降圧コンバータ|高効率・低リップルで直流降圧

降圧コンバータ

降圧コンバータは直流入力電圧をより低い直流出力電圧へ高効率に変換するスイッチング電源である。英語ではbuck converterと呼ばれ、スイッチ(主にMOSFET)、ダイオードまたは同期整流用MOSFET、インダクタ、出力コンデンサ、制御ICから構成される。線形レギュレータと比較して発熱が小さく、電池駆動機器やPoint-of-Load(PoL)電源、USB給電系などで広く採用される。理想条件下の平均出力電圧はデューティ比Dに対しVout=D・Vinで表され、エネルギはインダクタの電流リップルを介して平滑化される。

動作原理

基本動作はスイッチON期間にインダクタへエネルギを蓄積し、OFF期間にそのエネルギを負荷へ放出する二相である。連続導通モード(CCM)ではインダクタ電流が常に正で、出力電圧はDに比例する。不連続導通モード(DCM)では軽負荷時にインダクタ電流がゼロへ落ち、伝達関数が負荷に依存する。スイッチング周波数fsが十分高いほど出力リップルは低下するが、スイッチング損失とEMIが増えるため最適化が必要となる。

基本回路構成

  • ハイサイドスイッチ:N-MOSFETが主流で、低RDS(on)とゲート駆動方式が重要となる。
  • 整流素子:従来はショットキーダイオードを用いるが、効率向上のため同期整流(ローサイドMOSFET)を採用する。
  • インダクタ:飽和電流と直流抵抗(DCR)、コア材質(フェライト、メタル系)を選定する。
  • 出力コンデンサ:容量、ESR、耐圧、温度特性が応答とリップルに影響する。
  • 制御IC:誤差増幅器、PWM/PFM制御、保護機能(UVLO、OCP、OTP)を内蔵する。

連続・不連続導通の比較と境界

境界導通(BCM)はCCMとDCMの境界で動作し、インダクタ電流が周期ごとにゼロへ戻る。BCMは低負荷効率を確保しやすい一方、スイッチング周波数が負荷に応じて変動しEMI設計が難しくなる。多くの制御ICは軽負荷でPFMへ切替え、スキップ動作によりスイッチング損失を抑制する。

設計指針:インダクタとスイッチング周波数

インダクタLは電流リップルΔILを目標(定格出力電流の20〜40%程度)に設定して決定する。概算はL≈(Vin−Vout)・D/(ΔIL・fs)で与え、飽和電流はIout+ΔIL/2以上を確保する。スイッチング周波数fsは小型化と損失・EMIの折衷で決める。高fsはLとCの小型化に有利だが、ゲート損失やスイッチング損失を増やす。

効率と損失要因

  • 導通損:MOSFETのRDS(on)、インダクタDCR、配線抵抗に比例するI2R損。
  • スイッチング損:トランジション時の重なり損とゲート駆動損。
  • ダイオード損:順方向電圧による損失。同期整流で低減可能。
  • コア損・銅損:インダクタの材質と巻線条件に依存。
  • 待機損:軽負荷時の制御回路消費電力が支配的になる。

制御方式(電圧モード/電流モード)

電圧モードは単純でノイズに強いが、負荷変動への一次遅れが増える。電流モードはインダクタ電流を内側ループで制御し、外乱抑制と過電流応答に優れる。斜面補償(slope compensation)はデューティ50%超でのサブハーモニック振動抑制に必須である。

PWM・PFMと周波数選択

PWM(固定周波数)はリップルとEMIの予測が容易で、フィルタ設計が行いやすい。PFMは軽負荷効率に優れるが、スイッチングスペクトラムが拡散しやすく通信系に影響し得る。最近は自動切替(auto PFM/PWM)ICが主流で、総合効率とノイズのバランスが改善されている。

補償設計と安定性

誤差増幅器の補償(タイプII/III)は位相余裕45〜60°程度を目標とする。出力コンデンサのESR零点は中域ゲインを押し上げるため、補償零点と合わせ込みボード線図で整合させる。電流モードでは伝達関数が一次近似になり、補償が比較的容易である。

リップル・ノイズ対策

  • レイアウト:スイッチングループ(Vin-スイッチ-ダイオード/同期FET-GND)の面積最小化。
  • グランド:パワーGNDと信号GNDのスター接続。アナログ基準点は静かな帰路へ。
  • スナバ:RCスナバでリンギング抑制。必要最小限の定数で損失を抑える。
  • EMI:入力にπ型フィルタ、インダクタはシールドタイプを選好。スプレッドスペクトラム機能も有効。

保護機能と安全性

過電流保護(OCP)、短絡保護(SCP)、過熱保護(OTP)、入力低下時のUVLOを備えることが望ましい。ソフトスタートは突入電流と出力オーバーシュートを抑制する。熱設計では熱抵抗θJAを用い、損失×θJA+周囲温度が定格以下となるよう放熱経路を確保する。

部品選定の実務ポイント

  • インダクタ:飽和電流余裕と直流抵抗、コアの周波数特性を総合評価。
  • 出力コンデンサ:セラミックの低ESRでリップル低減、ただしデリシエーションとDCバイアスによる容量低下に注意。
  • ダイオード:高効率重視なら同期整流。非同期は簡素・低コスト。
  • FET:低RDS(on)と低ゲート電荷のトレードオフをアプリケーションに最適化。

代表的応用

降圧コンバータはバッテリ機器の内部レール生成、産業機器のPoL、LED駆動(電流制御回路の前段)、車載12V→5V/3.3V系などに使用される。同期整流と低損失部品の採用により、95%超の効率も実現される。複数レール構成ではシーケンス制御と相間位相ずらし(多相化)で入力リップルと熱分散を図る。

数式と設計目安(抜粋)

  • Vout≈D・Vin(CCM理想)
  • ΔIL≈(Vin−Vout)・D/(L・fs)
  • 出力リップル電圧≈ΔIL×ESR+ΔQ/C(ΔQはコンデンサ電荷変動)
  • 効率η≈Pout/(Pout+P損失);P損失=導通+スイッチング+磁性体+制御損の和

用語補足

CCM(連続導通)、DCM(不連続導通)、BCM(境界導通)、PWM(Pulse Width Modulation)、PFM(Pulse Frequency Modulation)、ESR(Equivalent Series Resistance)、EMI(Electromagnetic Interference)を指す。これらは設計仕様書や評価レポートで頻出のキー概念である。