配電
配電とは、送電系統から需要家に至る最終段で電力を適切な電圧・品質・信頼度で供給する工学的システムである。都市や産業のインフラを下支えし、変電所の二次側から高圧6.6kV級や低圧100/200V級へ段階的に降圧しつつ、幹線・分岐・需要家設備へエネルギーを分配する。系統運用においては負荷変動と事故時の選択遮断、電圧品質の維持、保守作業の安全性、再生可能エネルギーやEV充電の導入適合が重要課題となる。信頼度指標(SAIDI/SAIFI)や配電自動化の指標を用い、設備計画・運用・保全の最適化を図る。
役割と範囲
配電は一次系統(超高圧・特別高圧送電)と需要家との界面に位置し、配電用変電所から引き出した中圧を幹線・柱上機器・地中ケーブルで配る。需要家側の受電設備(キュービクル式高圧受電)や低圧分電盤までを含めて、電圧変動・短絡電流・絶縁協調・保護協調を満たすよう体系設計する。
系統構成要素
- 配電用変電所:66/22/6.6kVなどへ降圧し、母線・遮断器・変圧器を備える。
- フィーダ:放射状に需要地へ伸びる幹線。地中線・架空線を用途で使い分ける。
- 開閉器・遮断器:LBS、PAS、リクローザなどで区分・再閉路を行う。
- 配電変圧器:柱上(単相/三相)や地上設置で低圧を供給する。
- 保護リレー・ヒューズ:選択遮断により影響範囲を局限化する。
- 計測・通信:SCADAやDAS、AMIにより監視・遠方操作・需給最適化を実施。
電圧階層と標準
国内の一般的な階層は、特別高圧→高圧6.6kV→低圧100/200Vである。三相三線または三相四線を用途で選択し、電圧降下や短絡容量、需要家機器の始動電流を考慮する。周波数は50/60Hzで地域差があり、機器選定や系統連系の前提条件となる。
配電方式
- 放射状方式:構成が簡潔でコストが低いが、幹線事故時の影響が大きい。
- 環状・ループ:開閉器切替でバックアップ供給が可能となり信頼度を高める。
- ネットワーク方式:都市地中系で用いられ、多重供給により安定度が高い。
保護協調と選択遮断
上位から下位へ時限・電流値を段階設定し、事故点に最も近い保護装置のみ動作させる。OCR、DSG、リクローザとヒューズ間の協調、地絡保護(零相電流検出)などを整合させ、不要トリップと復旧遅延を避ける。
負荷計画と電圧品質
- 需要率・負荷率・力率:設備容量選定と損失低減の基礎指標となる。
- 電圧降下:線路抵抗・負荷力率・配線長で決まり、幹線断面やタップ調整で抑制する。
- 高調波・フリッカ・瞬低/瞬停:インバータ負荷や落雷で発生し、フィルタ・STATCOM・無停電供給系で対策する。
需要家設備と幹線設計
高圧受電ではキュービクル(高圧受電盤、遮断器、計器用変成器、避雷器)を設置し、低圧側で幹線・分岐回路・配線用遮断器を配する。短絡電流計算、温度上昇、許容電流、絶縁距離、接地(D種等)を満たすことが必須である。
接地と安全
保安接地は感電防止と保護動作の確実化に資する。等電位ボンディングで電位差を抑え、故障電流の帰路を確保する。活線近接作業では絶縁保護具・バーリア・誘導対策を徹底し、事故点標定と区間切替で復旧時間を短縮する。
配電自動化とデジタル化
DAS/SCADAにより開閉器の遠隔操作、故障区間の自動分離、系統再構成を行う。AMIは需給データを高頻度収集し、配電最適化や需要家側EMSと連携する。状態監視(PD診断、油中ガス、温度・振動)で予知保全を実施し、停電時間の削減に寄与する。
再生可能エネルギーと逆潮流
PVや風力の分散連系により配電網は逆潮流・電圧上昇・保護設定の再設計を要する。無効電力制御(Q制御)、出力抑制、SVR/LRTの協調、周波数変動時のFRT要求など、配電網の動的安定を確保する設計が重要である。EV/PHVの高密度充電はピーク増大を招くため、時間別料金・V2G・ローカル蓄電との協調が有効である。
地中化・耐災害・保全
- 地中化:景観・耐風性に優れ、故障率低減が期待できるが、故障点標定と復旧が難しい。
- 耐災害:多経路化、ループ化、耐震化、止水構造、非常用発電との連携でレジリエンスを高める。
- 保全:熱画像・部分放電・油分析・ケーブル絶縁診断で劣化を捉え、予防保全を計画する。
設計・規格・適合
配電設計は、電気設備技術基準、JIS/IECの関連規格、電力会社連系要件に適合させる。短絡容量・耐雷設計・絶縁協調・クリアランス・温度上昇限度・EMCを満たし、機器定格と保護設定を整合させる。施工後は耐圧試験・保護機能試験・系統切替手順の検証を行い、運用段階ではデータ駆動で信頼度・損失・品質を継続的に改善する。