解体仕様ショベル|長尺アタッチで高所解体を効率化

解体仕様ショベル

定義と位置づけ

解体仕様ショベルは、建物・プラントの解体作業に特化して設計された油圧ショベルである。上部旋回体・下部走行体・運転室・ブーム系統を強化し、高所到達や重質量アタッチメントの先端装着、粉じん・落下物・飛散物への防護、安全支援機能を標準化する。一般土工用機との差異は、構造強度、油圧容量、視界・保護、冷却・防じん、作業範囲管理の総合最適化にある。

主要構造と保護設計

解体仕様ショベルはブーム根元やアーム先端の板厚増、溶接継手強化、ピン・ブッシュ大型化を行う。運転室はFOPS/ROPS相当の前面・天井ガードを備え、チルトキャブや遮熱ガラスを採用する。カバー類は二重構造や格子で飛来物を遮蔽し、カメラや作業灯を高所向けに増設する。冷却系は大容量コアと可逆ファン、外気フィルタを採用し、油温上昇と粉じん目詰まりを抑制する。

ブーム構成と到達高さ

高所解体向けには多関節のハイリーチブームやテレスコフロントを用いる。セグメント分割と高圧配管のクイックカプラにより現場で組替が可能で、20〜50m級の到達が実現する。長尺化に伴う転倒モーメントは追加カウンタウェイトと可変脚幅の下部体で吸収し、作業半径と先端質量の許容を曲線管理する。

アタッチメントの種類と適用

  • コンクリート大割・小割用圧砕機(一次・二次解体)
  • 鋼材切断用油圧シア/カッタ(H形鋼・配管・ケーブル)
  • 油圧ブレーカ(局所破砕・基礎はつり)
  • マグネット/グラップル(撤去材の分別・積込)
  • ユニバーサルプロセッサ(旋回式・交換ジョー)

解体仕様ショベルは旋回配管を含む複数系統の高流量・高圧油路、優先弁、戻り配管の低背圧化、過負荷リリーフを標準化する。材料強度・板厚・圧縮強度に応じて先端質量と油圧出力を整合させることが選定の要点である。

作業方式と適用分野

鉄筋コンクリート、鉄骨造、煙突・サイロ、化学プラントなどで、トップダウン(上から下へ)方式や地上設置からの外壁解体を実施する。作業半径の内側に立入禁止帯を設定し、散水ノズルやミストで粉じんを抑える。騒音・振動規制に配慮し、ブレーカ使用と圧砕中心の手順を使い分ける。狭隘部や内装解体には小型機を併用する。

性能指標と選定基準

  1. 到達高さ・作業半径と先端許容質量(kg)の組合せ
  2. 定格負荷曲線と転倒限界、姿勢ごとの許容領域
  3. 油圧出力(L/min・MPa)と複合操作時の流量配分
  4. 機械質量・接地圧と履帯接地長、現場地耐力への適合
  5. 輸送分割性(ブーム分割・カウンタ脱着)と道路規制
  6. 粉じん・火災対策(自動消火、耐熱養生、可逆ファン)
  7. 視界支援(前後左右/先端カメラ、モニタ、作業灯)

解体仕様ショベルでは特に先端質量と姿勢に応じた安全領域管理が重要で、リミッタやアラームによる越境抑止が有効である。

安全機能と現場運用

ブーム・アームの保圧逆止弁、過負荷警報、作業範囲制限装置、非常停止、二重系統の安全弁を備える。落下物・巻込み・二次崩壊に備え、解体手順を事前検討し、上屋や配管の残留エネルギーを無力化する。遠隔操作ユニットや操作者支援(姿勢インジケータ、傾斜計)を併用し、視界不良時のリスクを低減する。

保守点検と耐久性

日常点検ではピン・ブッシュ摩耗、溶接止端の割れ、配管擦れ、旋回ジョイント漏れ、ワイヤハーネス損傷、油温・油質を確認する。高所作業は先端の微小ガタが破壊力低下につながるため、早期のピン入替とグリース管理が望ましい。非破壊検査や定期トルク点検、作動油・フィルタ交換サイクルの厳守が寿命を延ばす。

輸送・据付と設置条件

大型機は輸送時にブーム分割・カウンタウェイト脱着を行い、現場で補助クレーンにより組立する。設置面は地耐力を確認し、鉄板・マットで接地圧を分散する。組替後は作業範囲制限と負荷曲線を再設定し、試運転で油温上昇や配管漏れを点検する。

関連機種との使い分け

長距離掘削主体のロングリーチ機は河川・法面向けであり、高所での切断・圧砕を主眼とする解体仕様ショベルとは最適化の方向が異なる。標準土工機+簡易アタッチメントは小規模撤去に有効だが、飛散・強度・安全要求が高い現場では専用の解体仕様ショベルを用いるべきである。