設計製造連携|共通データで設計製造を一気通貫化

設計製造連携

設計製造連携とは、製品の企画・設計段階から製造・保全までの情報と意思決定を一気通貫で結び、QCD(品質・コスト・納期)を同時に高めるための実務体系である。設計の意図(要求機能・許容差・材料選定)と、製造現場の実現性(工法・設備・治具・タクト)を早期に摺り合わせ、手戻りや不良立上がりを抑制する。コンカレントエンジニアリング、DFM/DFX、PLMやMESに代表されるIT基盤、EBOMとMBOMの整合、ECR/ECOの変更管理などが核となる。成果は初回合格率の向上、試作回数の削減、原価の見える化、そして短納期対応力の増強として現れる。

背景と課題

市場の多様化と短寿命化により、多品種少量・変動需要が常態化している。この環境では、設計完了後に製造が追随する直列型のやり方では遅く、現場起点の制約(加工可能な面、把持や定位、治具段取り、検査時間)を設計初期から取り込む必要がある。例えば締結点数や部品点数、標準部品の活用度がタクトや工数を左右する。ねじ締結の設計でボルトの規格・締結力・作業姿勢を考慮しないと、作業性低下や品質変動を招く。

基本概念:DFM/DFXとコンカレント

DFM(Design for Manufacturing)は加工・組立・検査の容易化を狙い、DFXは安全、信頼性、コスト、環境適合などXの観点を併せ持つ。これらを時間的重なりを持って進めるのがコンカレントエンジニアリングである。設計と生産技術が同じデータを見ながら、最少の試作で量産条件へ収束させる。

DFXの代表例

  • Design for Assembly:部品点数削減、方向性の無い部品形状、セルフアライメント化
  • Design for Cost:材料歩留り、加工時間、段取り回数を指標化
  • Design for Quality:ばらつき源の除去、許容差配分、検査容易性
  • Design for Environment:再資源化、危険物低減、エネルギー消費抑制

データ構造とBOM整合

設計側のEBOM(Engineering BOM)と製造側のMBOM(Manufacturing BOM)を対応付け、構成・代替・工程順序の差異を管理する。3D-CAD属性(材料、表面処理、質量)、図番・リビジョン、工程ルーティング、治具番号などを共通マスタで紐付け、変更時には自動で影響部位が特定できるようにする。

用語メモ

EBOMは機能・設計構成に基づく論理展開であり、MBOMは工程・作業順に基づく製造展開である。設計変更は両者へ伝播し、在庫・購買・検査票まで波及するため、単一情報源の原則が有効である。

変更管理とリリース

ECR(変更要求)からECO(変更指令)までのワークフローを定義し、影響評価(品質、原価、納期、適用時期)を関係部門で合議する。効果発生日やシリアル適用境界(エフェクティビティ)を明確にし、旧新混在のリスクを抑える。試作・量産のリリース判定はゲートレビューで形式知化する。

工程設計と生産技術の役割

生産技術は工法選定(切削、成形、接合、表面処理)、治具・工具設計、標準時間設定、作業要素設計を担う。設計段階での公差と加工能⼒の整合、冶具着脱のしやすさ、検査点のアクセス性などを擦り合わせることで、立上げ時の不良多発を防げる。QC工程表や作業標準は設計意図と紐づくべきである。

IT基盤:CAD/PLM/MES/APS/IoT

CAD・CAE・CAMは製造シミュレーションの入口となる。PLMは部品・図面・BOM・変更・ワークフローの中枢であり、MESは実績収集と指示を担う。APSは需給同期を行い、IoTは設備・治具から稼働・品質データを吸い上げる。共通IDによるデジタルスレッドを通し、設計値と実測値を双方向に循環させる。

品質・コスト・納期の指標

量産初期のFPY(初回合格率)、工程内PPM、不良コスト、タクト、WIP、リードタイム、原価差異などのKPIで効果を可視化する。設計側ではFMEA(設計・工程)、公差解析、ロバスト設計を併用し、ばらつきに強い仕様へ収束させることが有効である。

  1. 品質:FPY、再発防止率、クレームゼロ期間
  2. コスト:材料歩留り、段取り効率、直行率
  3. 納期:試作リードタイム、変更適用リードタイム、スループット

組織とコミュニケーション

クロスファンクショナルチームを定常化し、製品責任者のもとで設計・生産技術・調達・品質が同席する。設計審査(DR)では「完成の定義」を明文化し、図面・3Dモデル・公差表・MBOM・工程フロー・検査計画が欠けなく揃ったときのみリリースする。非機能要求(安全、保全、環境)も議題化する。

会議と成果物の例

  • DRチェックリスト:設計意図、加工可能性、検査容易性、保全性
  • 引継ぎパッケージ:図番とリビジョン、EBOM⇔MBOM対応表、治具一覧、検査計画
  • 変更ログ:ECR/ECO履歴、影響部位、適用境界

中小企業における導入ステップ

大規模システム導入に先立ち、現行Excelと図面台帳を整理し、命名規則・図番体系・版管理を徹底する。次にEBOMとMBOMの対応表を定義し、購買・現場の帳票と整合させる。段階的にPLMやMESに置き換えれば、混乱を避けつつ効果を得られる。

  1. 品目マスタ・図番・命名規則の統一
  2. EBOM⇔MBOM対応表の作成と維持手順の標準化
  3. DRチェックリスト運用の開始(試作段階から)
  4. 試作データの実測フィードバック(工数・歩留り)
  5. 小規模ワークフローの電子化(ECR/ECO)

典型的な失敗と対策

失敗要因として、属人化、二重マスタ、版の混在、設計意図の欠落、現場の暗黙知の未吸収がある。対策は単一情報源の徹底、ID連携、ゲート基準の明確化、現場観察に基づくDFXレビューの定常化である。さらに、教育(図面の読み方、幾何公差、工程能力)を継続し、組織としての学習を設計の入口へ戻すことで、設計製造連携は再現可能な競争力となる。