電源IC|電子機器の心臓部を支える半導体

電源IC

電源IC」は電子機器に安定した電圧・電流を供給する集積回路である。入力変動や負荷変化に対して出力を一定に保ち、効率・ノイズ・発熱・安全を最適化する。設計者は用途に応じて電源ICを選び、周辺部品とレイアウト、熱まで含めて最適化する。

定義と役割

電源ICは整流・平滑・変換・制御・監視・保護を提供する。ディスクリート構成より部品点数と面積を減らし、再現性と信頼性を高める。監視(UVLO、PG等)や保護(OCP、OVP、OTP、SCP)を内蔵し、誤差増幅器と補償でPSRRや過渡応答を規定する。

主な種類

  • LDO:低リップル・低ノイズの電源IC。アナログ前段や待機系に適する。
  • Buck/Boost/Buck-Boost:高効率で小型化しやすい電源IC
  • 絶縁型:トランス/フォトカプラで安全を確保する電源IC
  • PMIC:複数レールや充電、シーケンスを統合する電源IC

主要性能指標

  • 効率:損失と発熱を左右。スイッチング電源ICは高効率になりやすい。
  • 出力精度/温度係数:基準源と分圧の精度に依存。
  • ライン/ロードレギュレーション:入力/負荷変動への安定度。
  • ドロップアウト電圧:LDOの必要ヘッドルーム。

動作の要点

スイッチング電源ICはMOSFETのオン/オフでエネルギをパルス転送し、インダクタコンデンサで平滑する。PWM/PFM、電流/電圧モード制御と補償で安定化する。LDOはパス素子を可変し、リファレンスとフィードバックで出力を一定に保つ。スイッチノードの寄生とダイオード特性はノイズと効率に影響する。

設計と実装

  1. 要件定義:入力範囲、目標V/I、許容リップル/ノイズ、サイズ/コストを明確化。
  2. 部品選定:インダクタの飽和電流、コンデンサのESR/ESL、整流素子の逆回復を評価し、電源IC条件に合わせる。
  3. レイアウト:高di/dtループを最短化し、GNDプレーンを連続、スイッチノード面積を抑える。
  4. 熱/EMI:銅面とサーマルビアで放熱し、入力フィルタやスナバ、周波数同期/拡散を検討。

応用と選定

電源ICはスマートフォン、産業制御、通信機器、車載まで広く用いられる。PMICは複数の降圧/昇圧/LDOを内蔵し、SoCの電源シーケンスや低消費電力モードを管理する。選定では入出力条件、負荷プロファイル、規格、余裕度、評価計画を整える。評価ではオームの法則キルヒホッフの法則に基づき電流経路と損失を検証する。

関連知識

基礎としてトランジスタのスイッチ動作、エネルギ蓄積素子のコンデンサ、帰還理論の理解が有用である。これらは電源ICの安定性とノイズ最適化に直結する。