漏水|建築設備の漏水原因・診断・対策

漏水

漏水とは、配管、貯水槽、建築設備、上下水道網、プラント配管などから意図せず水が外部へ逸脱する現象をいう。圧力損失や流量不足、構造材の劣化、衛生・安全・生産性の低下を招くことから、工学的には「発生メカニズムの同定」「検知・位置特定」「影響評価」「恒久対策」という一連の管理サイクルで扱うべき事象である。材料学(腐食・応力割れ)と流体工学(圧力脈動・キャビテーション)、土質・建築(不同沈下・目地劣化)にまたがる総合的理解が必要となる。

原因とメカニズム

漏水の主要因は、(1)材料劣化(一般腐食、孔食、隙間腐食、応力腐食割れ)、(2)接合部不良(ガスケット・パッキンの圧縮永久歪み、溶接欠陥、ねじ緩み)、(3)荷重・変位(地盤沈下、熱膨張・収縮、振動、耐震性能不足)、(4)圧力事象(水撃作用による過渡過圧や負圧)、(5)外的損傷(掘削・衝撃)である。微小亀裂や毛細管経路が形成されると、毛細上昇や微差圧でも連続的に漏えいが進む。内圧変動が繰り返されると疲労き裂が進展し、ある閾値を超えて急激な破断・噴出へと移行する。

配管材料ごとの傾向

炭素鋼管は内面腐食と電食に注意を要する。ステンレスは塩化物環境での応力腐食割れの管理が重要である。銅管は脱亜鉛腐食やピンホールが課題となる。硬質塩ビ(VP)や耐熱塩ビ(HT)は溶剤接着部の施工品質次第で漏水リスクが変わる。PE管は延性に富むが、引張集中や不適切な融着が弱点となる。内面ライニング鋼管はピンホール欠陥が起点となりうる。

兆候と影響

実務上の兆候として、系統圧力の慢性的低下、ポンプの運転時間増加・起動回数増、機器周辺の湿潤・結露、仕上げ材の膨れやシミ、カビ臭、土間や路面の局所沈下、電気設備の絶縁低下、水質(残留塩素・濁度・導電率)の異常が挙げられる。影響は、構造・仕上げの劣化、衛生・安全リスク、製造歩留の悪化、光熱水費の増大、設備停止による損失など多岐に及ぶ。

計測指標

  • 圧力降下試験:遮断弁で区画し一定時間の圧力保持を確認する。
  • 流量収支・DMA(District Metered Area):夜間最小流量の超過で漏水を推定する。
  • 水質指標:残留塩素、EC(電気伝導率)、濁度の変動を監視する。
  • 音響監視:音聴棒・相関式で音圧スペクトルを解析し位置特定する。
  • 表面温度:サーモグラフィで異常冷却パターンを検出する。

診断手法

初動は目視・聴診・局所湿度確認など非装置的手法で良い。次段として、音聴棒や相関式漏水探知器による伝播音の位相解析、赤外線サーモグラフィによる放射温度差の面検、地中レーダ(GPR)による空隙・洗掘の推定、色水・トレーサ(蛍光染料)投入、気密・水圧試験を組み合わせる。長期的にはBAS/SCADAやIoTロガーの時系列から、季節性・負荷依存性・突発イベントを特徴量化し、異常検知(ML/AI)を適用して微小漏水を早期発見する。

非破壊検査の活用

超音波厚さ測定で減肉分布を把握し、内視鏡(ファイバスコープ)で内面欠陥を確認する。GPRで管路直上の洗掘・空洞を推定し、赤外線で床・壁内の冷温パターンを抽出する。これらを重ね合わせることで、探索掘削の位置を最小限にできる。

対策と補修

応急はリーククランプやラバースリーブでの巻き付け、ソケット・ユニオンの再締結、パッキン交換、止水材(ウレタン・アクリル系)の注入などで流出を抑える。恒久対策として、劣化区間の配管更新、耐震継手や伸縮可とう継手の導入、内面更生(CIPP)やライニング更新、支持・防振の強化、防食テープ・犠牲陽極・電気防食の適用を行う。水撃対策としてサージタンクやエアチャンバ、緩起動・緩停止の制御最適化が有効である。

運用・設計上のポイント

  1. 接合部品質:トルク管理、面粗さ、シール材の選定と経年交換周期を明確化する。
  2. 配管応力:熱変位を見込んだループ/可とう要素、最小曲げ半径の遵守、支持間隔の最適化を図る。
  3. 固形物管理:ストレーナのメッシュ選定・差圧監視で異物起因の漏水を予防する。
  4. ドレン計画:水溜りや凍結を避ける排水計画と定期排出を組み込む。
  5. エア管理:ベント・エア抜きで負圧や空気嚙みを抑制する。
  6. 監視と保全:定期点検、夜間最小流量監視、劣化度に基づく予防保全(CBM/PdM)を実装する。
  7. 系統分割:遮断弁の戦略配置で区画隔離し、迅速な漏水切り分けを可能にする。
  8. 文書化:試験記録、補修履歴、材料証明を一元管理し、再発防止に資する知見を蓄積する。

リスク評価と経済性

漏水のリスクは、発生頻度と影響度(安全・品質・供給継続・法令順守・費用)で評価する。LCC(Life Cycle Cost)観点では、隠れコスト(追加揚水電力、薬品、清掃・廃棄、操業停止)を内訳化し、更新投資・監視強化・保全体制の最適点を探索する。クリティカル設備には冗長化(N+1)、バイパス配管、段階的更更新を計画することが望ましい。

関連規格・実務

試験・検査は、配管の水圧試験、気密試験、圧力計・流量計の校正、締結トルクの検証などを標準化する。建築・設備・水道の各分野で参照すべき規格・指針が存在し、施工計画書・検査要領書・チェックリスト化により漏水の未然防止と是正の品質を担保する。設計段階から運用・保全まで、データ連携と責任分界点の明確化が肝要である。