構造設計
工学における構造設計は、荷重や環境作用に耐える部材・骨組を企図し、安全性、使用性、耐久性、経済性を満たすよう形状・寸法・材料・接合を定める体系である。力学原理(力のつり合い、変形適合)に基づいてモデル化と解析を行い、規格や基準に整合させて妥当性を検証する。近年はCAD/CAEとFEM解析、最適化・トポロジー設計、信頼性設計が一体化し、開発初期から品質を作り込む設計が普及している。
目的と基本概念
目的は「壊れない」「使いやすい」「長持ちする」を合理的コストで実現することである。これを満たすため、限界状態設計や許容応力度設計を用いる。外力に対しては強度と剛性、変形限度、安定(座屈)を満足させ、疲労、クリープ、腐食、温度も考慮する。モデルは梁・柱・板・殻要素に抽象化し、境界条件と荷重条件を明確化する。
荷重と作用
荷重は恒常荷重(自重・固定荷重)と可変荷重(積載・人荷重)、環境作用(風・地震・雪・温度)に大別される。設計では荷重係数を用いた組合せを設定し、最大応答に対して安全率を確保する。衝撃、熱膨張拘束、締結の予荷重も十分に扱う。
材料特性と選定
材料選定ではヤング率、降伏強さ、引張強さ、靭性、疲労限度、クリープ特性、比強度、比剛性、熱膨張係数、耐食性、加工性、入手性を評価する。鋼、アルミニウム、チタン、銅、鋳鉄、コンクリート、木材、ポリマー、FRP/CFRPでは異方性や欠陥の影響も考える。製造方法(鍛造、鋳造、圧延、積層、3Dプリント)や板厚・公差は性能とコストを左右する。
解析手法
初期段階では手計算や断面算定、梁理論、座屈理論で主要リスクを絞る。詳細設計ではFEM/FEAにより静解析、座屈解析、固有値解析、過渡応答、非線形(幾何・材料・接触)を行う。メッシュ独立性、境界条件の妥当性、収束性、検証・妥当性確認(V&V)を徹底する。
設計プロセス
設計は反復であり、要求から製造移管まで管理する。
- 要求定義:機能、性能、規格、寿命、環境条件、コスト・納期を明確化。
- 概念設計:荷重経路と主要断面を想定し、簡易解析で成立性を判定。
- 詳細設計:寸法・公差・材料・表面性状・接合を確定し、FEMで検証。
- 試作・試験:静強度、疲労、振動、環境試験でモデルを同定し補正。
- 設計審査:DR/FAでリスクと対策を合意し、変更管理を実施。
- 図面化とBOM:製造要件、検査基準、特殊工程を盛り込み移管。
安全率と信頼性
安全率は不確かさ(荷重ばらつき、材料ばらつき、モデル化誤差、使用条件の逸脱)を吸収する設計パラメータである。部分係数法では荷重・材料ごとに係数を割り当て、終局限界状態(ULS)と使用性限界状態(SLS)を別々に満足させる。信頼性設計では故障確率で目標信頼度を定量化する。
座屈と細長比
圧縮材は座屈で突然破壊に至る。細長比、端部条件、有効長、断面二次モーメント、局部座屈を考慮する。補剛、座屈拘束、断面最適化で耐力を高め、薄板・シェルでは初期不整と残留応力の影響も評価する。
疲労設計
繰返し荷重下では微小欠陥からき裂が進展する。応力集中(段差、穴、ねじ、溶接趾)を低減し、表面粗さや残留圧縮応力で寿命を延ばす。S-N曲線、Miner則、Goodman線図で評価し、ΔKと破壊力学も併用する。
接合設計
ボルトは軸力管理と座面硬さ、摩擦係数が要であり、せん断と引張の相互作用、緩み止め、疲労を評価する。溶接は脚長、溶込み、残留応力、熱影響部の脆化を考慮する。接着は界面強度、剥離、耐環境性、剛性分布を設計する。
振動と固有値
固有振動数と減衰は使用性と寿命に直結する。共振回避、動吸振器や制振材の適用、支持剛性の最適化、モーダル試験によるモデル同定を行う。回転体では不釣合い、軸受剛性、ギアメッシュ励振を考慮する。
製造性と品質
設計は製造・検査と不可分である。DFMAにより部品点数削減と組立性向上を図り、工程能力に見合う公差を設定する。重要特性の測定可能性を確保し、初期流動とフィードバックで品質を安定化する。ライフサイクルでは保全性とリサイクル性も考慮する。
図面記載の要点
寸法公差、幾何公差、表面粗さ、熱処理、塗装、検査規準、締結条件、識別番号を漏れなく明記し、変更履歴を管理する。3DモデルのPMI活用も有効である。