速域の安定性が向上している。

計装と通信

プロセス計装ではアナログ 4–20 mA、パルス、デジタル(HART、Modbus、PROFIBUS、EtherNet/IP など)が選択できる。瞬時流量、積算、双方向測定、自己診断結果を上位へ伝送し、プラントの監視・制御系と統合する。

設置条件と配管上の注意

  • 直管長:一般に上流側 5D、下流側 3D 以上を確保する(D は配管内径)。縮径、エルボ、弁の直後ではより長い直管をとる。
  • 配管充満:計測時は管内が常に満水であることが必要で、上向き流れや下流側に背圧を設ける。
  • アース:電極リードのシールド、アースリングの使用で外来ノイズを抑制する。
  • エア抜き:気泡は信号乱れの主要因であり、空気溜まりを避ける配管姿勢とベントが重要である。

誤差要因と対策

  • 電極汚れ・コーティング:定期清掃や電極材変更で付着を抑える。
  • 気泡・スラグ流:配管設計を見直し、デガスや背圧確保を行う。
  • 磁気・電気ノイズ:ケーブル敷設の分離、接地一貫性、シールド強化を行う。
  • ゼロ点ドリフト:ゼロ調整、自己診断の活用、励磁方式の最適化を実施する。

材質選定と耐食・衛生性

ライニングはPTFE/PFA等のフッ素樹脂、またはゴム系で耐薬品性・耐摩耗性を確保する。電極はSUS、ハステロイ、タンタル、白金などから化学適合性・温度範囲・CIP薬液との相性で選ぶ。サニタリ用途ではデッドスペースの排除と表面粗さ管理が重要である。

校正・トレーサビリティ

マスタ流量計との比較校正、重量法による実流校正、または出荷時係数を基準とした検証を行う。プロセス停止が難しい場合は、自己診断と検証モードにより係数の変化有無を確認し、必要時のみ再校正する手法が用いられる。

選定時のチェックポイント

  • プロセス条件:流体導電率、温度、圧力、粘度、固形分。
  • 性能要求:測定レンジ、精度、最小流速、ゼロ安定度、応答速度。
  • 機械仕様:口径、接続、耐衝撃・耐振動、保護等級、周囲条件。
  • 材質:ライニング・電極の耐食・衛生要件。
  • 計装:出力信号、電源、通信プロトコル、筐体分離(一体形/分離形)。

適用例

上水・下水処理の配水量管理、化学薬液の連続計量、食品飲料の仕込み・ブレンディング、パルプ原料やスラリー輸送、冷却水やボイラ給水の監視など、非接触・低損失の特性を活かしてライフラインからプロセス産業まで広く使われる。

安全・保守上の留意

停電復帰時のゼロ点確認、電極・ライニングの損傷点検、ケーブル端末の結露防止、端子箱の密閉維持を習慣化する。プロセス変更時は導電率と気泡混入の影響評価を再実施する。

計測の品質保証

据付・配線・アース・直管長の遵守が最初の品質であり、運用ではデータ履歴と自己診断ログの活用、点検計画のリスクベース最適化により、電磁流量計のライフサイクルを通じた信頼性を確保できる。