設計プロセス|要件定義から量産まで一気通貫

設計プロセス

設計プロセスとは、顧客・社会の要求を技術仕様に翻訳し、構想から詳細化、試作評価、量産移行までを体系的に進める一連の活動である。品質・コスト・納期・安全・環境といった多面的指標を同時に満たすため、要件定義、機能分解、原理選定、形状・構造設計、検証、製造準備、変更管理を段階的に実施する。機械、電気、ソフト、材料、生産技術が協働し、データと根拠に基づき意思決定することが要諦である。

目的と範囲

設計プロセスの目的は、要求を満たす解を安定的に創出し、ライフサイクル全体の価値を最大化することである。対象は製品・装置・システムに及び、成果物には仕様書、CADモデル、BOM、計算書、リスク分析、試験成績、取扱説明書などが含まれる。KPIとして品質(Q)、コスト(C)、納期(D)、性能(P)、安全(S)の達成度を追跡する。

フェーズの流れ

  1. 要求定義:利用者価値、規格、制約、環境条件を収集し、要求仕様に整流する。
  2. 構想設計:機能分解と原理案出、性能見積り、主要トレードオフの洗い出しを行う。
  3. 基本設計:主要寸法・構造・材料・制御方針を定め、検証計画を起案する。
  4. 詳細設計:公差設計、強度・熱・流体解析、回路・ソフト設計、加工条件の確定を行う。
  5. 試作・評価:EVT/DVT/PVT等で妥当性確認(V&V)を行い、是正を反映する。
  6. 設計凍結:要求充足と製造準備の観点でリリース判定を下す。
  7. 量産移行:DFM/DFA/DFSに基づき工程設計、治具・検査の整備、作業標準の確立を行う。
  8. 維持・変更管理:市場品質や規格変更に応じ、ECN/ECOで統制する。

上流:要求定義と仕様化

顧客の声や現場制約を要求に翻訳する段階である。QFDやユースケースで価値を構造化し、必須要件と性能余裕の境界を定義する。早期に規格(JIS/ISO)・安全・環境条件を織り込み、後戻りを抑制する。上流が甘いと以後の最適化は不可能である。

構想設計と基本設計

機能分解からモジュール化を進め、原理案を複数生成してスクリーニングする。形態設計や物理見積りにより成立性を検証し、主要寸法・材料・結合方法を仮決定する。設計解はDFX観点で評価し、性能・コスト・信頼性・製造性の総合最適を図る。

創造と案出の技法

案の広がりと妥当性を両立させるために、体系的手法を併用する。

  • TRIZと発明原理、矛盾マトリクスの利用
  • 形態設計法(モルフォロジカルチャート)による組合せ探索
  • KJ法・ブレーンストーミングでの発想拡張

詳細設計と検証

CAD/CAEにより強度(FEM)、熱・流体(CFD)、振動、疲労、電磁界などを解析し、公差設計で組付け性と性能ばらつきを制御する。重要部は設計計算書で根拠を可視化し、デザインレビュー(DR)で第三者検証を受ける。

リスク分析と試験計画

不具合未然防止のための体系が不可欠である。

  • FMEA/FMECAで故障モード・影響・優先度を評価する。
  • FTAで上位事象から原因木を解析する。
  • DoEで要因と水準を計画し、再現性ある検証を行う。
  • 公差解析とゲージR&Rで計測信頼性を確保する。

試作・評価・凍結

ラピッドプロトタイピングや3Dプリンタで学習速度を上げ、EVT/DVT/PVTの各段で妥当性確認を行う。法規・規格試験(安全、EMC、環境)を計画反映し、トラブルは是正処置と再発防止で閉ループ化する。条件を満たした時点で設計を凍結し、変更は統制下でのみ許容する。

製造準備と設計製造連携

DFM/DFAに基づく部品統合、加工容易化、組立手番短縮、検査自動化を進める。工程能力、治具・工具、QC工程表、作業標準、保全計画を整備し、生産技術・品質・購買・サプライヤの早期参画で立上げリスクを低減する。

量産向け設計の要点

量産では変動管理が価値の源泉となる。

  • 重要特性のCTQ設定と管理図(SPC)の適用
  • ポカヨケ、誤組防止、セルフチェックの設計
  • 部品共通化とモジュール化による在庫圧縮

品質・安全・コンプライアンス

安全原則(フェールセーフ、フールプルーフ)やPL法を踏まえ、ハザード識別とリスク低減方策を文書化する。トレーサビリティと是正・予防処置(CAPA)を確立し、フィールドデータを設計知へ還流させる。

データ・構成・変更管理

PLM/PDMでBOM・図面・手順書の一貫性を維持し、版数と有効日を厳格に運用する。ECN/ECOで影響範囲、適用タイミング、在庫処置を明確化し、逸脱・特採は承認フローで統制する。構成管理(CM)により「何が、いつ、どこに」が追跡可能となる。

マネジメントと継続的改善

ステージゲートで投資判断と品質を統制し、ウォーターフォールとアジャイルを適材適所で組み合わせる。レトロスペクティブで教訓を標準化・テンプレート化し、ナレッジを再利用する。指標として一次DR合格率、不具合密度、設計リードタイム、変更件数などを定点観測する。

実務チェックリスト

抜け漏れ防止のため、最低限の確認を定型化する。

  1. 要求の完全性・一貫性・検証可能性の確認
  2. 主要トレードオフと根拠データの提示
  3. 解析・試験の計画と妥当性の記録
  4. DFX評価と製造性・保全性の検討
  5. 変更管理の適正化と関係者周知

以上の体系を堅実に回すことで、設計プロセスは再現性の高い価値創出機構となる。組織横断の協働、データ駆動の判断、標準化された文書化を通じて、性能・信頼性・コストのバランスが実現されるのである。