片面基板
片面基板は、絶縁基材の片面にのみ銅箔パターンを形成したプリント配線板である。低コスト・短納期・量産容易性に優れ、家電、電源モジュール、照明、玩具、産業機器の簡易制御回路などで広く用いられる。導体層が1面であるため配線自由度は限定されるが、設計ルールの最適化、ジャンパや0Ω抵抗の活用、広いグラウンド領域の確保で多くの用途に対応できる。製造はフォトリソグラフィとエッチングが基本で、表面処理やはんだレジストにより実装信頼性を確保する。
定義と位置づけ
片面基板は単層配線板に分類され、片側に銅箔、反対側は主にシルク印刷や素地面となる。スルーホールは部品リード挿入用に設けるが、基本は非めっき孔(NPTH)であり、必要に応じてランド強化や機械的強度目的でめっき孔(PTH)を採用する場合もある。高電圧や高周波、高密度実装には不向きな場面がある一方、製造プロセスが簡素で歩留まりが高い点が強みである。
構造と材料
- 基材:紙フェノール(紙エポキシ)、FR-4(ガラスエポキシ)が主流。コスト重視なら紙系、寸法安定性や耐熱性重視ならFR-4が選ばれる。
- 銅箔:一般に1oz/ft²(約35µm)を用いる。電流容量や発熱を考慮し、0.5ozや2ozを選択することもある。
- レジスト:ソルダレジストははんだブリッジ抑制と耐湿性向上に寄与する。色は緑が一般的だが他色も可能。
- シルク:部品記号、極性、検査マーク等を印字し、保守性を高める。
製造工程の概略
- パターン設計(DRC、ネットチェック、ガーバ生成)
- 露光・現像(フォトレジストで銅箔をマスキング)
- エッチング(不要銅を除去し回路を形成)
- ドリル加工(リード孔、位置決め、取り付け孔)
- ソルダレジスト印刷・硬化
- 表面処理(HASL無鉛、OSP、ENIGなど)
- シルク印刷、外形加工、電気検査(E-test)、外観検査(AOI)
設計指針(配線・レイアウト)
片面基板では帰路電流の経路設計が品質を左右する。ループ面積を極小化し、広いGND島を確保してインピーダンスを下げる。交差が避けられない場合はワイヤジャンパや0Ω抵抗を最小限活用する。高電流ラインは太く短く、信号線は鋭角を避け45°ベンドを基本とする。デカップリングコンデンサはIC近傍に配置し、電源-GND間の経路を最短化する。発熱部品の周囲には熱拡散用の銅エリアを設け、感度の高いアナログ部とスイッチング部は物理的に距離を取る。
銅箔厚と導体幅の目安
1oz銅箔の場合、周囲温度や許容温度上昇にもよるが、直流で1Aあたりの導体幅目安を0.5〜1.0mm程度から検討し、設計ツールの電流計算やメーカー推奨値で最終決定する。発熱を抑えるには短距離・広幅・厚銅の三点最適化が有効である。
実装プロセスとはんだ付け
実装はスルーホール部品主体でフローはんだが用いられる。チップ抵抗やSOT系など軽量SMDを片面に載せる構成も一般的で、接着剤点付け後にフロー実装する方法がある。手はんだでは熱容量の大きいランドに熱吸収が偏らないよう、熱リリーフを設ける。はんだフィレットの形成性とメンテナンス性を考慮し、レジスト開口は部品とランドの種類に応じて最適化する。
表面処理と耐食性
表面処理は実装法・部品構成・保管条件で選ぶ。HASL(無鉛)はコストと実装性のバランスが良い。OSPは平滑で微細ピッチに向くが保管・リワークに注意する。ENIGは平坦性と耐食性に優れ、微細部品やコネクタ端子に適する一方、コストは高めである。
信頼性確保と評価
- 熱信頼性:リフロー・フロー熱衝撃、サーマルサイクルで剥離・クラックを評価。
- 電気特性:絶縁抵抗、耐電圧、リーク電流、開短検査(E-test)。
- 環境耐性:耐湿性(85℃/85%RH等)、腐食、汚染度に応じたクリープ距離管理。
- 外観品質:ランド形状、レジストピンホール、レジストはみ出し、シルク可読性。
EMC/ノイズ対策の要点
片面基板では全面GNDプレーンを取りにくいため、GNDメッシュや広い島で低インピーダンス化する。高速エッジを持つ信号はループ短縮、信号・帰路の対向配置、不要アンテナ化の回避が重要である。電源入口にLCフィルタやフェライトビーズ、要所のスナバ回路、スイッチング電源のレイアウト最適化で伝導・放射の双方を抑制する。
適用分野と経済性
家電のインターフェース基板、電源二次側、LED照明用ドライバ、簡易センシング回路、教育用キットなどは片面基板の得意分野である。製造はパネル化で効率化し、共通設計ルール(最小線幅・クリアランス・最小孔径・アニュラリング)を早期に合意することで見積と量産の整合を取りやすい。
コスト低減の実務要点
- ジャンパ最小化と配線優先順位の明確化
- 標準ドリル径・標準スリット寸法の活用
- 外形の直線化・面付け効率の最大化
- 表面処理の過剰仕様回避と保管条件の整備
制約とリスク管理
片面基板は高密度BGA、差動高速伝送、厳格なインピーダンス制御には適用が難しい。熱源の集中や大電流配線では銅剥離・温度上昇に注意し、熱拡散パターンやヒートシンクで対処する。電気安全の観点では、電圧区分や汚染度に応じたクリアランス・クリープ距離を設計段階から確保し、絶縁材料の耐トラッキング性にも配慮する。規格面ではIPC-2221、IPC-A-600等の一般ルールを拠り所に、製造委託先の実力値に合わせた設計ルール表を用意することが肝要である。