電気特性|計測法と設計指針をわかりやすく

電気特性

電気特性は、材料・部品が電界・電流・磁界に対して示す応答を数量化した概念である。抵抗率や誘電率、透磁率、キャリア移動度などの定数で表され、直流から高周波、静電から電磁誘導までの動作や損失を見積もる基礎となる。設計では温度・湿度・周波数依存性とばらつきの把握が不可欠である。

基本概念と主要パラメータ

材料の電気特性は主に抵抗・容量・インダクタンスで回路表現でき、連続体では抵抗率ρ、導電率σ、相対誘電率εr、相対透磁率μr、絶縁破壊電界Eb、キャリア密度n、移動度μなどで記述する。界面では接触抵抗や界面分極が支配し、厚みや面積とともに電界分布を左右する。時間領域では緩和時間、周波数領域では分散と損失が重要となる。

  • 抵抗率ρ[Ω・m]/導電率σ[S/m]
  • 相対誘電率εr、誘電正接tanδ
  • 相対透磁率μr、コア損
  • 移動度μ、キャリア密度n、拡散係数D
  • 絶縁破壊電界Eb、耐電圧、漏れ電流

直流特性:抵抗と温度係数

直流ではオームの法則V=IRが支配的で、体積抵抗率と形状(長さ・断面積)から抵抗値が決まる。温度係数αが正の金属は温度上昇で抵抗増大、半導体は一般に負で導電性が増す。接触抵抗は表面粗さ・酸化膜・締付力に影響され、微小電流領域では非線形となることがある。長期信頼性ではドリフトやエージングも評価対象である。

交流特性:容量・インダクタンスとインピーダンス

交流ではインピーダンスZ=R+j(ωL−1/ωC)で表し、位相差と周波数依存を伴う。配線や導体にはスキン効果・近接効果があり、高周波で実効抵抗が増大する。RLC共振ではQが鋭さを規定し、損失はQの低下として現れる。誘導性・容量性の寄生成分はレイアウトに依存し、高速信号では伝送線路としての整合、反射、減衰(α)、群遅延も設計要件となる。

誘電体の応答と損失

誘電体は分極により電荷を蓄えるが、分極遅れが損失(tanδ)を生む。εrは周波数・温度・含水率で変化し、吸湿性材料では漏れ電流や表面抵抗の低下を招く。極性高分子は低周波で高い損失を示しやすく、セラミックスは高εr・低損失の系が多いが、電界強度の上昇で非線形性や誘電破壊が支配的になる。

材料別の傾向

材料系ごとに典型的な電気特性の傾向がある。設計ではプロファイルの違いを前提に、温度・周波数・湿度の影響を併せて評価する。

  • 金属:高σ・低εr、温度係数正、スキン効果顕著
  • 半導体:ドーピングでσ可変、負の温度係数、空乏層とショットキー障壁
  • 絶縁体:低σ・高抵抗、εr・tanδで選定、表面リークと沿面放電に注意
  • 磁性体:μr高く磁束集中、周波数でコア損増加、ヒステリシス特性

測定法と規格

直流抵抗は4端子法でリード抵抗を除去し、微小抵抗はケルビン接続と高感度計測を用いる。容量・インダクタンスはLCRメータやインピーダンスアナライザで周波数掃引し、ガードリングで漏れ経路を遮断する。校正は基準標準器に準拠し、試験条件(温度・湿度・電圧・周波数)はJIS/IECの試験規格に合わせて記録することが望ましい。

信頼性・安全

高電界では絶縁破壊が生じ、沿面距離(creepage)とクリアランスの不足はアークを誘発する。湿熱・塩霧・汚染度は表面抵抗を低下させ、漏れ電流と発熱を増す。過渡サージとESDは微細デバイスを損傷しうるため、保護素子・シャント経路・グラウンド設計を組み合わせる。耐電圧・絶縁抵抗・絶縁耐力試験は安全の最小要件である。

設計への適用

材料選定ではρ・εr・tanδ・μrを定量比較し、目標周波数帯での損失と寸法制約を同時に満たす。配線幅・層構成・基材で寄生RLCを制御し、EMI/EMCではシールド、リターンパス短縮、フィルタで放射・伝導ノイズを抑える。熱は電気特性を変動させるため、熱設計と併走して余裕度を確保する。製造ばらつきと経時変化はSPCで監視する。

モデリングの要点

等価回路は分布定数と集中定数を組み合わせ、周波数分散はCole–Coleプロットや複素誘電率・複素透磁率で表す。非線形領域は電界依存性を導入し、温度・湿度・前履歴をパラメータ化する。SPICEモデルは寄生成分と損失を含め、実測ベースでパラメータ同定する。

データシートの読み方

  1. 抵抗率ρ/導電率σ:温度係数と許容差を確認
  2. 相対誘電率εr:周波数・温度カーブを必ず参照
  3. 誘電正接tanδ:損失と発熱の主要因
  4. 耐電圧・絶縁抵抗:試験条件と時間依存性
  5. インダクタンスL・Q:直流重畳と飽和電流
  6. 漏れ電流・ESD耐性:信頼性設計の下限値
  7. 許容差・ドリフト:長期安定性の見込み
  8. 推奨レイアウト:寄生抑制と放熱経路