角形鋼管
角形鋼管は、薄肉の鋼板を成形・溶接して得られる中空断面部材で、外形が正方形(SHS: Square Hollow Section)または長方形(RHS: Rectangular Hollow Section)である。丸鋼管と比べてねじり剛性が高く、平面に当てやすい形状のため、建築構造の柱・梁、機械フレーム、架台、手すり、フェンスなど幅広い用途に用いられる。表面は黒皮(未めっき)品から溶融亜鉛めっき品まで選択でき、意匠性や耐食性の要求にも対応する。設計上は断面性能、幅厚比、座屈、接合ディテール、表面処理・維持管理を総合的に検討する。
定義と分類
角形鋼管はJISにおいて一般構造用の規格が整備され、正方形断面をSHS、長方形断面をRHSと呼ぶ慣用がある。用途別には、建築・土木向けの一般構造用、機械フレーム向け、意匠・設備部材向けなどがあり、素材は軟鋼から高強度鋼まで幅広い。表面状態は黒管、亜鉛めっき、塗装済みなどが選べ、内面の防錆や端部の水抜き孔・キャップ処理も重要となる。
規格と表示(例:JIS G 3466)
角形鋼管の代表規格としてJIS G 3466(一般構造用角形鋼管)が知られ、グレードはSTKR400、STKR490などが一般的である。表示は外寸と板厚で行い、たとえばSHS 100x100x4.5、RHS 150x75x3.2のように記す。許容差(寸法・形状・質量)やマーキング、ミルシートの内容は規格に従い、設計者・製作者・施工者の間で寸法・公差・強度等を明確に合意しておくことが望ましい。
代表記号の例
STKR400 SHS 100x100x4.5、STKR490 RHS 200x100x6 など。必要に応じて表面処理(HDZ: hot-dip galvanizing 等)や塗装仕様を付記する。
製造方法の概略
角形鋼管は、熱延または冷延コイルを成形ロールで円状に曲げ、電気抵抗溶接(ERW)やレーザー溶接で縦継ぎを行った後、角成形ロールで正方形・長方形に矯正する。最終工程で寸法矯正・非破壊検査・切断・表面処理を行う。角部は成形上Rが付くため、名目寸法と有効断面の差異を理解しておくことが重要である。
コーナーRの扱い
角部Rは一般に板厚tの2〜3倍程度となることが多い。断面性能や接合プレートの当たり、仕上げ見栄えに影響するため、設計・製作で共有しておく。
断面性能と基本式
角形鋼管の断面積A、断面二次モーメントI、断面係数Z、回転半径iは、外寸B×H、板厚tとするとおおむね次式で評価できる(角Rの影響は別途考慮)。
- A = B×H − (B−2t)×(H−2t) = 2t(B+H−2t)
- Ix = {B×H³ − (B−2t)×(H−2t)³}/12(IyはBとHを入替)
- Zx = Ix/(H/2)、Zy = Iy/(B/2)
- i = √(I/A)(該当軸に対して算定)
SHSではIx=Iy、Zx=Zyとなり、弱軸を持たないため配置自由度が高い。自重・許容応力度・耐力設計のいずれでも、上式と規準値に基づき検討する。
設計上の留意点(座屈・局部座屈・幅厚比)
角形鋼管は圧縮、曲げ、曲げせん断、ねじりの組合せを受けることが多い。細長比λ=KL/iに基づく柱座屈、梁の横座屈、壁板の局部座屈に留意する。幅厚比b/t(または面の有効幅)に関する規定値を満たす板厚選定が要点で、薄板化し過ぎると早期座屈に至る。角R部は応力流が変化するため、応力集中・有効断面低下を見込むのが安全である。
耐震・靭性の観点
耐震用途では、降伏比・伸び・シャルピー吸収エネルギー等の要求を満たす鋼材を選定する。塑性ヒンジ想定部は幅厚比や溶接ディテールに特に注意する。
接合ディテール(柱・梁・ブレース)
角形鋼管柱とH形梁の接合では、通しダイアフラム、内ダイアフラム、スチフナ付きエンドプレートなどの方式が用いられる。RHS梁同士の直交接合では、溶接長・開先形状・ルートギャップの確保が重要となる。仮組・建方ではボルト仮締めで姿勢を保持し、本締めや溶接へ移行する。溶接残留応力・変形の管理、検査(VT、UT、MTなど)も欠かせない。
仕口の耐力検討
パンチングシア、面外局部座屈、ダイアフラム・パネルゾーンのせん断、応力伝達経路の連続性をチェックし、必要に応じて補強板を追加する。
耐食性・表面処理・維持管理
角形鋼管は薄肉であるため腐食減肉の影響が相対的に大きい。屋外露出部では溶融亜鉛めっき+塗装(重防食)や高耐候塗料を選択する。内腔の結露・滞水を避けるため水抜き孔・端部封止・乾燥剤・内面塗装などを計画し、定期点検・再塗装周期をライフサイクルコストの観点で最適化する。
加工・施工のポイント
角形鋼管の切断はバンドソーやレーザー切断が用いられ、開先は専用治具で精度を確保する。部材端部のプレート溶接では熱歪みを抑える溶接順序や拘束条件が重要で、仮付け・歪み取り・後熱処理の要否を事前に決める。開口・スリーブ挿入時は断面欠損と補強リブの設計を行う。
用途と選定指針
角形鋼管は、建築の柱・梁、耐震ブレース、庇・手すり・門扉などの建築付帯部、産業機械のフレーム・搬送装置・ロボット架台、太陽光架台や歩廊・塔状構造など、多岐にわたって利用される。選定では、荷重条件、スパン、接合方式、施工性、意匠、耐食環境、維持管理計画を総合評価し、断面サイズ・グレード・板厚・表面処理を合理的に決めることが肝要である。