比例制御弁|電気信号で弁開度を連続比例制御

比例制御弁

比例制御弁は、入力信号の大きさに比例して開度や圧力を連続的に変化させる制御弁であり、オン・オフのみの電磁弁と異なり流量・圧力・速度・位置を滑らかに制御できるのが特徴である。油圧や空気圧の流体回路に広く用いられ、成形機、プレス機、搬送装置、ロボットの把持力・速度制御、張力制御などで高い再現性と応答性を実現する。サーボバルブに比べ帯域はやや低いが、構造が簡潔で耐汚染性・保守性に優れるため、産業用途の中核的アクチュエータとして普及している。

原理と構造

比例制御弁は、比例ソレノイド(電流に比例した電磁力を発生)とスプール(またはポペット)、復帰ばね、必要に応じて位置センサ(例:LVDT)や圧力検出部で構成される。電流指令に応じてスプールが微小変位し、オリフィス有効断面積Aが連続的に変化する。流体が液体の場合、流量Qは概ねQ=Cd・A・√(2ΔP/ρ)で表され、気体の場合はISO 6358に基づく音速コンダクタンスCや臨界圧力比bで評価する。スプールの中立位置とポート重なり量(ゼロラップ/オーバーラップ/アンダーラップ)は微小域の感度とデッドゾーンを規定し、精密制御の要点となる。

種類(油圧・空気圧・電空)

  • 油圧比例圧力弁:一次側/二次側圧力を比例制御する。金型締付力や押圧力の調整に適する。
  • 油圧比例流量弁:ポンプ吐出や絞り量を連続調整し、シリンダ速度やモータ回転を制御する。
  • 比例方向切換弁:中立を含む両方向の流量を連続制御し、速度・位置制御系の基本要素となる。
  • 電空レギュレータ(空気圧比例弁):電気信号で二次圧を比例制御する。張力・締付・押付け力などの簡便な力制御に普及。

媒体(油/空気)、必要圧力・流量、可逆性、漏れ許容、応答帯域により最適な比例制御弁を選ぶ。空気圧は清浄・乾燥が前提であり、油圧は温度・粘度と清浄度管理が性能を左右する。

性能指標と評価

  • 直線性・ヒステリシス:指令-出力特性の比例度と履歴現象。一般に1~数%を目標にする。
  • デッドバンド/分解能:微小指令で流れ始める閾値と最小可変単位。ゼロラップ設計やディザで改善する。
  • 周波数応答・応答時間:-3 dB帯域やステップ応答。質量、ばね、流体慣性・容量が支配的。
  • 再現性・ドリフト:温度・摩耗・電源変動による零点ずれの小ささ。
  • 漏れ・内外部シール性:保持必要時の重要指標。油圧は微少漏れ不可避で回路設計が肝要。

取り付け規格は油圧ではISO 4401/CETOPが広く、記号表記はISO 1219に準拠するのが通例である。

制御方式とドライバ

比例制御弁の駆動は電流制御が基本で、0–10Vや4–20mAの指令をドライバで電流化する。スティックスリップ低減のため数十~数百Hzのディザ(微小振動)を重畳する。弁単体の開ループ制御は簡便だが、弁内蔵LVDTや外部センサ(圧力/位置/速度)と組み合わせた閉ループPID+フィードフォワードにより、ゼロ点ずれや流体特性変動を補償できる。ゲインスケジューリングやアンチワインドアップ、デッドゾーン補償は実機で有効な整定手法である。

選定ポイントと設計注意

  • 定格圧力・最大流量:余裕係数を見込み、差圧と許容圧損で配管口径を整合させる。
  • スプール重なり:ゼロラップは感度良好だが漏れ増、オーバーラップは保持性良、アンダーラップは応答性に寄与。
  • 圧力補償回路:負荷変動時の流量一定化に有効。
  • 媒体管理:油圧はISO 4406の清浄度管理、空気圧はISO 8573-1の粒子・水分・油分クラスを満たす。
  • 指令インタフェース:0–10V/4–20mA/PWM/フィールドバス(例:CAN)の適合。
  • 環境耐性:周囲温度、IP等級、耐振動・EMC、危険場所対応。
  • フェールセーフ:無励磁リターン、スプリングセンタ、非常遮断弁との組合せ。

また、油温・粘度変化はゲインに影響するため、ウォームアップや温調、粘度に応じた制御補償が望ましい。バックプレッシャやタンク背圧はリーク流量や応答に影響するので回路で配慮する。

主な適用例

  • 成形機・プレス:型締力・位置・速度のプロファイル制御。
  • 巻取り・張力:電空比例でローラ荷重や二次圧を連続制御。
  • 搬送・ロボット:把持力、ソフトグリップ、シリンダ速度の滑らかな切替。
  • 試験装置:荷重・変位の波形追従、耐久の再現性確保。
  • 車両・建機:走行・舵・作動油のスムーズ制御と省エネ化。

これらの用途では、センサと比例制御弁を組み合わせた閉ループ化により、ばらつき源(温度・摩擦・供給圧変動)を吸収し、品質とスループットを両立できる。

用語と記号の補足

  • デッドゾーン:微小指令に対し出力が変化しない範囲。
  • ゼロラップ/オーバーラップ/アンダーラップ:中立時のポート重なり量の違い。
  • 中立電流(Null):出力ゼロを与える電流。温度や摩耗で漂移する。
  • シャープエッジ・オリフィス:線形性と応答に寄与する開口形状。

符号・記号はISO 1219に従い、機能(圧力、流量、方向)と制御方式(比例、電気、ばね復帰)を図記号で併記するのが望ましい。

サーボバルブとの違い

比例制御弁は直動またはパイロット比例方式で構造が簡潔で耐汚染性に優れる。一方サーボバルブはトルクモータとノズルフラッパ/ジェットパイプで微小流量を増幅し高帯域・高分解能を達成するが、清浄度要求が厳しくコストも高い。目標帯域・精度・環境条件・保守性を総合評価して選定するのが工学的合理である。