粉じん計
粉じん計は、空気中に浮遊する粒子状物質(ダスト)の濃度を定量化する計測器である。作業環境管理や大気環境監視、製造現場の品質管理、建設・解体現場の飛散抑制評価などに用いられ、質量濃度(μg/m³)や粒子数濃度(個/cm³)をリアルタイムで表示・記録できる。代表的原理は光学散乱式とβ線吸収式であり、基準法であるグラビメトリック(ろ過捕集後に天秤で質量測定)との相関により換算係数を整定するのが一般的である。
測定原理
粉じん計の主流は光学散乱式で、レーザやLED光を粒子に照射し、前方・側方散乱光を受光して粒子量を推定する。光遮蔽式は通過光の減衰から濃度を求める方式である。β線吸収式はフィルタ上に捕集した粒子の放射線吸収量から質量を直読する。光学式は応答が速く保守が容易、β線吸収式は質量直読で長期監視に向く。基準法のグラビメトリックは高精度だがリアルタイム性に乏しいため、現場では光学式の連続測定と基準法の定期相関を組み合わせて用いる。
測定対象と粒径区分
粉じん計は対象粒径に応じてTSP(総浮遊粒子状物質)、PM10、PM2.5、吸入性粉じんなどを評価する。サイクロンやインパクタで粒径分級を行い、PM2.5のような健康影響が大きい微小粒子を選択的に測定する。エアロゾルの形状・屈折率・吸湿性は光学応答に影響するため、粉じん種別(例えば鉱物粉じん、カーボン、二次生成粒子)に応じた補正や相関確認が重要である。
装置構成
粉じん計はサンプリング入口、粒径分級器(サイクロン/インパクタ)、流量制御ポンプ、光源・受光部またはβ線源・検出部、信号処理・記録部、電源で構成される。屋外用は防塵防滴筐体、加熱インレットや除湿機構、温湿度・気圧センサを備えるものが多い。通信はSDカードやUSBに加え、RS-485(Modbus)、Ethernet、LTE/LPWAによる遠隔監視に対応する機種もある。
校正とトレーサビリティ
粉じん計の光学式はゼロ(HEPA通気)とスパン(標準粒子エアロゾルや既知濃度発生器)で点検する。PSL等の標準粒子で感度を確認し、現場粉じんと基準法(フィルタ捕集質量)との相関から質量換算係数(K係数)を整定する。流量計の校正は全体の不確かさを左右するため、定期的な一次標準へのトレーサビリティ確保が欠かせない。
設置と運用上の注意
屋外設置では直射日光、逆流、降雨・結露を避け、代表性のある高さと位置を確保する。吸気配管は短く曲がりを少なくし、壁面反射や局所発生源の影響を避ける。屋内では換気流や作業動線を考慮する。起動直後はゼロドリフトや温湿度安定に時間を要するため、ウォームアップ後の値を評価するのが望ましい。
データ処理と指標
粉じん計の表示は瞬時値、移動平均、1分/10分/1時間平均などがある。質量換算は粒子密度・形状・屈折率の仮定に依存するため、異なる地点・季節・発生源ではK係数の再検討が必要になる。環境監視では日平均・年平均などの統計値を用い、作業環境では時間荷重平均や短時間ピークを合わせて評価する。
応用分野
粉じん計は労働衛生(粉じん障害防止)、製造工程の清浄度管理、クリーンルームのパーティクルモニタ、建設・解体・ダンプ走行の飛散管理、鉱山・トンネル・製鋼所の環境改善、都市大気のPM2.5/黄砂・火山灰監視、学校・オフィスの室内空気質評価など幅広い。可搬型はスポット測定に、定置型は常時監視に適する。
選定ポイント
粉じん計の選定では、(1)対象粒径(PM2.5/PM10/TSP)と分級方式、(2)検出下限・ダイナミックレンジ、(3)流量と等速吸引の確保、(4)湿度影響と除湿手段、(5)防塵防滴・加熱機構、(6)校正・保守容易性、(7)記録間隔・通信方式、(8)電源(AC/バッテリ/ソーラ)、(9)設置スペースと重量を確認する。用途により光学式とβ線吸収式を使い分けるとよい。
メンテナンス
粉じん計の性能維持には、インレットやフィルタの定期交換、光学窓・チャンバの清掃、流量の点検、ゼロ・スパンチェックの記録、ファームウェアの更新が重要である。吸湿性粒子や油性ミストの多い現場では汚れの進行が早いため、保守周期を短縮し、消耗品在庫を確保する。
測定誤差とトラブル対策
粉じん計は高湿度で粒子が吸湿成長すると光学応答が過大になりやすい。除湿・加熱で緩和できる。揮発性成分は捕集後に質量が減少しうるため、基準法相関時は取り扱いに注意する。零点ドリフトは清浄空気導入で確認し、異常高値は吸気閉塞・漏れ・流量低下を点検する。季節・発生源変動に伴うK係数の見直しも誤差低減に有効である。