研摩布紙仕上げ|面粗さ均一化と微小バリ除去技法

研摩布紙仕上げ

研摩布紙仕上げは、布あるいは紙を基材とするコート砥粒(アルミナやSiCなど)を用いて、工作物表面の微小な凹凸を除去し、所望の面粗さと外観に整える最終工程である。切削や研削で残る加工目、バリ、酸化皮膜、溶接ビードの整え、塗装やめっき前の足付けなど、機械加工から表面処理まで広い場面で使われる。砥粒が個々の切れ刃として作用し、微細切削と塑性押しならしが同時に進むため、Ra・Rzといった粗さ指標を狙って制御しやすいのが特長である。番手(粒度)を粗→中→細へ段階的に替えることで深い条痕を徐々に消し込み、最終面を安定させる。

原理とメカニズム

砥粒先端の微小切れ刃が突出部を切削(micro-cutting)し、浅い領域では掻きならし(ploughing)が並行して起こる。接触圧と相対速度が高いほど材料除去率は上がるが、発熱や目詰まり、焼けのリスクも増す。押付け荷重、摺動速度、接触幅、砥粒切込みのバランスが面粗さ・加工能率・熱影響の鍵である。開放配列の砥粒面は切粉排出に有利で、閉鎖配列は切れ味が高いが目詰まりしやすい。

ツールと材料

基材は紙(P)と布(X・Jなどのウエイト)があり、紙はコストと平滑性に、布は曲面追従と耐久に優れる。砥粒は酸化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニアアルミナ、セラミックアルミナ等を用途に応じて選ぶ。結合剤は接着系と樹脂系が主流で、耐熱・耐水性や柔軟性に影響する。形態はシート、ロール、ベルト、ディスク、フラップホイールなどがあり、手仕上げからベルトサンダ、ランダムサンダ、ポリッシャまで機械適用範囲が広い。

番手選定と面粗さのめやす

  • P80~P120:荒仕上げ。切削目消し、バリの一次除去、溶接ビード整形。
  • P180~P240:中仕上げ。下地の平坦化、塗装前の足付け。
  • P320~P400:仕上げ。Ra≈0.8~1.6 μmの目安(材質と条件で変動)。
  • P600以上:微細仕上げ。鋼の鏡面前段や樹脂・アルミの最終仕上げに用いる。

粒度番号はJIS・FEPAの体系差に留意する。同一番手でも材質(鋼・アルミ・銅・樹脂・木材)により到達粗さは変わるため、サンプルテストで最適番手列を固めるのが実務的である。

標準的な工程設計

  1. 前処理:脱脂と乾燥。スケールや厚い酸化皮膜は先行工程で除去。
  2. 平坦化:目標より粗い番手で加工目の主方向に沿って直線ストローク。
  3. 段階切替:番手を1~2段階ずつ細かくし、交差方向ストロークで前工程の条痕を完全に消す。
  4. 熱管理:押付けを過度にせず、休止・エアブロー・湿式で温度上昇を抑える。
  5. 清掃確認:番手切替ごとに表面と砥粒面を清掃し、異物混入を避ける。

手仕上げと機械仕上げ

手仕上げは小面積やエッジ制御に適し、微妙な面当たりを感覚的に合わせやすい。一方、軌道が安定しないと波打ちやムラを生む。機械仕上げ(ベルトサンダ、ランダムサンダ等)は能率と再現性に優れるが、当て過ぎると角面が丸くなり形状精度を損なう。治具・当板・定圧機構の併用で均一化するのが定石である。

品質管理と測定

面粗さは触針式や光学式でRa、Rz、曲線フィルタ条件まで含めて管理する。評価長さ・基準長さの選定や、測定方向(加工目直交)が結果に影響する。参照片による目視官能評価を補助に用い、ロット間のばらつきはMSA(測定システム解析)で点検する。塗装前なら付着性試験(クロスカット等)で足付け品質を裏付ける。

不具合と対策

  • 目詰まり(loading):軟質材や湿気が原因。開放配列、研削助剤付き製品、エアブロー、ワックス・ステアリン酸塗布で改善。
  • グレージング:砥粒の切れ刃が鈍化。番手戻し、接触圧調整、砥材交換サイクル短縮。
  • 深い条痕残り:番手飛ばしや交差方向不足。段階を詰め、マーキングで消し込み完了を確認。
  • 焼け・変色:過大荷重・高速度。押付け低減、湿式化、断続加工で温度を下げる。

材質別の要点

炭素鋼・合金鋼はアルミナ系が汎用で、硬質材やスケールにはジルコニアやセラミック砥粒が強い。アルミや銅は軟質で目詰まりしやすく、開放配列や防止コート品、SiCの鋭利さが有効。樹脂・FRPは発熱に敏感で、低荷重・高送り・広面接触を避ける設定が奏功する。木材は繊維方向を意識し、最終番手で目止めの均一性を確保する。

工程設計の勘所(能率とコスト)

ボトルネックは「番手切替回数×作業者スキル×砥材寿命」で決まる。番手を飛ばし過ぎると再作業が増え、細かくし過ぎると時間と砥材費が嵩む。面積・材質・目標Raからタクトを逆算し、治具化・定圧ツール・集塵一体化で平準化する。砥材は単価でなく除去量/枚(もしくは到達Ra/枚)で原単位評価すると選定が合理化する。

安全衛生・環境配慮

粉じんは呼吸用保護具、保護眼鏡、手袋で防護し、金属粉の可燃性にも注意する。集塵装置は吸引風量とフード位置を最適化し、湿式ではスリップや漏電対策を講じる。VOCを用いる前処理剤は換気を確保する。廃砥材は材質区分に応じて分別し、再資源化の可否を事前に確認する。

代表的な用途

機械加工後の条痕除去、切断面のバリ取り、溶接継手の段差ならし、鋳肌の整え、塗装・めっき・接着の前処理、金型補修、アルミ押出材やステンレス外装の化粧仕上げ、木工の目止めなど、量産・試作を問わず幅広い。携帯工具での現場対応から自動ラインまでスケール適用が容易で、最終外観と機能信頼性を支える基礎工程である。