触媒コンバーター|CO・HC・NOxを三元反応で浄化

触媒コンバーター

触媒コンバーターは、内燃機関の排気中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)を化学反応によって無害化する排気後処理装置である。ガソリン機関では三元触媒(TWC)として、酸化反応と還元反応を両立させてCOとHCをCO2とH2Oに酸化し、NOxをN2へ還元する。基材はコーディエライトなどのハニカムで、アルミナ等のウォッシュコート上に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの貴金属触媒を担持する。排気温度の立ち上がり(ライトオフ)と空燃比の制御が性能を左右し、酸素貯蔵材(CeO2系)による一時的な酸素吸蔵・放出が過渡時の浄化を支える。

役割と機能

触媒コンバーターの主機能は、規制値を満たすために有害排出物を連続的かつ高効率に低減することである。ガソリン機関では閉ループ制御により空燃比を理論値(λ≈1)付近に維持し、前後流に配置された酸素センサーやA/Fセンサーのフィードバックで触媒の酸化・還元能力を最大化する。HCとCOはPtやPdで酸化され、NOxはRhで還元される。アイドルから高負荷までの広い作動域で反応を安定化するため、触媒容量、セル密度(cpsi)、配置位置が精密に設計される。

構造と材料

触媒コンバーターは、①ハニカム基材(コーディエライトや金属モノリス)、②ウォッシュコート(γ-Al2O3、CeO2-ZrO2等)、③貴金属触媒(Pt/Pd/Rh)、④断熱・固定用マットとケーシング(ステンレス製)で構成される。基材の細孔と比表面積が担持量と拡散特性を規定し、ウォッシュコートは耐熱性と触媒分散を担う。ケーシングは熱膨張や振動に耐えるよう巻き付け固定(カニング)され、気密性と低いバックプレッシャーが求められる。

  • 基材:軽量・低圧損のハニカム構造
  • ウォッシュコート:高比表面積と貴金属分散
  • 貴金属:反応選択性と耐劣化の要
  • ケーシング:熱・振動・腐食への耐性

反応原理

主反応は酸化(2CO+O2→2CO2、CxHy+O2→CO2+H2O)と還元(2NO→N2+O2)である。理論空燃比付近で排気の酸化・還元雰囲気が周期的に切り替わると、CeO2系の酸素貯蔵(OSC)が機能し、短時間の過濃や過薄に対して浄化率を維持する。貴金属は表面で吸着・活性化を行い、拡散・反応・脱離の各過程の速度を高める。貴金属量は性能とコストのトレードオフで最適化される。

配置と種類

近接配置型(エンジン直近)はライトオフが速く、床下配置型は容積を確保しやすい。ウォームアップ用サブ触媒を追加する設計もある。ガソリンではTWCが主流、ディーゼルではDOC(酸化触媒)、DPF(粒子状物質捕集)、SCR(選択還元触媒)やLNT(NOxトラップ)を組み合わせる。ハイブリッドではエンジン停止・再始動が頻繁なため、熱保持と迅速な活性化が要点となる。

性能指標

総合浄化率(CO/HC/NOx)、ライトオフ温度(T50/T90)、圧損、熱耐久(老化後性能)、硫黄耐性、OBD適合性が主要指標である。短距離・低温運転が多い市場では低温活性が特に重要で、近接配置や電熱補助、熱マネジメントの最適化が効果を持つ。

劣化・故障要因

熱劣化による貴金属の焼結やウォッシュコートの相変化、硫黄(S)・リン(P)・鉛(Pb)・亜鉛(Zn)・シリコーン(Si)等の被毒、潤滑油灰の堆積、ミスファイアによる過熱メルトダウン、物理損傷(路面衝撃)などが代表的である。OBDでは前後流センサー波形の相関で触媒効率を監視し、代表的なDTCに「P0420」がある。原因切り分けでは、燃調、点火、二次空気、排気漏れも併せて診る必要がある。

設計・適用上のポイント

最適なセル密度と容積は、排気量、出力、触媒活性、規制目標から決定する。配管は均一な流れと低圧損を両立し、熱遮蔽と断熱材で冷却損失を抑える。貴金属の組成比(Pd/Rhなど)は燃料性状や市場ごとのドライビングサイクルに合わせてチューニングされる。耐久設計では熱膨張差を考慮したマット圧とカニング剛性が重要である。

  • ライトオフ短縮:近接配置・断熱・起動戦略
  • 圧損低減:セル形状・流路整流
  • 耐久性:材質選定と熱・振動設計
  • コスト:貴金属最適化とプロセス性

規制・評価と適合

各国の排出ガス規制(例:欧州の最新規制、米国のTier 3、日本のWLTCベース試験)に適合するため、ベンチ・車両の両方で耐久後性能を検証する。蒸発ガス対策や車載診断(OBD II)も要件であり、触媒単体の活性だけでなく、空燃比制御、点火、燃料噴射、排気熱マネジメントを含むパワートレイン統合で最適化する。

保守・取り扱い

触媒コンバーターは消耗部品であり、清掃や改造で性能を回復させることは基本的に期待できない。ミスファイアやリッチ過多の放置は触媒を急速に劣化させるため、異常時は点火系・燃料系の診断を優先する。互換品の選定では適合規格、OBD対応、配管寸法、耐熱クラスを確認する。廃棄時は貴金属を含むため適正なリサイクルルートに回収することが望ましい。

関連する周辺システム

空燃比制御用の前後流センサー、排気マニホールドと遮熱板、二次空気供給、EGR、ターボ過給、サーマルマネジメントが触媒性能に直結する。車両制御としては暖機時のアイドル上昇、点火時期の保持、過渡燃調、EV走行との切り替え(ハイブリッド)などが重要である。これらの協調により、実走行条件で高い浄化率と燃費の両立が図られる。