波長分割多重(WDM)|光の複数波長を効率的に多重化

波長分割多重(WDM)

光ファイバー通信において伝送容量を大幅に拡張する方法として波長分割多重(WDM)が利用されている。これは一本の光ファイバーの中で異なる波長を複数同時に使い、それぞれにデータ信号を載せることで高いスループットを実現する技術である。もともとは通信トラフィックの増大に対応するために導入されたが、近年はクラウドやストリーミングサービスなどの普及に伴い、あらゆるデジタル社会の基盤を支える要となっている。

基本原理

波長分割多重(WDM)の基本原理は、プリズムによる光の分散と合成に似ている。各データ信号を違う波長に割り当て、マルチプレクサと呼ばれる装置でそれらの波長を一つの光ファイバーに合成する。伝送先では逆の工程を行うデマルチプレクサにより、元の波長ごとに信号を分離する。こうした仕組みを利用すれば、光ファイバーの物理的な制約を超えて複数のチャンネルを同時に送ることが可能となる。

種類と分類

波長分割多重(WDM)には大きく分けてCWDM(Coarse WDM)とDWDM(Dense WDM)の2種類がある。CWDMは比較的間隔の広い波長帯を用い、装置のコストや保守性を重視するシステムで用いられることが多い。一方でDWDMは波長間隔が狭く、高密度に波長を詰め込むため大容量伝送が可能となるが、高精度な制御や温度管理が必要となる。これらの特徴によって適用されるシーンが異なるため、導入の際には運用コストや拡張性、システム要件などを踏まえて選択される。

EDFAとの関係

大容量かつ長距離の伝送を実現する上で欠かせないのがEDFA(Erbium-Doped Fiber Amplifier)などの光増幅器である。EDFAは光信号を直接増幅するため、電気信号に変換しないまま増幅可能というメリットをもつ。特に波長分割多重(WDM)と組み合わせることで、多数の波長チャネルを効率良く増幅し、総合的な伝送帯域を飛躍的に向上させられる。こうした理由から現在の高性能な光通信システムでは、EDFAの導入が事実上必須となっている。

利点と課題

  • 同一の光ファイバー上で複数波長を利用できるため、ケーブル敷設コストを抑えながら帯域を拡張できる
  • 長距離通信では光増幅器を併用することで安定した高品質伝送が可能となる
  • DWDMのように波長感覚を狭める手法は大容量化に有利だが、精密な温度管理やデバイス技術が必要となる
  • システム構築時にはモジュールコストやメンテナンス性などを総合的に考慮する必要がある

通信インフラへの応用

現在のインターネットを支える基幹ネットワークや海底ケーブルは、ほぼ例外なく波長分割多重(WDM)技術を採用している。通信事業者は需要の増大に合わせて新たな光ファイバーを設置する代わりに、WDMを駆使して伝送容量を増やすことができる。またデータセンター間の通信やクラウドサービスとの接続など、多様なトラフィック要件がある場面でも波長単位で制御する仕組みによって柔軟なネットワーク運用が可能となる。

関連技術との相互作用

波長分割多重(WDM)はOTN(Optical Transport Network)などのプロトコル層とも深く結びついている。OTNは光レイヤーの上位でフレーム構造やエラー訂正を担うため、WDMのような大容量伝送と組み合わせることで信頼性と効率性の両立が図れる。また4K/8K映像配信や5Gのフロントホールなど高スループットを要求される新たな分野でも、WDM技術の柔軟な波長管理機能が導入されるケースが増えている。

運用上の注意点

波長分割多重(WDM)は大容量化を実現する手段である一方、波長ごとのパワーバランスや信号品質を維持するための細やかな運用管理が求められる。特にDWDMでは波長間隔が極めて狭く、レーザの温度変動や光学部品の経年変化による波長ずれがシステムに大きく影響する。また障害発生時には波長単位でのトラブルシューティングが必要となり、運用者には高度な知識と専門機器の扱いが要求される。このように扱いは難しい部分もあるが、高い付加価値をもたらす技術であることは疑いない。