配管応力解析
配管応力解析は、配管系に作用する内圧・自重・熱膨張・地震や風などの外力、ならびに機器ノズルとの連成を考慮して応力・変位・反力を評価し、規格許容内で安全かつ保守性の高い配管レイアウトと支持計画を確立する技術である。化学プラント、発電所、油ガス設備などでは、熱サイクルや振動による疲労損傷、フランジ漏えい、ノズル過大荷重の防止が品質・稼働率を左右する。解析ではモデル化の妥当性、規格適合、施工・据付条件との整合を重視し、結果を設計・製作・現地調整まで一気通貫で管理することが重要である。
定義と目的
配管応力解析の目的は、一次応力(内圧・重量などで生じる膜応力)、二次応力(拘束に起因する変位応力)、偶発応力(地震・風・サージ)を区分し、許容値以内に収めることである。結果として、漏えい防止、疲労寿命の確保、機器ノズル・サポートへの過大反力の防止、保温・保冷や保守空間の確保といった実務要件を満たす。
荷重の分類
- 持続荷重:内圧、自重、内容物重量、保温・保冷、付加機器重量
- 変位荷重:熱膨張・収縮、機器据付誤差、地盤沈下、アンカー変位
- 偶発荷重:地震、風、サージ(水撃)、安全弁吹出
- 振動起因:ポンプ・コンプレッサの機械起振、流体励起(FIV)、音響励起(AIV)
応力評価の考え方
規格(例:ASME B31.3/B31.1)は、一次応力強度、変位応力範囲、偶発応力の各評価を要求する。変位応力範囲は熱サイクルに対する疲労を代表し、許容値は材料の冷間・高温許容応力(Sc, Sh)から定義される。一次応力は座屈や塑性崩壊の観点で厳密、二次応力は拘束緩和で軽減可能という性質差を理解し、判断する。
関連規格の例
ASME B31.3(プロセス配管)、B31.1(動力配管)、API 610(ポンプノズル荷重)、NEMA SM 23(コンプレッサ基準)などを参照し、発注仕様やJISとの整合を図る。
モデル化と要素パラメータ
直管、ベンド、エルボ、ティ、レジューサ、バルブ、フランジ、ベローズ、可とう継手などをビーム要素等で表現し、曲げ柔性係数やSIF(応力集中係数)を設定する。配管支持(固定、ガイド、スライド、ローラ、バネ、定荷重ハンガー)は拘束度・摩擦・ギャップ・向きを明示し、アンカー・ノズル境界は機器側条件と摺合せる。
解析手順
- 設計条件の整理:温度、圧力、比重、断熱、腐食代、設計寿命
- 系統分割と境界定義:アンカー、機器ノズル、伸縮継手の位置決め
- 初期レイアウトと支持計画の立案:スパン、ガイド間隔、熱オフセット
- 荷重ケース設定:SUS(持続)、EXP(変位)、OCC(地震・風)、組合せ
- 計算実行:変位・応力・反力・ノズル荷重・支持反力を取得
- 評価・改良:許容超過部の曲げ半径調整、ループ追加、支持再配置
支持設計の要点
支持は過拘束と過自由のバランスが肝要である。熱膨張方向は案内しつつ、膨張自由度は確保する。スライド・ローラは摩擦係数と移動量を、ガイドは横拘束と熱ドリフトを、バネ・定荷重ハンガーは冷・温設定、たわみ、設計反力を管理する。吊り・立上り・高温長尺ではスパンの見直しが有効である。
熱膨張吸収とレイアウト
自然可とう性を活かす直交レグやオフセット、エクスパンションループは、変位応力範囲とノズル荷重の同時低減に有効である。ベローズは高い可とう性を持つが、内圧スラストや座屈、微小変位疲労、支持条件に注意する。冷間引き(コールドスプリング)は施工再現性と記録管理を前提に限定的に用いる。
振動・疲労への配慮
回転機起振は運転回転数近傍で共振を避けるよう固有値を離隔し、必要に応じて補強・ブレース・ダンパを付与する。FIV/AIVは高流速・絞り部・ティ下流・薄肉配管で顕在化しやすく、支持間隔の短縮、配管肉厚・局所補強、流速低減、サイレンサ等で対策する。必要に応じて簡易評価や詳細FEAを併用する。
ノズル荷重の管理
ポンプ・コンプレッサ・タービンなどの機器ノズルに伝達する力・モーメントは、機器規格(例:API 610)やメーカー許容に適合させる。熱膨張を配管側で吸収し、据付誤差はフランジ強引締結で吸収させない。ノズル近傍の過拘束や偏芯荷重はシール性・軸受寿命を損ねるため、初期段階から機器・配管・土建で協調する。
解析ソフトと検証
代表的なツールには「CAESAR II」「AutoPIPE」「ROHR2」などがある。荷重ケースの網羅、単位・腐食代・比重・断熱の整合、支持の向きやフリクション、SIF・柔性係数の妥当性を相互点検し、結果は図面・アイソメ・サポート表・スプリング設定表へ確実に反映する。重要線は第三者レビューと現地据付時の検証(熱変位マーキング、スプリング読み)までを設計範囲とする。
実務での注意点
フランジの芯ズレ強引締結、現場での支持忘れ・向き違い、スプリングのロック解除忘れ、保温重量未反映、バルブ交換時の重量変動、試運転条件と常用条件の差異などが典型的な不具合要因である。設計・製作・施工・試運転の各段階でチェックリストを運用し、トラブル再発を防止することが、配管応力解析の価値を最大化する近道である。