等速ジョイント(CVジョイント)|一定角速度で動力伝達を維持する

等速ジョイント(CVジョイント)

等速ジョイント(CVジョイント)は、ドライブシャフトの角度が変化しても入力回転と出力回転の角速度を等しく保ち、駆動力を効率よく伝える継手である。サスペンションのストロークやステアリング操作に伴う大きな作動角と伸縮(プランジ)要求に応えつつ、トルク容量、効率、耐久、NVH(騒音・振動・ハーシュネス)をバランスさせるのが設計の要点である。代表形式は外輪側に用いられる球面溝式のRzeppa型(BJ)と、内輪側に用いられるプランジ機構付きのTripod型(TJ/DOJ)で、いずれも溝形状と転動体の幾何で等速条件を満たす。ブーツとグリースは寿命を左右する重要部材で、密封性と潤滑性の維持が不可欠である。

構造と作動原理

Rzeppa型は内外輪に等配された曲溝とケージ内の複数の鋼球で構成し、鋼球中心列が入出力軸の二等分面上を転動することで等速条件を満たす。曲溝のプロファイル、溝本数、ケージの案内精度が角度許容とトルク容量、摩耗挙動を規定する。一方、Tripod型は三叉のトリポッドヨークにローラを備え、チューリップ形状の外輪溝内を軸方向に滑動(プランジ)させることでホイールベース変化やエンジン搭載系の動きを吸収する。ローラはニードルローラ支持と表面硬化処理により接触応力を分散し、摩耗と発熱を抑制する。

種類と適用位置

  • Rzeppa/BJ(外輪側): 大角度に強く、操舵輪側に適する。等速性とNVHに優れる。
  • DOJ/TJ(内輪側): プランジ量を確保し、駆動系の長さ変化を吸収する。直進時の効率が高い。
  • ダブルオフセット/六溝タイプ: 角度とプランジの両立を図る派生形式で、高トルク車両やSUVで採用例がある。

車種やレイアウトにより形式の組み合わせは最適化されるが、操舵輪側の角度要求が厳しいためRzeppa型、トランスアクスル側はTripod/DOJ型という配置が一般的である。

設計要件(性能指標)

  1. 角度許容(作動角): ハブ側で40°級を要求する場合があり、溝プロファイルの最適化が鍵となる。
  2. プランジ量: サスペンションストロークとパワートレイン支持剛性に応じて数mm〜数十mmを確保する。
  3. トルク容量/耐久: 表面硬化(浸炭焼入れ)と残留圧縮応力付与(ショットピーニング)で面圧限界を底上げする。
  4. 効率: 転がり率の向上と潤滑管理で発熱と損失を低減する。
  5. NVH: ケージガイド、溝位相、グリースのちょう度で不整脈振動やシャックル振動を抑制する。

材料・熱処理・製造

内外輪・ケージ・トリポッドは低合金肌焼鋼を用い、浸炭焼入れ後に研削で溝形状と粗さを管理する。溝はクラウニングを付与してミスアライメントに対する許容度を確保し、鋼球やローラは高硬度・高清浄度材を採用する。ブーツはCR/NBR/TPEEなどを用途温度域で使い分け、クランプやボルト締結の面圧管理で密封性を維持する。グリースはモリブデン系を中心に、低温始動性と高温せん断安定性の両立を図る。

潤滑とシール(ブーツ)

ブーツは塵水の侵入を防ぎグリースを保持する一次バリアである。蛇腹形状は作動角とプランジを許容するよう屈曲応力を分散し、裂けやピンホールの発生を抑える。グリースは増ちょう剤・基油・固体潤滑剤の配合で耐荷重と耐摩耗を確保し、遠心分離で偏在しないよう粘度と付着性を設計する。

故障モードと症状

  • ブーツ破れ/グリース漏れ: 旋回時の「カチカチ」音、発進時ジャダ、発熱・摩耗の進行。
  • 溝・転動体のピッチング/フレーキング: 高負荷域で進行し、微細な金属粉がNVHを悪化させる。
  • ローラ固着/ケージ摩耗: プランジ不良や振動増大を招く。

点検ではブーツの亀裂、グリース飛散痕、ガタ(クリアランス)を確認する。異音は低速大舵角で顕在化しやすく、路面入力と区別して診断する。

整備・交換の要点

  1. 安全確保後、ハブナットの規定トルクを記録し再使用可否を確認する。
  2. アーム分離やシャフト引き抜き時はシール口元を傷つけない。
  3. ブーツ単品交換では清浄作業を徹底し、規定量の専用グリースを均等充填する。
  4. クランプとボルトは規定トルク・かしめ寸法で締結し、回転干渉を再確認する。
  5. ロードテストで異音・振動・操舵戻りを評価し、再増し締めを実施する。

設計上の留意点(車両側インタフェース)

等速条件は理論上でも製造公差・弾性変形で崩れうるため、ホイールオフセットやサスペンションジオメトリ、エンジンマウント動的特性と整合させる。等角速度性、プランジ剛性、ユニット質量配分を踏まえ、回転バランスと固有振動数の離隔を確保する。

用語整理

  • BJ(Ball Joint): Rzeppa型等速継手の通称。
  • TJ(Tripod Joint)/DOJ(Double Offset Joint): プランジ機構付き内輪側等速継手。
  • アウトボード/インボード: ハブ側/トランスアクスル側の配置呼称。
  • プランジ: 軸方向相対変位で、ミッションとハブ間の長さ変化を吸収する機能。

適用と発展動向

等速ジョイント(CVジョイント)はFF/FR/4WDの乗用車から商用車、EVまで広く用いられ、出力の高トルク化・軽量化・低フリクション化が同時に求められる。高精度溝研削と高機能グリース、ブーツ材の耐熱・耐寒両立、ケージガイドの最適化により、等速性とNVHの更なる改善が図られている。操舵角拡大やサスペンション長ストローク化の潮流に対しては、溝位相と転動体径の最適化で角度許容と耐久の両立が進む。保全面ではブーツ損傷の早期発見・グリース管理が最重要であり、異音兆候を見逃さない定期点検が推奨される。

総じて等速ジョイント(CVジョイント)は、駆動系の等速性・操安性・快適性を支えるキーパーツであり、車両運動・パワートレイン設計・製造技術の交点で性能が決まる。要求仕様を正しく定義し、材料・熱処理・幾何・潤滑・シール・締結の総合最適で耐久と効率を確保することが肝要である。