超音波流量計
超音波流量計は、配管内を流れる流体に超音波を送受信し、その伝搬に関する物理量(伝搬時間差またはドップラー周波数偏移)から体積流量や流速を求める流量計である。可動部がなく圧力損失がほぼ発生しないこと、非接液で後付けできるクランプオン方式が選べること、広い口径範囲と双方向測定に対応できることが特徴である。液体が主用途だが、気泡・固形分を含む場合や気体用途では方式の選定と設置条件が精度に直結するため、原理・配管条件・音速補正の理解が不可欠である。
原理(伝搬時間差法とドップラー法)
超音波流量計の主流は「伝搬時間差法(トランジットタイム)」と「ドップラー法」である。伝搬時間差法は、流れ方向と逆方向に斜め入射した超音波の到達時間差から平均流速を算出する。流体が均質で微粒子が少ない清澄液で高精度を得やすい。一方ドップラー法は、懸濁粒子や気泡による散乱波の周波数シフトを用いて流速を求め、懸濁液や汚泥などで有効であるが、粒子濃度や分布に依存しやすい。いずれも音速は温度・組成で変化するため、温度補償や媒体選定が重要である。
測定方式(クランプオン・挿入・フルボア)
クランプオン方式は配管外面にトランスデューサを装着し、非接液で後付け・停止不要の点検が可能である。挿入方式はプローブを管内に差し込み、高温・大口径に適する。フルボア(インライン)方式は本体が配管の一部となり、内蔵測定管の幾何学が既知で高い再現性を得やすい。選定時は口径、材質、肉厚、内面粗さ、ライニング有無、配管内充満条件、そして直管長を総合して検討する。
構成要素と配管条件
超音波流量計は送受信子(トランスデューサ)、信号処理器、取付治具(V/Z 配列治具、グリスやカップリング材)で構成される。配管条件では、上流・下流の直管長(一般にエルボ直後では精度悪化)、バルブ・ポンプ・配管分岐の影響、管内の充満状態、スケールやライニングの有無が重要である。多経路(2~4 経路)測定は速度分布の非一様性に強く、精度要求が高い用途で有効である。
校正・トレーサビリティ
高精度運用には基準校正が要る。マスターメータ法、体積槽法、質量法などで国家計量標準へトレーサブルにし、現場ではゼロ点調整・音速補正・配管寸法の再確認を行う。伝搬時間差法では音路長と取付角度の誤差が系統偏差を生むため、治具と手順の標準化が肝要である。
誤差要因と対策
- 気泡・固形分:時間差法の信号減衰→デガス、ストレーナ、ドップラー法の採用
- 温度・組成変化:音速変化→温度入力・媒体設定の更新
- 乱流・偏流:直管不足・エルボ直後→整流器・多経路化・取付位置変更
- 配管情報誤り:肉厚・内径の誤認→超音波厚み計で実測し設定
- カップリング不良:乾き・剥離→定期塗布と固定具点検
長所と短所
長所は、圧力損失が小さく可動部がないためメンテナンス負荷が低いこと、非接液で衛生配管や腐食性流体にも適用できること、双方向・低流速でも測定できることである。短所は、取付・配管条件の影響を受けやすく、濁度・気泡・スケールで信号品質が劣化する点、気体用途では音速・密度変動の寄与が大きく不確かさが増えやすい点である。
用途例
上水・下水、産業用水、薬液、食品・飲料、冷温水・蒸気の熱管理、ボイラ給水、石油化学のユーティリティ監視、ビル空調のエネルギー計測などが代表例である。クランプオンは既設配管の暫定計測やエネルギー監査に適し、インラインはプロセス計装の常設監視に用いられる。
規格・単位・関連計測
計測単位は体積流量(m³/h)や質量流量(kg/h)で、温度・圧力の併用測定により標準状態換算を行う。関連分野には、電磁誘導原理を用いる電磁流量計、管路の差圧から算出する差圧計、密度直接測定に基づくコリオリ流量計がある。プロセスの物性管理では湿度計や露点計、熱収支では熱流計も関係が深い。計測の総括は流量計の体系を参照するとよい。
選定手順(実務フロー)
- 媒体特性の把握:温度・圧力・粘度・固形分・気泡
- 配管情報の収集:口径・材質・肉厚・ライニング有無・直管長
- 精度・再現性・応答時間・出力(4–20mA、パルス、通信)の要求定義
- 方式選定:伝搬時間差法 or ドップラー法、経路数、クランプオン/挿入/インライン
- 現場検証:試験取付、信号強度・SNR確認、ゼロ点確認
- 校正・設定:音速・内径・取付角、温度入力、スパン設定
設置・配線・信号出力
屋外では防滴・防爆等級に一致する筐体とケーブルグランドを選定し、グランドループやノイズに配慮する。出力は 4–20mA、パルス、RS-485/Modbus、Ethernet による上位監視が一般的で、エネルギー管理やBAS/SCADAとの連携に適する。温度入力を併用し、熱量計算の演算機能を備える機種もある。
保守・点検
定期点検では、トランスデューサの固定状態、カップリング材の劣化、配管外面の腐食、ゼロ点ドリフトの確認を行う。クランプオンは短時間で再取付でき、計画停止なしで再現性の確認が可能である。長期運用時は配管スケール・ライニング変化を想定し、内径設定や音速テーブルの見直しを年次で実施する。
補足:気体計測の留意点
気体では音速が温度・圧力・組成に強く依存し、低密度で散乱体も少ないため信号レベルが下がりやすい。高温配管や大口径では多経路・高出力・適切な取付角を採用し、状態量の同時測定で補正することが望ましい。
補足:関連機器との使い分け
導電性液では電磁流量計が堅牢で、濁り液ではドップラーが有利、質量管理や密度変動が大きい場合はコリオリ流量計が適する。空調ダクトや環境観測では風速計などの速度計と併用して系統のバランスを検証する。