除雪車(ロータリ)
除雪車(ロータリ)はスクリューオーガで雪塊を切削・集積し、後段のインペラで高速に吹き飛ばして路面外へ排出する二段式機構の除雪機である。ブレードで押しのける方式に比べ、堆雪を遠方へ搬出でき、路肩に高い雪壁が形成された状況でも車線幅を確保しやすい。積雪深が大きい幹線道路、山間部、空港エプロンなどで主力として運用され、湿雪から低温の粉雪まで広い雪質に対応するように設計される。
仕組みと構造
前部ハウジング内のオーガ(左右対称のスクリュー)が雪を掻き込み、中央へ送る。次段のインペラが回転エネルギで雪を加速し、可変角シュートから所定方向・距離へ投雪する。ハウジングの高さ・開口幅は車幅と路線条件に合わせて最適化され、耐摩耗鋼や交換式エッジで路面追従性と耐久性を両立する。車体はホイール式またはクローラ式があり、都市部は機動性、急勾配や未圧雪路は踏破性が重視される。
動力系と制御
エンジンは車体走行系と作業系(オーガ・インペラ)へ動力を配分する。PTO直結、油圧駆動、補機専用エンジンなどの構成があり、近年はHST(油静圧)で微速から定速まで滑らかに速度制御する。投雪量はエンジン回転、作業系回転、走行速度の三要素で決まり、スリップ抑制のためのトラクションコントロール、デフロック、前後荷重移動の最適化が搭載される。
作業性能の指標
仕様検討では投雪能力と運行効率を左右する指標を定量的に把握することが重要である。路線ごとの気象・交通条件に応じて安全側の余裕を確保する。
- 投雪能力(t/h):雪密度を前提に1時間当たりの処理量を示す
- 投雪距離(m):雪処分地や路外空間まで確実に到達させる能力
- 切削幅・高さ:一工程で確保できる車線幅と壁面処理能力
- 実作業速度(km/h):安全視界確保と処理量のバランス
- 視認性:除雪灯、作業灯、着雪抑制のヒーター・デフロスタ
- 騒音・燃費:夜間作業や連続運用での周辺環境・運用コスト
運用と現場
除雪車(ロータリ)は降雪初期には通行確保を優先して走行系能力を活かし、豪雪期や雪壁処理では高出力連続投雪で路肩後退(ルートバック)を行う。交差点や横断歩道付近は視距と飛雪の影響を考慮し、適切なシュート角と投雪停止ゾーンを設定する。空港ではFOD管理の観点から雪片の粒径・飛散方向の制御が要求され、鉄道沿線や住宅密集地では周辺安全と騒音規制に合わせた運用計画を組む。
安全・法規・標識
作業時は歩行者・車両への飛雪リスクが最重要である。ガード、せん断ボルト、オーバーロードクラッチで異物噛み込み時の損傷を抑制し、バックアラーム、回転灯、後方カメラで接触・巻き込みを防止する。作業帯の進入規制、誘導員の配置、通信手順を定め、道路管理者の基準と車両区分に従った標識・灯火を遵守する。低温下の排気管理や一酸化炭素対策も留意点である。
メンテナンスと保守
日常点検ではオーガ刃先摩耗、せん断ボルトの欠損、チェーン・ベルト張力、油圧漏れ、ギヤケース潤滑、冷却系着雪を確認する。作業後はハウジング内の付着雪を除去し、凍結固着を防ぐ。塩化物による腐食対策として洗浄・防錆を徹底し、シーズン前にはベアリング、シール、駆動継手の予防交換で突発停止を回避する。予備品は消耗率に基づき季節前補充するのが望ましい。
導入時の着眼点
路線プロファイル(延長、勾配、曲率、障害物)、過去の降雪統計(最大・平均積雪、雪質)、処分空間、基地配置とオペレータ体制を踏まえ、性能・寸法・視界の整合をとる。アタッチメント互換性や輸送時の全幅・全高も実務上の制約となる。
- 必要投雪能力の算定とエンジン出力・作業系回転の余裕
- 切削幅・車幅と道路構造物のクリアランス
- 照明・除氷装備と夜間視界の確保
- 燃料・DEF供給や整備拠点のオペレーション設計
派生機と適用拡張
トラック搭載型は道路間移動に優れ、ホイールローダ前装着型は汎用性と視界に優れる。空港用の大出力機は広幅・長距離投雪に特化し、鉄道向けは軌道条件に合わせた小断面処理と飛雪管理が要点となる。都市部ではコンパクト機で路地や歩道の機動除雪を担う。
環境・快適性
最新機は排出ガス規制に適合し、アイドルリダクション、可変風量制御で燃費を抑える。キャブは防寒・防振・低騒音化が進み、除雪灯のLED化や熱線ガラスで着雪を防止する。遠隔監視で稼働・故障を可視化し、適切な隊列配置とルート最適化により限られた時間で最大の路面確保を実現する。これらを統合し、地域の降雪特性に合わせた運用設計を行うことが、除雪車(ロータリ)の真価を引き出す鍵である。