温度センサ|微小な熱変化を確実に捉える

温度センサ

温度センサは、物体や流体、空間の温度を電気信号へ変換する計測要素である。測定対象との熱平衡を前提とする接触式と、熱放射を検出する非接触式に大別され、原理としては熱起電力、電気抵抗の温度係数、半導体のバンドギャップ電圧、黒体放射の法則などが用いられる。要求精度、応答速度、温度範囲、設置環境、保守性、信号取り回しを総合して選定するのが基本である。

原理と分類

接触式には熱電対、抵抗温度計(RTD)、サーミスタ、半導体ICがある。熱電対は異種金属接点で生じる熱起電力を利用し、RTDは主に白金素子の抵抗変化を検出する。サーミスタは酸化物半導体の抵抗が温度で大きく変化する性質を使い、半導体ICはトランジスタの順方向電圧などから温度を導出する。非接触式は赤外線放射をレンズで集光し検出器で受ける方式で、放射率や視野角の扱いが要点となる。

熱電対(Thermocouple)

熱電対はゼーベック効果により温度差をμV/°Cオーダの電圧に変換する素子である。K、J、T、N、R、S、Bなどの種類が標準化され、測温接点と基準接点の温度差を測る。広範囲(種類により高温域まで)に対応し、機械的に強く応答が速い。いっぽう絶対精度はRTDより劣り、基準接点補償(CJC)やノイズ対策が不可欠である。

  • 特長:高温対応、堅牢、小型化が容易、配線距離に比較的強い。
  • 留意点:熱起電力が小さいため微小信号の増幅とシールドが必要。
  • 設置:測温接点の熱抵抗を小さくし、不要な熱伝導経路を避ける。

抵抗温度計(RTD)

RTDは白金(Pt100、Pt1000など)の抵抗値変化を測定する。直線性と再現性に優れ、-200〜約850℃の範囲で高精度が得られる。2線式はリード抵抗の影響が大きいため、3線式または4線式で補償する。測定電流による自己発熱を抑える定電流源設計や等温配線が品質を左右する。

  • 長所:高精度・長期安定・校正容易。
  • 短所:素子が繊細で機械的衝撃や振動に弱い。
  • 回路:ブリッジ測定、4線ケルビン接続で高確度化。

サーミスタ(NTC/PTC)

サーミスタは温度による抵抗変化が大きく、感度と応答性に優れる。NTCは低温側で高感度、PTCは過電流保護や異常検知で有用である。非線形性が大きいため、直列抵抗やテーブル補間、数式近似による線形化を行う。一般に-50〜150℃程度の範囲で使われる。

半導体温度センサIC

半導体IC型はバンドギャップ参照などから温度を算出し、アナログ電圧、電流、またはI2CやSPIなどのデジタルで出力する。小型・低消費電力で、工場出荷時校正により±0.1〜0.5℃級の精度を実現する製品もある。周囲基板の熱拡散の影響を受けやすいため、レイアウトや熱的アイソレーションが重要である。

放射温度計・サーモグラフィ

非接触式は対象からの赤外放射を検出する。放射率、波長帯、視野角(FoV)、距離係数(D:S)、窓材の透過率、反射の寄与を考慮し、背景温度補償を行う。移動体や高温表面、衛生的に触れられない対象の監視に適するが、放射率の不確かさが主要な誤差源となる。

選定の要点

温度センサの選定では、要求仕様と環境条件を定量化し、実装・保全までを含めて整合させる。

  1. 温度範囲と分解能:最大・最小・通常運転域、必要最小分解能を明確化。
  2. 精度と安定性:許容誤差(%FSや±℃)、長期ドリフト、再現性。
  3. 応答性:熱時定数、流速・取付条件による遅れを見込む。
  4. 環境:振動、湿度、薬液、圧力、EMI/ノイズ、絶縁耐圧。
  5. 信号処理:配線距離、増幅、フィルタ、A/D、絶縁、診断機能。
  6. 保全:校正周期、交換性、在庫・入手性、トレーサビリティ。

誤差要因と対策

接触式では、測温体と対象の間の接触熱抵抗、熱井やシースの熱伝導、リード線抵抗、自己発熱、外来ノイズが主要因である。非接触式では放射率設定、視野内の不要物、背景反射、窓材透過率が影響する。設計段階で感度解析を行い、支配因子に対策を集中する。

  • 接触改善:熱伝導グリース、適正な押し付け力、十分な挿入長。
  • 配線対策:ツイストペア、シールド、3線・4線補償、低ドリフト増幅。
  • 自己発熱低減:測定電流の最適化、デューティ制御。
  • 放射率管理:表面黒化、材質テーブル、現場での実測補正。

保護管・熱井(サーモウェル)の設計

保護管は耐食・耐圧・耐摩耗を満たしつつ熱抵抗を抑える。先端薄肉化やテーパー形状で応答性を改善する。流体配管では挿入長を外径の約10倍以上とし、先端が主流部に位置するよう配置する。共振や流体励起振動を避けるため、支持と固有振動数に配慮する。

信号調整・インタフェース

RTDは定電流源と差動アンプ、熱電対は微小信号増幅とCJC、サーミスタは分圧やブリッジで扱う。A/Dは十分な分解能とサンプリング安定度を確保し、アベレージやローパスでノイズを抑制する。絶縁やサージ保護、自己診断(断線検知、範囲外検出)を備えると信頼性が高まる。

校正とトレーサビリティ

校正は基準との比較で実施し、氷点校正や恒温槽、固定点セルを用いる。不確かさは標準偏差、系統誤差、分解能、再現性を合成して評価する。証明書、校正条件、ドリフト傾向を記録し、現場での簡易検証(氷水、沸騰水、比較プローブ)を定期的に行う。

安全・規格・適合

温度センサを産業設備に適用する際は、機械・電気安全や防爆、化学物質規制への適合を確認する。高温部位の監視は安全機能(SIL、PL)に関わるため、診断機能付き入力、冗長配置、フェイルセーフ設計を行う。材料適合(例えば食品機器の接液部)やRoHS/REACHなどの制限物質要件も事前に精査する。

実装と運用の実務ポイント

現場では配線取り回し、端子箱の熱影響、等温化、湿気対策が測定品質を決める。制御用途では、応答遅れを見込んだフィードバック設計を行い、フィルタの遅れと制御安定性の両立を図る。調達時は型式、温度範囲、精度等級、シース寸法、リード長、コネクタ形状、校正証明の有無を明記し、交換時も同等仕様で管理する。最後に、温度センサの健全性を点検するルーチン(目視、抵抗値測定、オフセット確認)を運用に組み込み、長期の信頼性を確保する。