測定不確かさ|ISO/IEC GUM準拠の要点

測定不確かさ

測定不確かさとは、ある測定結果が真の値からどの程度ばらつき得るかを定量的に示す概念である。計測値そのものの「誤差」を一点で言い切るのではなく、観測・推定・モデル化・校正の不完全さを統合して、信頼できる範囲を与える。国際的にはISO/IEC Guide 98-3(通称GUM)に準拠した評価が広く用いられ、科学計測、製造品質管理、試験認証、検査合否判定において必須の基礎である。

定義と位置づけ

測定不確かさは、測定量の推定値に付随する、合理的に割り当てられた分散(ばらつき)の尺度である。結果は「値 ± 不確かさ(信頼水準)」の形で表し、数値は確率的解釈(カバレッジ)と結び付く。目的は「値の信頼できる範囲を明示」することであり、測定器の等級や規格適合性の記述とは区別される。

構成要素:型A評価と型B評価

測定不確かさは、統計処理に基づく型A評価(反復観測から得た標準偏差)と、校正証明書、仕様書、既知の理論・経験に基づく型B評価(確率分布仮定から換算した標準不確かさ)で構成される。最終的な標準不確かさは両者を二乗和平方根で合成する。

表示:合成標準・拡張不確かさとk因子

個々の寄与要因から求めた標準不確かさを合成して「合成標準不確かさ uc」とし、信頼水準を明確化するため「拡張不確かさ U = k·uc」を用いる。k≈2は正規近似で約95%カバレッジに相当する。これにより測定不確かさを実務者と顧客が共通理解できる。

評価手順:測定モデルと伝搬の法則

対象量yを入力量xiの関数y=f(x1,…,xn)として測定モデル化し、感度係数ci=∂f/∂xiにより不確かさの伝搬を評価する。相関が無い場合、uc(y)=√Σ(ciu(xi))2で近似する。相関がある場合は共分散項を含める。こうした体系により測定不確かさの透明性が担保される。

校正とトレーサビリティ

校正で得た指示誤差や係数は不確かさを伴う。国家計量標準へのトレーサビリティを確保し、校正証明書の不確かさを測定モデルへ適切に反映する。これにより、異なる場所・時期・装置で得た結果も、測定不確かさを通じて比較可能となる。

測定結果の表現と合否判定

結果は「y = ŷ ± U(k, 信頼水準)」で表す。製品規格の上限Uspec・下限Lspec測定不確かさを併せて判定すると、リスク(消費者・生産者危険)が明示できる。合否境界に近い場合は、kやサンプル数の見直し、測定条件の改善で意思決定の不確かさを低減する。

実務上の主な寄与要因

主因は再現性(環境・操作者・時間)、分解能、ドリフト、直線性、温度・湿度、試料均一性、治具クリアランス、ノイズ、量子化、近接干渉などである。各因子をモデルに落とし込み、確率分布(正規、一様、三角、U分布等)と標準化係数を選んで測定不確かさに換算する。

不確かさ予算(Uncertainty Budget)

要因、評価種別(A/B)、分布、標準不確かさ、感度係数、寄与分、自由度、備考を一覧化して表にまとめる。これにより寄与の大きい要因が特定でき、改善の優先度を立てやすい。予算表は測定不確かさの説明責任(アカウンタビリティ)を支える中核文書である。

自由度と有効自由度

型A評価は有限サンプルゆえ自由度νを持つ。合成後の拡張不確かさのkは、ウェルチ–サタースウェイト式で有効自由度νeffを推定し、t分布から決定する。これにより測定不確かさの信頼水準が厳密化される。

例:DMMの直流電圧測定

ディジタルマルチメータでDC電圧を測る場合、反復測定の標準偏差(型A)、分解能の一様分布換算、校正不確かさ、温度係数、リード抵抗の影響、ノイズ帯域幅などをモデル化し、感度係数で伝搬する。合成したucにk=2を掛けてUを得れば、報告可能な測定不確かさとなる。

よくある誤解と注意

①誤差と測定不確かさの混同(誤差は未知、後者はばらつきの推定)。②器差だけで十分という過小評価。③有効数字と不確かさの整合を忘れる。④再現性条件と反復条件の取り違え。⑤相関無視。これらは判定ミスや再現性低下を招く。

記録・報告の要点

測定目的、方法、装置・校正情報、環境、データ、モデル、分布仮定、相関、計算式、νeffとk、結果の表現、予算表、トレーサビリティを明記する。こうして測定不確かさの再現性と透明性が確保され、第三者審査にも耐える技術文書となる。

参考規格・指針

ISO/IEC Guide 98-3(GUM)、JCGM 100、校正指針、試験所認定の要求事項等を参照し、対象分野の技術規格と整合を取る。これにより測定不確かさは産業横断での比較可能性を担保できる。