空気圧制御
空気圧制御とは、圧縮空気を動力および信号として用い、弁とアクチュエータを組み合わせて機械の運動や力を制御する技術である。空気は可燃性がなく清浄で、立ち上がりが速く安全性が高い反面、圧縮性に起因して剛性や位置決め精度に限界が生じる。一般にコンプレッサ、レシーバタンク、ドライヤ、フィルタ・レギュレータ・ルブリケータ(FRL)、配管、方向制御弁、流量制御弁、比例弁、空気圧シリンダなどで系を構成し、PLCやPIDで動作を統合する。製造現場の搬送・組立やクリーン用途で広く採用される。
基本原理と特性
空気は理想気体近似で挙動し、pV=nRT の関係が設計上の基礎となる。圧縮性により配管のコンプライアンスとシールの摩擦が応答遅れ・オーバシュートを生み、剛性が油圧より低い。一方、軽量な要素と高速応答の電磁弁により高いスループットが得られる。絞りを通過する流れは臨界圧力比(≈0.528)を下回るとチョーク流となり、流量は下流圧に依存せず上限に飽和する。乾燥度(露点)や微粒子は信頼性に直結するため、空気源処理を厳格に行う。
主要構成要素
- 空気源: コンプレッサ、レシーバ、ドライヤ。圧力変動を平滑化し、含水と油分を除去する。
- 配管・継手: 圧力損失と容積を低減するため、径と長さ、曲がり数を最適化する。
- 弁類: 3方/5方の方向制御弁、スピードコントローラ、チェック弁、クイックエグゾースト、比例・サーボ弁。
- アクチュエータ: 単動/複動シリンダ、ロッドレス、ロータリアクチュエータ、真空エジェクタ。
- 検出: 圧力・流量・位置の各センサ。位置検出にはエンコーダ、ホールセンサ、フォトインタラプタ、温度補償にサーミスタ、距離計測に距離センサや変位センサを用いる。
制御方式
空気圧制御は、シーケンス中心の開ループから、センサ情報を用いる閉ループまで幅広い。位置・速度・推力制御は、比例弁と圧力・位置フィードバックを組み合わせ、PIDやモデルベースで行う。摩擦と圧縮性の非線形に対しては、デッドゾーン補償やフィードフォワード、S字加減速が有効である。制御器はPLCやマイコンで実装し、信号はIO-Linkや各種フィールドバスで統合する。大推力・高剛性が必要な用途では油圧制御を用いる場合がある。
代表的な回路と機能
- 方向制御: 5ポート4方弁で複動シリンダを正逆転させ、出力側にスピードコントローラを設けて伸縮速度を独立調整する。
- 保持・安全: パイロットチェック弁で自己落下を防止し、ソフトスタート弁で立ち上がりの衝撃を緩和する。
- 高速排気: クイックエグゾースト弁で排気抵抗を低減し、ストローク終端の応答を改善する。
- 論理/選択: シャトル弁(OR)や2圧選択弁(AND)で簡易ロジックを構成し、空気のみで自律動作を実現する。
- 真空搬送: エジェクタと真空パッドでワークを把持し、軽量ロボットの先端機構に適用する。
設計計算と選定指針
推力は F=pAη で概算し、ロッド側は有効面積が小さい点に注意する。速度は v=q/A に概算でき、弁のCv値・配管径・供給圧で上限が決まる。必要ストロークと負荷条件から内径Dを決め、慣性やクッションの吸収能力を検討する。空気消費量はシリンダ1往復当たり V≈(πD^2/4)×行程×(P/Patm)×2 で見積もり、タクトからコンプレッサ容量を逆算する。位置決め用途では、機械ガイドの剛性と低摩擦化、センサ分解能、制御周期が精度を左右する。
安全・規格・品質
空気圧制御の安全設計は ISO 4414(空気圧システム一般規則)、ISO 13849(機械安全制御)や JIS B 8370 等に従う。残留圧の排気、二手押し、ロックアウト/タグアウト、過圧防止、安全弁の選定を行う。騒音は排気サイレンサと圧力最適化で低減し、食品・医薬ではオイルミストや粒子管理を厳格化する。保全では水分・錆・ゴミの侵入を防ぎ、シールと摺動部の摩耗を定期点検する。
応用分野
高速ピック&プレース、包装、基板搬送、計測治具、医療・バイオのクリーン搬送などで強みを発揮する。ロボットのエンドエフェクタでは真空把持や軽量グリッパが一般的で、位置・存在検知に前述の各種センサが組み込まれる。ライン全体ではSCADAやMESと接続し、圧力・流量・サイクルタイムを監視して品質を安定化する。
省エネと信頼性向上
- リーク対策: 石鹸水・超音波リークディテクタで漏れを見つけ、継手の締結とチューブ切断面の直角度を管理する。
- 圧力最適化: 過剰圧を避け、用途ごとにレギュレータで適正化する。必要に応じてブースタで局所的に昇圧する。
- 配管改善: 角の少ない配管、太径化、マニホールド化で圧損を削減する。
- データ活用: 流量・圧力トレンドから摩耗や詰まりを検出し、予知保全に活用する(IIoT)。
記号と略語
FRL(Filter, Regulator, Lubricator)、Cv(流量係数)、S字加減速、PID(Proportional-Integral-Derivative)、PLC(Programmable Logic Controller)などを用いる。図面ではISO準拠のシンボルで弁・アクチュエータ・計器を表記する。
関連項目
- 油圧制御:高推力・高剛性の流体駆動。
- エンコーダ:位置・速度を電気信号に変換。
- ホールセンサ:磁気による近接・位置検出。
- フォトインタラプタ:非接触の通過検知。
- サーミスタ:温度補償と保護。
- 距離センサ:ワーク位置のフィードバック。
- 変位センサ:微小変位の計測。
- ジャイロセンサ:姿勢・動的補償に応用。