計装配管
計装配管とは、プロセスの圧力・差圧・温度・流量などの情報を精度よく計装機器へ伝送し、また計装用空気やシール液を安定供給するための小口径配管である。一般のユーティリティ配管と異なり、信号忠実度(遅れ・脈動・ノイズの低減)、清浄度、耐食・耐圧、保守性、防爆・安全の観点を優先して設計・施工する点に特徴がある。配管経路は短くシンプルに取り、ドレン溜まりや気相溜まりを避け、振動・熱影響・電磁ノイズの影響を最小化することが基本である。
機能と役割
計装配管の主機能は、(1)プロセスから変換器(トランスミッタ)への測定信号の伝送(インパルスライン)、(2)コントロールバルブやポジショナへ計装用空気を供給する駆動ライン、(3)封液・パージなどによる機器保護である。信号伝送では脈動や気泡・凝縮の影響を抑え、時間遅れを最小化することが計装応答の安定化に直結する。
- 測定信号の伝送:圧力・差圧・液位などを歪みなく届ける
- 駆動・ユーティリティ:乾燥清浄な計装空気の安定供給
- 保護・隔離:ブロック&ブリード、パージ、シール液で機器を守る
使用材料と継手
材料は耐食性と清浄度を重視し、ステンレス鋼管(SUS316Lなどのシームレス小径管)が標準である。低圧の計装空気には銅管やポリウレタン/ナイロンチューブを用いる場合もある。継手は二重フェルール(ダブルフェルール)継手が主流で、再着脱性とシール性に優れる。高温・高圧用途や恒久接続では溶接も選択肢となる。ねじ接続はR/RcやNPTなどテーパねじに限定してPTFEテープや液体シールを用い、平行ねじ・フェルールにはシール材を使用しないのが原則である。
材料選定の指針
- 媒体の腐食性・含塩化物:SUS316Lで粒界腐食・孔食感受性を低減
- 圧力・温度:設計圧と最高温度で定格を余裕選定
- 清浄度:油分禁止系では脱脂処理、酸素系は厳格な脱脂と検査
- 発塵・溶出:樹脂チューブ使用時は溶出・透過を評価
設計・施工の要点
計装配管はレイアウトの几帳面さが性能を左右する。最短経路で不要な曲げ・継手を避け、保守空間と誤配・誤接続防止を確保する。支持は等間隔で、振動源から距離を取り、ケーブルと平行配索する場合は電磁ノイズに配慮する。液体測定は機器側へ向けて下り勾配、気体測定は上り勾配とし、代表的には1/100〜1/20程度の連続勾配を確保する。
- デッドレグ最小化:突き出し長さや袋小路を短く抑える
- 曲げ半径≥3D:過大なひずみと内面皺を回避
- 三方弁/五方弁:差圧計のゼロ調・隔離・ブローバイ防止
- フィルタ・レギュレータ:計装空気は乾燥・除油・定圧化
- 識別表示:ライン番号・流体名・流れ方向・色分けを明確化
- 熱影響対策:保温・ヒートトレースで凝縮や凍結を防止
- アクセス性:点検・校正・交換の作業動線を確保
ドレン・凝縮への配慮
蒸気差圧測定では凝縮器(シールポット)を両脚に設け液柱を等長化し、配管は連続勾配でドレン溜まりを作らない。低温環境では保温とヒートトレースで凍結を防止し、気体測定での液溜まり、液体測定での気泡混入を避ける。
接続方式とシール
二重フェルール継手は適正差し込み長さと初期締付角を守り、増締めは規定角で行う。テーパねじはシール材を過剰に巻かず、先端ねじ山の潰れや残渣流入を防ぐ。銅管ではろう付けも用いるが、熱による機器損傷や内部酸化皮膜に注意する。
P&IDと識別管理
P&ID上では計装ライン種別(インパルス、エア、パージなど)を線種や注記で区別し、タグ番号・ライン番号で現場と図面を一貫管理する。盤内・ラック内の配索は曲げ半径と分離距離を保持し、誤配防止のため端子番号・フェルールマーキング・色識別を併用する。
表示・色分け
- 媒体名・压力区分・流向の近接表示
- 緊急遮断・ブリード弁の明示
- 校正ポート・ドレンポートの識別
検査・試験
計装配管は製作後にフラッシングまたはブローイングを行い、異物・油分を除去する。気密試験は設計圧相当で段階昇圧し、石鹸水や差圧計でリーク確認する。酸素系・超高純度系ではヘリウムリーク試験や残留炭化水素測定を適用し、必要に応じて脱脂証明を残す。
保温・保冷とヒートトレース
熱遅れ・凝縮・凍結の抑制には保温材とヒートトレース(電気ヒータまたはスチームトレース)が有効である。端部は防湿仕上げとし、端末温度のモニタリングを設ける。温度測定系では過剰な保温により応答が遅れるため、必要部位のみの適用とする。
安全・防爆と法令への配慮
防爆エリアでは金属管・金属ダクトの接地や保護カバーで機械的損傷と静電気蓄積を防ぐ。高圧系は過圧保護(リリーフ・ブリード)と隔離弁の二重化、誤操作防止のロックアウトを実施する。点検時は残圧ゼロ化と媒体排出を徹底し、環境・安全に配慮して廃棄処理を行う。
保全と典型トラブル
代表的な不具合は微小リーク、フェルール座面傷、すきま腐食、振動による疲労亀裂、ドレン溜まりによるゼロドリフトである。定期点検では締付角・再締付履歴、支持間隔、摩耗・干渉、識別表示の劣化を確認し、校正・ゼロ点調整と合わせて系統的に記録管理する。これらの基本を守ることで計装配管の信頼性と計装の応答性・安定性が長期にわたり確保できる。