配管の最小曲げ半径|材質・管径から決まる設計基準の要点

配管の最小曲げ半径

配管の最小曲げ半径とは、管の機械的健全性(割れ・座屌・しわ・肉薄化・楕円化)や流体性能(圧力保持・圧力損失・疲労・エロージョン)を許容範囲内に保ったまま曲げられる最小のセンターライン半径(Center Line Radius, CLR)を指す。設計では材料特性、管径・肉厚、温度、曲げ工法、要求品質(真円度や肉厚減少の限度)および適用規格の要求を同時に満たす必要がある。既製の溶接式エルボ(例:SR=1D、LR=1.5D)を用いる場合と、現場で冷間・熱間曲げを行う場合では成立条件が異なるため、常に「対象管・工法・規格・メーカー仕様」の組合せで判断する。

定義と測定基準

曲げ半径は原則として管のセンターラインに対して定義する(CLR)。製品カタログに最小曲げ半径が明示されるフレキシブルホースや樹脂管では、測定基準(内側曲げかセンターか)が併記されることがあるため注意する。受入可否は、楕円率(真円度)、外周しわ、内面の座屈、肉厚減少率、表面割れの有無などの検査項目で判定する。規格(例:ASME B31 系、JIS の圧力容器・配管関連)では、曲げ部の寸法公差や欠陥限度、非破壊検査の要求が与えられていることが多い。

設計に影響する主因子

  • 材料特性:降伏強さ、延性、加工硬化、低温脆性。焼鈍銅やオーステナイト系ステンレスは小半径に有利、硬質炭素鋼は支持具が必要になりやすい。
  • 寸法・形状:外径 D、肉厚 t、D/t 比が大きいほど楕円化・座屈リスクが増す。
  • 工法:引曲げ(draw)、圧曲げ(compression)、ロール曲げ、マンドレル曲げ、誘導加熱曲げ(induction)などで到達可能半径が大きく変わる。
  • 温度:冷間より熱間の方が小半径化しやすいが、材質変化・寸法安定性・残留応力管理が必要。
  • 品質要求:許容楕円率、肉厚減少率、表面性状(ライニング・内面コーティングの有無)による制約。

一般的な目安と規格の扱い

既製エルボは代表的に SR=1D、LR=1.5D が流通している(ASME B16.9 等)。一方、現場の冷間曲げでは、一般鋼管で D/t 比が大きい場合、マンドレルなしではおおむね CLR≧2.5D~4D 程度を目安とし、マンドレルやワイパーダイを適切に使えばより小半径が可能となる。樹脂管(PVC、PE、PP)は温度依存性が大きく、金属管より大きな半径が要求されやすい。フレキシブルホースやコルゲート管は製品カタログの最小曲げ半径を厳守する。誘導加熱曲げは大径配管で 3D~10D 程度の安定した曲げが得られ、ロール曲げは 10D 超の大半径スイープに向く。いずれも最終判断は適用規格とメーカー仕様に従う。

力学的観点:ひずみ・肉薄化・楕円化

曲げでは外繊維が引張、内繊維が圧縮を受ける。薄肉近似では外表面の曲げひずみは ε≈t/(2R) と見積もれるため、許容ひずみ ε_allow を仮定すれば R_min≈t/(2·ε_allow) が得られる。実務では同時に楕円率(f_ov=(D_max−D_min)/D×100%)と肉厚減少率を管理し、規格や社内基準の限度内に収める。D/t が大きいほど楕円化・しわが出やすく、マンドレル(球・リンク)とワイパーダイ、適正潤滑の有無が成否を分ける。内面ライニングやコーティングは引張・圧縮で損傷しやすいため、余裕を見た半径設定が望ましい。

簡易評価式

  • 外表面ひずみの概算:ε ≈ t/(2R)
  • 必要最小半径の概算:R_min ≈ t/(2·ε_allow)
  • 指標:R/D(1D, 1.5D, 3D…)を併記すると設計・施工間の意思疎通が容易になる。

配管種別ごとの実務指針

  • 炭素鋼・ステンレス鋼管:D/t が大きい場合はマンドレル必須。溶接・熱影響部から一定距離を離して曲げる。
  • 銅・銅合金管:焼鈍材は小半径が取りやすい。手動ベンダやスプリングベンダでの現場加工が多い。
  • 樹脂管(PVC/PE 等):温度と時間依存が大きい。低温で割れやすく高温で座屈しやすいので、カタログ値を厳守。
  • ライニング管・被覆管:剥離・き裂防止のため R を大きめに設定し、事前評価を行う。
  • フレキシブルホース:最小曲げ半径は製品固有。繰返し屈曲ではさらに大半径を要求する場合がある。

施工・品質管理の要点

曲げ型の半径・溝形状を外径に適合させ、必要に応じてマンドレルとワイパーダイを使用する。潤滑条件を統一し、スプリングバックを見込んだ過曲げ量を管理する。溶接やノズル、支持金具から十分なクリアランスを確保し、曲げ後に楕円率・肉厚減少・しわ・割れの有無を検査する。曲げ部近傍の応力集中を避けるため、ねじ締結体(例:ボルト)やフランジ面への干渉を排除し、必要なら応力除去や熱処理、補強を検討する。耐圧・漏れ試験や必要な非破壊検査を計画段階から組み込む。

数値例(参考)

例として、外径 D=33.4 mm(1 inch 相当)、肉厚 t=3.4 mm の鋼管を考える。外表面ひずみの概算式 ε≈t/(2R) を用い、許容ひずみ ε_allow=0.02(2%)を仮定すると、R_min≈3.4/(2×0.02)=85 mm となる。すなわち CLR が約 85 mm 以上なら、ひずみ条件だけを見れば成立しうる。一方、実際の最小曲げ半径は楕円率や肉厚減少率、しわ発生限度、規格要求、工法・治具能力によってより大きくなることが多い。既製エルボ(SR=1D=33.4 mm、LR=1.5D=50.1 mm)は成形条件と品質基準が専用に満たされているため、現場の冷間曲げと単純比較はできない。最終値は必ず対象製品カタログと適用規格で確定する。

実務フロー(推奨)

  1. 適用規格・運転条件(圧力・温度・腐食)・品質基準(楕円率・肉厚減少・NDT)を明確化する。
  2. 材料・D/t・曲げ方式から到達可能な範囲を見積もり、予備計算で R_min を算出する。
  3. 必要に応じてマンドレル・ワイパー・潤滑条件を定め、試作曲げで実測(CLR、楕円率、肉厚)を確認する。
  4. 量産・現場適用前に検査計画・治具管理・過曲げ補正・トレーサビリティを確立する。

留意点

小半径化は配管系の圧力損失や流速分布、振動・疲労に影響する。計装配管では計測誤差、ライニング管では剥離、樹脂管ではクリープや長期変形が問題化しうる。長期信頼性の要件が厳しい場合、必要に応じて R を増やし、支持・拘束・膨張吸収の設計を併用するのが望ましい。以上の理由から、配管の最小曲げ半径は単一の「数値」ではなく、設計・工法・品質基準の統合結果として決まる量である。適用規格とメーカー仕様に根拠付けられた値を採用し、曲げ品質の実測で裏付けることが重要である。