直流電鉄|直流で走る都市鉄道の方式

直流電鉄

直流電鉄とは、電力会社の配電から変電所で整流した直流をき電し、車両がレールまたは架線から受電して走行する電化鉄道である。都市圏の地下鉄・私鉄に広く採用され、600~750V級や1,500V級(一部3,000V級)の電圧系を用いる。き電は変電所から正極フィーダで供給し、帰線はレール系統を通る構成が一般的で、高い加減速性能・きめ細かな停車間隔・信号保安装置との親和性が強みである。一方、帰線電流の外方漏れ(迷走電流)による電食や絶縁協調、回生電力の吸収条件など、設計・運用上の留意が多い。

電化方式と定義

直流電鉄は、車両の主回路に供給される電力が直流である点に特徴がある。交流電化に比べ、変電所側で変圧・整流を担い、線路側は比較的低電圧・大電流となるため、電圧降下対策として変電所間隔やフィーダ太さ、セクション配置を最適化する必要がある。

電圧規格と選定理由

  • 600~750V級:第三軌条方式や近距離路線で用いられる。機器の小形化と安全余裕が得やすい。
  • 1,500V級:日本の地上区間で一般的。電流値低減により損失・断面積を抑えられる。
  • 3,000V級:長距離・高出力用途で採用例がある。

選定は走行抵抗、駅間距離、勾配、需要電力、設備更新コストの総合最適で決まる。

集電方式(架空電車線・第三軌条)

架空電車線方式はパンタグラフで摺動集電し、高速・高出力に適する。第三軌条方式は車両側靴で側方または上下面から集電し、トンネル断面の縮小や構造簡素化に寄与するが、降雨・積雪対策や保安柵等の安全設計が不可欠である。

変電所とき電・帰線系統

変電所はAC受電し、変圧器と整流器(ダイオード、サイリスタ、近年はPWMコンバータ)でDCを生成する。正極フィーダとセクションスイッチにより区分き電し、帰線はレール・帰線用ケーブル・負き電線で構成する。レール継目の低抵抗化、軌道回路との両立、き電線路の保護協調が重要である。

車両主回路の発展

直流電鉄の車両は、直流直巻電動機+抵抗制御からチョッパ制御を経て、現在はVVVFインバータ(IGBT)で三相誘導電動機またはPMSMを駆動するのが主流である。効率向上、回生制動の拡張、保守削減、騒音低減が得られる。

回生ブレーキと電力吸収

回生制動では車両が発電機となり、直流き電線へ電力を返送する。同期受電する列車や回生吸収装置(SIV負荷、変電所側の回生インバータ)がないと回生失効し、抵抗器での発熱消費(発電ブレーキ)へ移行する。ダイヤ設計と電力設備の協調が鍵となる。

迷走電流・電食とEMC

帰線の一部が土壌・構造物へ漏洩すると、パイプラインや橋脚の金属に腐食(電食)を誘発する。対策として、レール絶縁強化、帰線ケーブルの併設、排流器・排流装置、保護電位の監視、信号・通信への電磁両立性(EMC)確保が行われる。

保安・絶縁協調と保守

地絡保護、過電流・過電圧保護、セクション切替、避雷器の配置を体系化する。沿線設備のクリアランス、支持物の絶縁階級、汚損環境での漏れ電流管理、活線近接作業の手順標準化、状態監視(温度、振動、部分放電)を計画保全に組み込む。

適用領域と特徴

直流電鉄は駅間の短い都市鉄道で加減速・停車頻度の多い運用に適し、回生制動の効果が高い。交流電化に比べ変電所間隔が短くなりやすいが、需要の集中する大都市圏では総合効率が高い運用を達成しやすい。

設計指標の例

  • 電圧降下許容、短絡容量、変電所間隔、フィーダ断面、レール抵抗
  • 回生受電率、力行・惰行・制動配分、ピーク電力抑制
  • EMC/接地設計、保護協調、保全性(MTBF/MTTR)

歴史と事例

世界の大都市圏で早期に普及し、日本でも私鉄・地下鉄の骨格として定着した。電力変換器・高効率電動機・監視制御(SCADA)の進歩により、エネルギーマネジメントと信頼性が継続的に向上している。