選挙法改正(第5回)
選挙法改正(第5回)とは、イギリスで1928年に制定された「Representation of the People Act 1928」を指し、男女の選挙権を21歳以上で完全に平等化した選挙法改正である。第4回の選挙法改正(1918年)が男性に普通選挙を与える一方で、女性の参政権を30歳以上かつ一定の財産資格に制限していたのに対し、この改正はその年齢・資格の差を撤廃し、真の意味での男女平等参政権を実現した画期的な改革である。この措置は、長年にわたる女性参政権運動の成果であり、同時期のイギリスの女性参政権の歴史において最終的な到達点と位置づけられる。
歴史的背景
19世紀以来、イギリスでは1832年・1867年・1884年の選挙法改正を経て、有権者層が徐々に拡大してきた。しかし、その対象は主として男性であり、女性は政治的権利から排除されていた。第一次世界大戦期、女性は工場労働や看護などを通じて戦時動員に積極的に参加し、その貢献により参政権要求の正当性が一層強まった。戦時中のロイド=ジョージ挙国一致内閣の下で行われた第4回選挙法改正は、女性への限定的な参政権付与という妥協的解決であったが、戦後の社会変化と政党政治の発展の中で、より徹底した改革が求められるようになった。
第4回選挙法改正との違い
1918年の第4回改正は、21歳以上の全男性と、30歳以上で一定の財産条件を満たす女性に選挙権を与えるものであった。このため選挙人名簿における男女比は依然として大きな隔たりがあり、女性は「補助的」な有権者として扱われていたと言える。これに対し、1928年の選挙法改正(第5回)は、男女とも21歳以上で同一条件の選挙権を認め、財産資格も撤廃した点に特徴がある。これにより、多数の若年女性が新たに有権者に加わり、いわゆる「フラッパー選挙」と呼ばれた1929年総選挙では、女性票が政党間の力関係に大きな影響を与えることになった。
第5回選挙法改正の内容
1928年の改正法には、次のような主要条項が含まれていた。
- 男女とも満21歳以上のすべての成人に議会選挙権を付与すること
- 女性に課されていた財産・家父長的資格などの特別要件を撤廃すること
- 居住要件などの登録条件を男女で統一し、選挙人名簿上の不平等を是正すること
- これに伴い、有権者数を大幅に拡大し、都市労働者や若年層の政治参加を促進すること
このような改革は、同時代の西欧諸国の停滞といった社会不安の中で、民主主義の正統性を高める試みとして理解される。また、女性を含む広い国民層を政治過程に組み込むことは、政党の政策立案や選挙戦略にも変化をもたらした。
イギリス政治と国際関係への影響
第5回改正後、イギリスでは労働党を含む政党が、福祉政策や雇用政策など家族・生活に密接に関わる政策を重視するようになった。新たに有権者となった若い女性の関心は、伝統的な外交・軍事だけでなく、教育・社会保障・雇用平等など幅広い分野に及び、これが政党の公約形成に反映されたのである。同じ時期、国際政治の舞台ではパリ不戦条約に代表される戦争違法化の試みや、ロンドン軍縮会議・ジュネーヴ海軍軍縮会議といった軍縮交渉が進められていた。国内でのイギリスの女性参政権の確立と、国際的な平和外交の動きは、第一次世界大戦の惨禍を背景とした「戦後秩序再編」という共通の潮流の一側面であったと言える。
世界の女性参政権運動との関連
1928年の選挙法改正(第5回)は、イギリス国内にとどまらず、他地域の女性運動にも象徴的な意味を持った。既に北欧や英連邦の一部では女性参政権が実現していたが、大国イギリスが男女同条件の選挙権を認めたことは、各国の改革論議に強い影響を与えた。日本を含む諸国では、イギリスの制度はしばしば参照例として紹介され、後の男女平等参政権の実現を正当化する理論的根拠ともなった。このように、第5回選挙法改正は、近代世界における民主主義と市民権の拡大を象徴する出来事として位置づけられる。