濁度計
濁度計は、水・飲料・排水・プロセス液体中の浮遊微粒子による光の散乱または減衰を測定し、液体の視覚的なにごりを定量化する計測器である。上水や下水の水質管理、ボイラ給水の監視、製造ラインでのろ過・凝集プロセス制御、食品・医薬・半導体洗浄工程など、広範囲で用いられる。測定は主に散乱光(ネフェロメトリ)と透過光(ターボメトリ)の光学原理に基づき、国際規格に準拠した単位で表示される。適切な機種選定と校正・保守は、プロセス安定化と法規・規格適合の双方に直結する。
測定原理と単位
散乱光法は試料に光を照射し、粒子で散乱した光を検出する方式である。特に90°方向の散乱光を検出するネフェロメトリは低濁度で感度が高い。透過光法は入射光の減衰を測る方式で、中~高濁度の広範囲測定に適する。表示単位は「NTU」「FNU」「FAU」などがある。一般に「NTU」はタングステン光源を用いるネフェロメトリ由来の表示、「FNU」は近赤外光(おおむね860nm)での散乱に基づく表示である。色度や粒径分布、気泡は光学応答に影響するため、サンプリング条件の管理が不可欠である。
主な方式と適用領域
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90°散乱(ネフェロメトリ):低濁度域の高感度監視に適し、上水の濁度管理や膜ろ過のブレークスルー検知に用いられる。
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比率(ラシオ)方式:90°散乱・前方散乱・透過など複数信号の比をとり、色度や光路汚れの影響を低減する。
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透過(ターボメトリ):高濁度域で直線性に優れ、沈殿・濃縮工程やスラリー系でのトレンド監視に有効である。
構成要素と機能
濁度計は、安定化された光源(LEDまたはタングステン)、光学セル(バイアルまたはフローセル)、検出器(フォトダイオード等)、信号処理回路、表示・出力部で構成される。オンライン型では自動洗浄ワイパー、気泡除去チャンバー、温度補償、ゼロ機能、アラーム・リレー、アナログ(4-20mA)やデジタル(Modbus、HART等)出力が実装される。プロセス用途では耐薬品性のある配管材やOリングの選定も重要である。
校正とトレーサビリティ
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ゼロ調整:超純水またはゼロ液でゼロ点を確認する。気泡・汚れの影響を排除するため、セルの清浄性を担保する。
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スパン校正:ホルマジン標準液(Formazin)を用いて既知濁度点で校正する。標準液は経時変化があるため、有効期限・保管条件を遵守する。
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検証:日常点検では標準フィルタや二次標準液で点検し、ドリフトや光学窓の汚染を早期検出する。
設置と運用の勘所
オンライン計測では、バイパス配管にフローセルを設け、安定した流量・圧力・温度を確保する。気泡は擾乱要因であるため、デガッサーや気泡トラップ、配管レイアウト(上向き配管を避ける等)で抑制する。サンプリングでは沈降やフロック破壊を避け、代表性のある流れを採る。ラボ測定では容器外面の汚れや指紋を除去し、光学窓を一定方向に揃えるなど、再現性確保のための取り扱いを徹底する。
選定の着眼点
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測定レンジと分解能:対象プロセスの濁度域(超低濁度~高濁度)に適合する仕様を選ぶ。
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測定方式:色度影響の大小、低濁度感度、上限レンジ、汚れ耐性などプロセス特性に合致させる。
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耐環境:IP等級、配管圧力・温度、薬品耐性、必要に応じて防爆適合を確認する。
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保守性:自動洗浄(ワイパー・超音波)、工具レスのセル交換、校正の簡便さ、消耗品コストを評価する。
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接続性:4-20mA、パルス、リレー、フィールド通信(例:Modbus、HART)やデータロギングへの対応。
適用例と指標の読み方
濁度計は、上水処理での凝集・沈殿・ろ過の管理において微小な変動を捉え、膜ろ過では原水変動や膜ファウリング兆候の早期検知に寄与する。ボイラ給水・復水の監視では固形物混入を警戒し、食品・飲料ではろ過安定性や洗浄完了の判定に使う。連続監視ではトレンドの滑らかさやノイズ特性を観察し、外乱(原水流量・温度・化学薬品注入)との相関で原因を切り分ける。アラーム設定はプロセスの自然変動幅と制御目標を踏まえて決める。
測定誤差とトラブルシューティング
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色度・着色:吸収による見かけの低値・高値を招く。近赤外採用や比率方式で影響緩和を図り、必要に応じて前処理(脱色)を検討する。
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気泡:散乱や反射で値が乱れる。脱泡、背圧付与、静圧確保、配管見直しで抑制する。
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沈降・凝集:サンプル滞留で粒度分布が変化する。フロー条件と滞留時間を管理する。
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光学窓の汚れ:オフセットや感度低下を招く。定期清掃と自動洗浄機構の活用で安定化する。
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温度・屈折率差:光学応答に影響する。温度管理と試料条件の標準化で再現性を高める。
保守計画とデータ品質
保守は「日常点検(外観・ゼロ確認)」「定期清掃(光学窓・フローセル)」「定期校正(標準液)」「年次点検(光源ドリフトや検出器感度の確認)」の層で組み立てる。SOP化し、校正記録と追跡性を維持する。ロギング値は外乱イベントや処理条件と合わせて保管し、ヒストリカル解析や品質監査に備える。異常検知では移動平均や分位点監視などのシンプルな統計指標が有効である。
用語と表示に関する注意
NTU、FNU、FTU、FAUは装置原理・光源・規格の違いで読み替えが生じる。仕様書の単位定義、光源波長、散乱角度、準拠規格を確認し、施設や工程内で単位を混在させない。試験成績書・SOP・監査文書では、使用した装置形式と校正方法を必ず明示する。