集水ポンプ
集水ポンプは、掘削や地下階の施工、トンネル、プラント設備、雨水ピットなどに滞留・流入する水を集めて排出するためのポンプ設備である。一般に水中形遠心ポンプ(サブマーシブル)が広く用いられ、インペラの回転により圧力差を生じて水を吐出する。施工の安全・品質・工程管理に直結するため、必要流量・全揚程・耐スラリー性・電源条件・自動運転方式などを総合的に選定する。また、逆止弁やストレーナ、フロートスイッチ、水位計、漏電遮断器などの付属機器と一体でシステムとして設計・運用するのが要諦である。
目的と役割
集水ポンプの主目的は、施工空間の水位を制御して作業性と構造物の安定を確保することである。湧水や浸入水を放置すると地盤の軟弱化、型枠の浮き、機材の腐食・短絡、土圧・浮力条件の悪化などが生じる。建築地下階・基礎ピット、シールド・NATMなどの土木現場、設備更新時の一時排水、豪雨時の緊急排水にも活用される。計画段階で流入経路、集水ピットの容量、冗長化台数、排水先の処理設備まで含めて管理する。
作動原理と基本構成
遠心ポンプはインペラの遠心力で液体に運動エネルギーを与え、ケーシングで圧力エネルギーに変換して吐出する。水中形はモータとポンプが一体で浸漬され、冷却・騒音低減に有利である。主要構成はインペラ、渦室(またはディフューザ)、メカニカルシール、シャフト、モータ、ケーブル、持ち手・吊り金具、ストレーナである。吐出側には逆止弁・ゲート/ボール弁を配置し、上位にはフロートやレベルセンサで自動起動・停止を行う。必要に応じて異物通過径の大きい渦流タイプやカッタ付きタイプを選ぶ。
性能曲線と選定パラメータ
- 所要流量Q:湧水・浸入量、集水面積、ピーク時の余裕率を考慮する。
- 全揚程H:静水頭+配管損失(管摩擦・局部損失)で見積もる。
- NPSH余裕:キャビテーション防止のため、供給側条件とポンプ要求値の差を確保する。
- 固形物通過径・スラリー耐性:砂泥・砕石微粒の混入条件に合わせる。
- 連続/間欠運転、液温・pH、材質(鋳鉄、SUS、樹脂、耐海水仕様)を適合させる。
- 電源・起動:AC100/200/400V、起動電流、発電機容量、漏電遮断器の定格を整合。
- 自動運転:フロート、導電・静電容量式レベル、差圧式の制御方式を選定。
- 騒音・振動:深夜作業や密集地では低騒音仕様や消音対策を併用する。
種類と適用
現場で用いる集水ポンプは、水中形遠心ポンプが主流で、可搬性・耐環境性・保守性に優れる。動力の確保が難しい場合はエンジンポンプを用いる。自吸ポンプは地上据置で吸込配管が長い場合に有効だが、漏気による性能低下に注意する。高粘度・高固形分の濁水にはダイヤフラムポンプや渦流型が適する。薬液や腐食性排水にはマグネットポンプや耐食仕様を選ぶ。常設用では二重化(交互運転+予備)やインバータ制御で省エネ・安定化を図る。
計画・計算の要点
計画では「必要Q-H点」を定め、ポンプ性能曲線との交点で運転点を評価する。全揚程は静水頭に配管摩擦損失(管径・流速・長さ)と局部損失(エルボ、バルブ、継手)を加えて見積もる。集水ピットは短時間のピーク流入を緩衝できる容量を持たせ、起動回数を抑えるための有効水深を設定する。吐出側はヘッダー合流時の相互干渉を避け、逆止弁で逆流を遮断する。冗長化は「N+1」を基本とし、停電時の非常電源・発電機容量、起動電流に見合うケーブル断面と保護協調を確認する。
配管・付属品の設計
- 吸込側:ストレーナで粗ごみを遮断、渦巻きを防ぐ配置と没水深を確保。
- 吐出側:ホース/配管径は流速3m/s程度を上限に圧力損失と取り回しを両立。
- 継手:クイックカップリング(カムロック等)で着脱性と漏れ低減を図る。
- 弁類:逆止弁+遮断弁(ボール/ゲート)。点検時のバイパスを用意。
- 計測:圧力計、流量計、水位計、電力計で運転点を常時監視。
据付と運用の実務
集水ポンプは、安定した架台・吊りチェーンで設置し、吸込み口が堆積物に埋没しないようピット底から離す。ケーブルは機械損傷を避けて配索し、コネクタ部の防水と引張緩和を徹底する。フロートの作動範囲は壁面との干渉を避ける位置に調整し、起動/停止水位の差で過起動を抑制する。冬季は凍結・氷結、沿岸では塩害、坑内では腐食性ガスに留意し、停止時は系内の水抜きと洗浄を行う。
保守と故障モード
- 目詰まり:ストレーナ清掃・配管フラッシングで流量低下を回復。
- キャビテーション:水位確保・配管見直し・運転点調整で抑止。
- メカニカルシール摩耗:漏れ・発熱・振動を兆候監視し計画交換。
- ベアリング不良:異音・過電流を監視、グリース管理と芯出し点検。
- 絶縁劣化:絶縁抵抗測定とケーブル外傷点検、漏電遮断器の定期試験。
安全・環境・規格
感電防止のためアースと漏電遮断器(ELCB)を必須とし、湿潤環境での電工安全基準に従う。防爆区域は防爆形を選定。騒音は覆い・サイレンサで低減し、夜間は運転計画を配慮する。排水は沈砂槽・オイルフェンス・油水分離でSSや油分を低減し、法令・自治体基準に適合させる。性能検証は受入試験・据付後試験を実施し、遠心ポンプの水力性能受入に関してはISO 9906等の枠組みに整合させる。
デジタル監視と省力化
インバータ制御で水位に追従した可変速運転を行えば、過大吐出と再循環損失を抑え省エネと寿命延伸に寄与する。IoT水位計・電力計・流量計を組み合わせ、閾値超過や停止・空運転を遠隔通知することで異常の早期検知が可能になる。データロギングにより季節・降雨イベントと湧水量の相関を把握し、ポンプ容量の見直しやピット最適化、予防保全の根拠データとして活用できる。これらは集水ポンプの稼働率を高め、現場の安全性と生産性を同時に向上させる。