等電位化
等電位化とは、設備内の導電性部分や接地系、シールド、配管・金属筐体などを低インピーダンスで相互に接続し、通常時・故障時・雷サージ時における電位差を最小化する設計・施工手法である。人的感電リスクの低減、計装ノイズの抑制、機器誤動作の防止、雷・開閉サージの被害抑制を目的とし、配電、情報通信、医療、化学プラント、半導体製造装置のようなノイズ敏感環境で特に重視される。
目的と効果
等電位化の第一の狙いは、触れる可能性のある金属部と大地、あるいは金属部間の電位差を抑え、人体に流れる接触電流を低減することである。第二に、接地網・筐体・シールドを同一基準電位に束ねることで、コモンモードノイズやグラウンドループを抑制し、計測の再現性や制御安定性を確保する。第三に、雷電流や開閉サージのエネルギを広い網で拡散し、局所的な過電圧・過電流の集中を避ける。
基本原理(メイン/補助等電位)
建物・設備全体の基準となる「メイン等電位ボンディング」は、主接地端子(MET)に保護導体、配電盤筐体、主金属配管(給水・ガス)、鉄骨・基礎接地などを集中接続する。一方、局所空間の電位差をさらに小さくする「補助(ローカル)等電位」は、機器群やフロア、病室やクリーンルーム内で金属部・シールド・床グリッドを短く太い導体で相互接続する。いずれも低インピーダンス(直流抵抗だけでなく高周波成分も考慮)を維持することが要諦である。
規格・参照事項
代表的には IEC 60364 系列、IEC 61000-5-2/5-6、電気設備技術基準および JIS の関連規格が参照される。医療施設では患者区域の補助等電位、情報通信では接地分類(TN/TT/IT)や機器間ボンディングの扱いが重要である。雷保護との整合では LPS(Lightning Protection System)と内部等電位化の協調が不可欠である。
設計指針
- 導体経路は最短・直線的とし、不要なループや鋭角曲げを避ける。
- ボンディング導体は十分な断面積を選定し、発熱・機械強度・雷電流の耐量を確保する。
- 主要ノイズ源(インバータ、UPS、サーバ)周辺はメッシュ状グリッドを敷設し、接続密度を高める。
- 機器シールドは片側接地・両端接続を用途に応じて採用し、コモンモード経路を最適化する。
施工と接続技術
接続は圧着端子+ボルト締結、銅バーへのクランプ、溶接(エグゾサーミック)など信頼性の高い方法を用いる。塗装や酸化膜は導通を阻害するため、接触面を研磨・防錆処理し、腐食対策として異種金属接触を避ける。床下やダクト内では識別可能な色分け・ラベリングを徹底する。
補足:メッシュ接地
広いフロアではメッシュ接地(銅テープや銅線の格子)を敷設し、各機器を最寄りノードに短距離接続することで広帯域の低インピーダンス化を実現する。
医療・産業・ICTでの適用
医療施設では患者区域の金属部(手摺・水栓・床グリッド・機器筐体)を補助等電位で束ね、微小電流機器の安全性を高める。化学プラントや粉体設備では静電気対策としてボンディング・接地の一体設計が不可欠である。データセンタや研究所では機器間の信号リファレンスを統一し、通信誤りやリセット誤動作を抑える。
雷保護・SPDとの関係
等電位化は SPD(Surge Protective Device)の効果を最大化する前提条件である。SPDは導入点で過電圧をクランプするが、下流で電位差が拡大すれば横流・逆流が発生しうる。メイン・補助の等電位ネットワークでリファレンスを統一し、雷電流の分流経路を短く太く確保することが肝要である。
測定・検証
- 連続性試験:ボンディング導体と接続点の低抵抗をミリオームクラスで確認する。
- インピーダンス評価:高周波インピーダンスは配線レイアウトや面積ループで左右され、ベクトル的評価(周波数依存)を行う。
- 電位差監視:雷試験やインバータ動作時に機器間の瞬時電位差を測定し、改善余地を抽出する。
よくある不具合
ペイント越しのボルト止めで導通不良、異種金属接触による電食、片側のみの接続でメッシュが開回路化、機器更新時の未接続放置、シールドの不用意な多点接続によるループ電流などが典型である。定期点検でトルク・外観・抵抗を確認し、改修履歴を図面・台帳に反映する。
設計ドキュメント化
等電位化は単体の接地抵抗値だけでは評価できない。系統図(MET、補助ボンディング、SPD、機器シールド、配管接続)をレイヤ別に整理し、施工図・試験記録・維持管理手順を一体で管理する。更新や増設を前提に、将来の接続点・余長・母線容量にマージンを持たせる。
補足:材料選定
母線は銅バー(導電率・加工性)、屋外や腐食環境では錫めっき銅・ステンレスとの組合せを検討する。固定具は導通・耐食の両立を図り、絶縁ブッシュや防水を併用する。
安全・保全上の留意点
停電作業や雷注意報時の安全手順、感電・短絡防止のための絶縁養生、火気・溶接時の管理を徹底する。保全では目視点検だけでなく定量測定を組み合わせ、変更管理(MOC)で接続の抜け・逆トルクを未然防止する。
まとめの代わりに:実装の勘所
等電位化は「太く・短く・広く・確実に」が原則である。電位差を作らない配線形状、腐食を招かない材料接合、将来拡張に耐える母線容量、規格・雷保護・ノイズ抑制の整合を同時に満たすことで、感電防止とシステム安定性を両立できる。