活線作業|通電状態のリスク管理と安全手順

活線作業

活線作業とは、電路が通電状態のまま機器の点検・交換・測定・調整などを行う作業をいう。停電が困難な設備保全や稼働連続性が重視される産業で選択されるが、電撃やアーク発生による熱傷・失明・機器損傷・系統停止といった重大リスクを内包するため、原則は停電(LOTO)を優先し、やむを得ぬ場合に厳格な手順と保護策を実装して実施する。

定義と適用範囲

活線作業は充電部に対する直接作業のみならず、近接作業(一定距離内に接近する行為)も含む概念である。低圧・高圧・特別高圧で危険度は大きく異なるが、低圧であっても短絡電流やアークエネルギーは致命的となり得る。対象は分電盤、動力盤、制御盤、配線器具、母線ダクト、ケーブルヘッド、計器類など多岐にわたる。

実施可否の判断(Hierarchy of Controls)

基本原則は「中止・代替・隔離・工学的対策・管理的対策・個人用保護具(PPE)」の順にリスク低減を図ることである。まず停電切替やバイパス回路、予備電源での冗長化など代替手段を検討する。それでもなお活線作業が必要な場合、遮蔽バリア、絶縁カバー、作業距離の確保、専用治具、誤操作防止のインタロック、作業許可制などを重層的に適用する。

リスクと事故メカニズム

電撃は人体経路に電流が流入することで心室細動・呼吸停止を誘発する。アークは短絡や接触によって気中に高温プラズマが生成し、爆風・金属蒸気・強光により熱傷・聴覚障害・眼障害を引き起こす。工具の落下や被覆損傷は短絡の典型誘因であり、誤検電や不適切な復電手順も重大事故の引き金となる。

作業計画と手順

活線作業の前提は文書化された手順書と作業許可(Permit to Work)である。作業範囲、回路図、一次・二次系の電位差、近接危険距離、アークリスク評価、代替策の検討経過を明記する。立入管理線を設定し、監視員を配置する。復電系統の誤操作を防ぐため、遮断器やスイッチの操作権限と表示を統一する。作業中は「一動作一確認」を徹底し、中断・再開時は要素別に指差呼称で再確認する。

検電・無電確認

停電が困難な場面でも、対象端子や隣接端子の電位状態を常に把握する。検電器は適合規格品を用い、使用前点検(活線で自己確認)→対象点検→再度活線確認の順に「テスト前後確認」を行う。静電容量やコンデンサ残留電荷がある回路は、抵抗器を介した放電と再検電を実施する。絶縁抵抗計(メガ)は活線作業に用いず、用途と手順を明確に区別する。

保護具(PPE)と絶縁工具

必要PPEは耐アーク衣、絶縁手袋、保護面・アイシールド、帯電防止安全靴、難燃インナーなど。工具は絶縁ドライバ、被覆スパナ、絶縁シート、短絡防止カバー、先端絶縁のテストリードを用いる。計測器はカテゴリ定格(例:CATⅢ/CATⅣ)を満たすものを選定し、リードの定格・状態を毎回確認する。

安全距離・遮蔽・等電位化

通電部周辺は絶縁カバーやバリアで露出を最小化し、不要な相手相・接地体との同時接触を避ける。トルク管理済みの仮固定治具を使い、片手操作・非利き手の背面保持で体幹を電路から離す。必要に応じて同一導体群の等電位ボンディングで電位差接触を避けるが、短絡を誘発しない配置・順序とする。

代表的な作業ケース

  • 盤内での計測:テストピンを優先し、露出端子には絶縁カバーを装着する。プローブの滑落防止を徹底する。
  • 配線器具の交換:通電側を確実に特定し、導通経路を短絡しない順序で結線する。端末処理は圧着スリーブ・端子台を用い、被覆長と圧着荷重を管理する。
  • 二次回路のリレー更新:コイル側・接点側の電位とバックアップ電源の有無を確認し、不要な誤動作を避ける。

管理的対策とヒューマンファクタ

作業前のKY(危険予知)とロールプレイで、誤挿入・工具接触・端子緩み・表示誤認などの失敗モードを洗い出す。名称・色・ラベリングの統一、図面改訂の即時反映、作業者の資格・熟練度に応じた複線チェック体制を敷く。コミュニケーションは標準用語で簡潔に行い、復唱で確認する。

品質・機能確認と復電

作業後は端子トルク、導通、位相・極性、保護継電器の設定、遮断器の整定、ラベル・封印、清掃(導電粉塵の除去)を点検する。復電は段階投入とし、計測器で異常電流・電圧降下・温度上昇を監視する。ログ、写真、トルク証跡、検電記録、是正処置を台帳化してトレーサビリティを確保する。

用語整理

活線近接作業:充電部に近接して行う作業の総称。停電作業:LOTOによる無電状態での作業。LOTO:Lockout/Tagoutの略で、エネルギー隔離と表示を統合した手順。検電:充電部の有無電確認行為。アークフラッシュ:短絡等で発生する気中アークの爆発的現象。これらの違いを明確に理解して活線作業の要否を判断することが安全の第一歩である。