産業用ロボット|AIと画像処理で高精度・省人化へ

産業用ロボット

産業用ロボットは製造現場で溶接、組立、搬送、塗装、検査などを自動化するための多関節機械である。人手作業の品質ばらつきや安全リスク、タクトの制約を低減し、24時間稼働を可能にする。可搬重量、到達距離、自由度、繰返し精度、耐環境性(粉塵・油・クリーン)などの仕様を満たし、コントローラと教示ペンダントにより動作を定義・最適化する。安全規格に基づきフェンスや光電センサ、非常停止回路を備え、近年は協働型により人と同一空間での運用も広がっている。

定義と特徴

産業用ロボットはプログラム可能な多軸駆動機構であり、センサ情報を基に目標位置・姿勢・力を制御する装置である。ファクトリーオートメーション(FA)の中核として、ライン変更や段取り替えに柔軟に適応し、OEE向上と品質トレーサビリティの強化に寄与する。

主要構成要素

  • メカニズム:リンク・関節、減速機、エンコーダ、ケーブル配索
  • アクチュエータ:ACサーボモータ、直動ユニット、ブレーキ
  • コントローラ:リアルタイム制御CPU、補間・補正、I/O、フィールドバス
  • エンドエフェクタ:グリッパ、トルク制御スピンドル、溶接トーチや塗装ガン(治具固定はボルトなどを使用)
  • 安全系:非常停止、ドアインタロック、ライトカーテン、速度監視

ロボットの種類

  1. 垂直多関節:汎用性が高く、溶接・組立・搬送に広く用いる
  2. SCARA:水平方向の剛性と速度に優れ、挿入・ねじ締めに適する
  3. 直交(ガントリ):大可搬・広域カバー、パレット搬送や工作機連携
  4. パラレル(デルタ):高速ピッキングや選別
  5. 協働ロボット:力・速度制限や接触検知により人と共作

座標系と教示

産業用ロボットはベース、ツール、ワーク、ユーザの各座標系を用いる。教示はティーチング(ジョグ)とオフラインプログラミング(OLP)を併用し、関節補間・直線補間・円弧補間を使い分ける。TCP校正とワーク原点合わせが精度の要である。

制御方式

基本は位置制御であるが、接触作業では力制御やインピーダンス制御を併用する。カメラと統合したビジュアルサーボや、コンベア同期(エンコーダ追従)で移動物体を追尾する。高剛性軸はゲインを高め短サイクル化を図る。

位置決め精度と繰返し精度

絶対精度は幾何誤差や熱変形の影響を受ける一方、繰返し精度は同一点に戻る能力を示す。多くの工程では後者が重要で、外部計測による補正で絶対精度も改善可能である。

規格・安全

産業用ロボットの安全設計はISO 10218や協働向けISO/TS 15066の考え方に沿う。フェンス内運転時は安全カテゴリに基づく二重化を行い、協働では速度・力制限、停止監視、パワー&フォースリミティング(PFL)を整える。リスクアセスメントは導入前に必須である。

協働時の速度制限

協働運転では作業者との最短距離と予測接触力から許容速度を設定する。ツール先端形状の丸み付けやエッジ除去も有効である。

選定指標と仕様読み解き

  • 可搬重量:ツール・ワーク・治具・ケーブルまで含めた総重量で評価
  • 到達距離(リーチ):干渉を考慮した有効作業域
  • サイクルタイム:往復動作(例えば25/305/25mm)の標準比較を参照
  • 耐環境:IP等級、塗装仕様、防爆、クリーンルーム対応
  • 設置:床置・壁掛・天吊の可否、重心と基礎強度

可搬重量の表記

カタログ値は重心位置を仮定した基準である。重心が離れると必要トルクが増すため、余裕を持った機種選定が望ましい。

プログラミングと統合

産業用ロボットはベンダ言語やティーチペンダントのGUIで動作を記述する。PLCとフィールドバス(PROFINET、EtherNet/IPなど)で信号連携し、MESへ実績を上げる。OLPではCADから軌跡を生成し、干渉・到達性・サイクルを事前検証する。

典型用途

  • アーク・スポット溶接、レーザ加工、シール塗布
  • ピッキング・箱詰め・パレタイジングとデパレ
  • 挿入・ねじ締め・圧入、研磨・バリ取り
  • 外観検査、測定、治具交換の自動化

周辺機器と工程設計

ビジョン、力覚、AGV/AMR、治具切替え、クイックチェンジャなどを組み合わせる。段取りは「供給→把持→位置決め→加工→検査→排出」の流れでタクトバランスを取る。治具固定には締結部品(例:ボルト)の緩み対策も重要である。

保全と信頼性

産業用ロボットの予防保全ではグリース交換、バックラッシュ監視、電流・温度の傾向管理を行う。ログとアラームを収集し、停止時間(MTTR)短縮のために交換性を設計段階から確保する。

導入手順の要点

  1. 目的定義:品質・タクト・安全のKPI設定
  2. 実行可能性:サンプルで把持・挿入性評価、治具案出し
  3. 詳細設計:パス計画、サイクル試算、レイアウト・安全策
  4. 立上げ:ティーチとデバッグ、FAT→SAT、作業者教育
  5. 本稼働:データ収集と継続的最適化

人と設備の役割分担

人は判断や改善を担い、産業用ロボットは反復・危険・重労働を担う配置が生産性と安全の両立につながる。