鋼製ハウジング|剛性密閉耐食で産業機器を保護

鋼製ハウジング

鋼製ハウジングは、機械要素や電子機器を外部環境から保護し、荷重の伝達・剛性の確保・位置決めの基準化を担う筐体である。ハウジング、エンクロージャ、ケースなどの呼称があるが、鋼は高い強度と遮蔽性、溶接・機械加工への適合性により、屋外設備や重負荷機械に広く用いられる。用途は減速機・ポンプ・モータ・ギアトレイン・制御盤・センサー筐体など多岐にわたり、防塵防水、耐食、耐衝撃、放熱、電磁遮蔽(emc)といった多面的な要求を一体で満たす設計が求められる。

定義と役割

鋼製ハウジングは、内部ユニット(軸受、歯車、回路、配線)を所定位置に固定し、外力・振動・熱・湿気・粉塵・水分から守る機能を持つ。さらに、組立・保守の作業性や、基準面・位置決め穴による交換互換性を付与する。筐体は単なる箱ではなく、荷重経路の設計対象であり、外力と締結力を適切に伝える「構造部材」である。

材料と規格

材料は一般構造用炭素鋼、合金鋼、耐食性が必要な場合はステンレス鋼(sus304、sus316)を選定する。目標強度、靭性、溶接性、加工性、コストのトレードオフで決める。板金構造かブロック削り出しか、鋳鋼ベースに機械加工するかで候補が異なる。面粗さや寸法精度は幾何公差で規定し、ねじ・座ぐり・はめあいはjis・isoの公差域に準拠させる。

鋳鋼と鋳鉄の使い分け(補足)

衝撃や溶接補修性を重視するなら鋳鋼、制振性や鋳造性を重視するなら球状黒鉛鋳鉄を採る場合がある。ただし本項は「鋼製」を主題とするため、鋼板溶接や鍛造・圧延材からの切削を中心に述べる。

構造設計の要点(剛性・疲労・座屈)

鋼製ハウジングは、荷重経路が短く連続するよう肋板・コーナーr・箱形断面を配置し、たわみ・応力集中を抑える。開口部周りは曲げ剛性が低下しやすく、補強リブやビードで補う。締結はボルト・ナットやスタッドを用い、座面の平面度、クランプ長、摩擦係数を見込んだ締付計算を実施する。疲労に対しては溶接止端形状・切欠きを管理し、応力振幅を低減する構造とする。

  • 固有振動数を使用回転数の1.25倍以上に離す設計
  • 面外座屈を避ける板厚・ビード配置
  • 開口端部の応力拡大を避けるコーナーr

防塵防水と密封設計

屋外や粉塵・水の多い環境ではip等級(例:ip54、ip65、ip67)を仕様化する。合わせ面は段差と迷路形状で浸入経路を長くし、ガスケットやoリングの圧縮率を適正化する。ケーブルグランド、覗き窓、操作ノブなど貫通部は最も弱い。部品数削減と共通化によって漏れリスクを下げる。

ガスケット・oリング選定(補足)

温度・媒体・圧力・繰返し開閉回数に基づき、nbr、epdm、fkmなどの材料を選ぶ。表面粗さ、溝形状、圧縮永久歪の管理が寿命を左右する。ボルト締結は面圧の均一化が鍵で、座金・カラーで荷重分布を整える。

製造プロセスと公差設計

板金溶接、曲げ、レーザ切断、機械加工(旋削、フライス、研削)、ショットブラスト、塗装の工程順を設計段階で固める。基準面・基準穴を早期に定義し、加工データムを工程内で維持する。一般公差(例:iso 2768)と幾何公差で必要十分の精度を狙い、過剰精度はコスト増に直結する。

  • 溶接歪対策:対称配置、タック溶接、予熱・後熱
  • 仕上加工の逃げ量と工具進入方向の確保
  • 塗装前の面取り・バリ取り・脱脂の徹底

表面処理と耐食設計

防錆は塗装(電着、粉体、溶剤)、めっき(溶融亜鉛、電気亜鉛、ニッケル)、化成皮膜を組み合わせる。屋外塩害には厚膜系塗装や溶融亜鉛めっき+上塗りが有効である。エッジ部は膜厚が薄くなりやすく、面取りとシール材で弱点を補う。締結・合わせ面は塗膜欠損が生じるため、防錆グリースやシーラントを併用する。

熱・振動・emcへの配慮

鋼製ハウジングはアルミに比べ熱伝導率が低いが、放熱フィン、伝熱パス(ベースプレート)、熱伝導シートで補える。振動はアイソレータや制振材で抑え、固有振動数の分離を図る。emcは導電ガスケット、シールドメッシュ、導通ビス、アースポイントの塗膜剥離設計で確保する。

品質保証と検査

外観は傷・塗膜欠陥、寸法はノギス・マイクロメータ・三次元測定機で確認する。溶接部はpt、mt、必要に応じてutを適用する。密閉性は加圧・減圧の漏れ試験、耐候は塩水噴霧や湿熱試験、ipは規定に従い粉塵・浸水試験を行う。工程内検査と最終検査の役割を分け、合否判定基準を明文化する。

トレーサビリティ(補足)

材料ミルシート、熱番号、溶接記録、塗装ロット、寸法検査成績書を製番・シリアルと紐づける。設計変更時は図番改訂履歴と互換性範囲を必ず残す。

代表的な応用例

ギアボックス、アクチュエータ、油圧ポンプ、屋外制御盤、搬送装置のセンサ筐体、産業用ロボットの関節部などで使われる。大型ではフレーム一体の箱形溶接、精密ではブロック削り出しとし、必要部のみ板金で覆うなどのハイブリッド構造も多い。

  • 屋外:耐食・紫外・温湿度サイクルを重視
  • 食品:洗浄性とステンレス化、溶接仕上の衛生性
  • 重機:衝撃・泥水・石噛み対策のプロテクタ構造

設計のチェックリスト

  • 要求仕様:サイズ、質量、荷重、温度、振動、寿命、ip等級
  • 構造:荷重経路、剛性、座屈、疲労、合わせ面、締結点
  • 製造:工程順、データム、治具、溶接歪、仕上代
  • 保全:開閉頻度、交換部品、シール再利用可否
  • 環境:耐食、塗膜、排熱、emc、騒音
  • コスト:材料、工数、表面処理、検査、物流