空圧シリンダ
空圧シリンダは圧縮空気のエネルギーを直線運動に変換するアクチュエータである。装置の搬送、押し当て、クランプ、昇降など幅広い自動機で用いられる。油圧や電動に比べ、構造が簡素で軽量、起動応答が速く、過負荷時に破損しにくい特性を持つ一方、発生推力は供給圧と有効断面積に制約される。近年は省エア・低漏れ設計、ロッドレス化、磁気スイッチ搭載による位置検出などが普及し、短サイクルかつ高い繰返し精度を実現しつつある。
構造と動作原理
空圧シリンダはシリンダチューブ、エンドカバー、ピストン、ピストンロッド、シール類、クッション機構で構成される。複動形では両室に交互に空気を導入し伸長・収縮を行う。単動形は片側にばねを内蔵し、加圧で一方向、ばね力で復帰する。メータアウト(排気絞り)で速度を安定させ、端部では調整ニードル付きクッションで衝撃を緩和する。ロッドレス形はスライダがチューブ外周を走行し、長ストロークでも省スペースである。
単動・複動
単動は配管が簡便で軽負荷・保持用途に適し、複動は推力が大きく制御性に優れる。ばね反力や摩擦を見込み、単動の有効ストローク端での残圧・保持力を必ず確認する。複動ではロッド側の有効面積が小さく、押し側と引き側で推力差が生じる。
クッションと速度制御
端部クッションはピストンがストップ面に当たる直前で流路を絞り減速させる。一般にメータアウト制御が安定で、微小速度ではスティックスリップを避けるため背圧の作り方が重要となる。スピードコントローラ、チェック弁、流量制御弁の組合せで応答と停止再現性を最適化する。
推力計算とサイズ選定
空圧シリンダの静的推力は F[N]=P[Pa]×A[m^2] で与えられる。A はピストン径 D の有効断面積 A=πD^2/4、ロッド側は A=A_p−A_r である。実機では摩擦・配管圧損・姿勢変化・外乱を見込み、必要推力に対して一般に20〜50%の余裕を持たせる。供給圧は多くの工場で0.5〜0.6 MPa程度で運用されるが、安定供給が前提である。加えて、取付剛性とガイド方式を選定し、曲げ荷重やロッドの撓みを抑える。
計算例
例として D=40 mm、P=0.5 MPa の複動形を考える。押し側有効面積 A=π×(0.04)^2/4=0.0012566 m^2、よって F=0.5×10^6×0.0012566≈628 N(約64 kgf)。ロッド径16 mmなら A_r=0.0002011 m^2、引き側は A≈0.0010556 m^2、F≈528 N(約54 kgf)となる。運転摩擦や速度制御の背圧を考慮し、目標荷重が400 Nなら40 mmは妥当、より高速・高頻度なら余裕を見て50 mmを検討する。
周辺機器と配管設計
空圧シリンダの性能はバルブ、レギュレータ、フィルタ、ルブリケータ(FRL)、配管径、チューブ長、継手形状に大きく依存する。配管圧損を小さくし、弁のCv値を推力・速度要求に見合うよう選ぶ。取付はフランジ、トラニオン、脚、クレビスなどの治具で確実に固定し、ボルトの締結力と緩み止めを適正化する。スイッチ付き形ではケーブル取り回しとノイズ対策を考慮する。
位置検出と制御
ピストン磁石に対するリードスイッチやソリッドステートスイッチでエンド近傍を検出する。原点・中間位置はストッパ、外部ガイド、カムとセンサの組合せで実現する。空圧比例弁やサーボ弁とポジショナを併用すれば速度・位置の連続制御も可能であるが、剛性と応答は電動アクチュエータに劣るため用途適合が肝要である。
形式バリエーション
空圧シリンダには、丸形・角形、薄形、ガイド付、ロッドレス、クランプ形、ノンローテータ(回り止め)、耐熱・耐腐食仕様、クリーンルーム対応など多様な派生が存在する。設置スペース、必要ストローク、横荷重の有無、周囲環境(粉塵・水・油ミスト)を基に絞り込む。
- ガイド付:横荷重を受け持ち、位置決め精度を向上
- ロッドレス:長ストローク・省スペース
- 薄形:装置高さ制約下での押し当てに有効
信頼性・保全
空圧シリンダの劣化はシール摩耗、ロッド傷、摺動部の潤滑不足、クッション針の緩み、スティックスリップが典型である。乾燥清浄な圧縮空気(適切な露点)を維持し、微粒子を除去する。無給油仕様でも初期塗布の潤滑膜を損なわぬ配管と速度設定が望ましい。定期点検では漏れ音・速度変動・停止再現性を確認し、異常時は早期にシール交換を行う。
安全と環境
停止エネルギーは機械的ストッパとクッションで吸収し、人と協働する箇所では速度・推力を抑える。排気音はサイレンサで低減し、クリーン仕様では発塵対策を施す。非常停止時のエア遮断・排気ロジックを整理し、復帰時の暴走を防ぐ。
電動・油圧との使い分け
空圧シリンダは高速反復の直線動作、軽〜中負荷、装置の簡素化・低コストが重視される場面に最適である。高推力・高剛性や厳密な位置決めは油圧・電動が優位であるが、空圧は冗長化しやすく、停止時に自己保護的で扱いやすい。工程要件、エネルギー効率、保全性を総合評価して選定することが重要である。