架空配電
架空配電は、電力を電柱や鉄塔上の導体(裸線または絶縁電線)で需要地へ供給する配電方式である。都市・郊外・山間部に広く採用され、配電用変電所からの高圧(6.6kVが一般的)を配電線路で送り、柱上変圧器で低圧(100/200V)へ変換して需要家に供給する。地中配電に比べて設備コストと復旧性に優れ、災害時も目視点検や応急復旧が迅速である一方、景観、騒音・電磁界、落雷・樹木接触・風害・着雪など自然外力の影響を受けやすい。配電計画では需要密度、信頼度目標、保護協調、電圧降下、饋電区間の開閉器配置、予備系統構成(ループ化・ネットワーク化)を総合的に最適化する。
系統構成と電圧階級
配電用変電所から伸びる饋電線は、放射状(ラジアル)を基本とし、開閉器を介して隣接フィーダと常時開閉点(N.O.点)を形成する。事故時は区間分割して非停電供給を図る。日本の配電高圧は6.6kV三相3線が標準で、需要家へは単相2線(100V)および単相3線(100/200V)または三相3線(200V)で供給する。負荷密度が高い中心市街地では高圧ループ化やスポットネットワークで信頼度を高める。
主要機器と構造
電柱(コンクリート柱・鋼管柱)、腕金、ピン・懸垂碍子、導体、開閉器(LBS、真空開閉器)、ヒューズ、避雷器、柱上変圧器、計器用変成器、サービスドロップなどで構成される。導体には硬アルミ撚線(ACSR等)や絶縁電線(CVT, PAS等)を用いる。交差箇所や密集地では絶縁電線が有利で、樹木接触や鳥害への耐性が高い。電柱は荷重計算に基づきスパン、張力、風圧、着氷荷重、クリアランスを設計する。
絶縁協調の要点
碍子の沿面距離、避雷器の保護レベル、開閉サージ対策を整合させ、雷サージに対するフラッシオーバ余裕を確保する。特に山間部や日本海側では等価雷撃数を考慮する。
電気方式と電圧品質
三相三線式を基本とし、需要側は単相負荷の不平衡を抑制するため相バランスを管理する。電圧降下は導体抵抗・リアクタンスと需要電流で決まり、フィーダ長、導体断面、タップ切換器(LRT, AVR)、低圧側でのSVR設置により規定範囲内(±5%目標など)に収める。高調波は整流器・インバータ負荷で増えるため、三相負荷の分散、直列リアクトルやフィルタで抑制する。
保護協調と系統監視
保護は変電所のリレーから区間ヒューズ・LBS・断路器まで時間・電流特性を整合させ選択遮断を実現する。高圧事故時は区間開閉で健全区間の電力供給を維持する。近年は配電自動化により、遠方監視制御(SCADA)、フィーダ端電圧監視、故障点標定、再構成自動化(FLISR)が普及し、瞬低や停電時間の短縮に寄与している。
接地と安全
中性点は多くが直接接地または消弧リアクトル方式ではなく、高圧配電では高抵抗接地・非接地が採用されることが多い。機器フレームはD種等の接地工事を施し、感電・地絡電圧上昇を抑える。
外力対策と信頼度設計
風荷重は地域別基準風速に基づきスパンと張力を設定し、台風時の導体ギャロッピングを抑制する。着雪・着氷地域では防振ダンパ、スペーサ、撚り戻し対策を施す。樹木接触防止のための定期伐採、鳥害対策カバー、塩害地域での耐食部材、沿岸部の塩分付着対策洗浄も重要である。
施工と保全
新設では用地協議、占用許可、交通誘導計画ののち基礎・建柱・架線・機器据付を行う。活線作業(ホットスティック、絶縁ゴンドラ)や充電状態での開閉器操作により停電影響を最小化する。保全では定期巡視、赤外線診断、部分放電監視、碍子の汚損度確認、腐食検査を実施し、劣化兆候に応じて更新計画を立案する。
分散型電源と需要家連系
太陽光・風力・蓄電池の普及により逆潮流や電圧上昇の管理が課題となる。インバータの系統連系保護(周波数・電圧・位相監視、単独運転検出)、無効電力制御(Q制御)により電圧品質と保護協調を維持する。配電側の電圧調整はSVR、SVR+静止型無効電力補償、オンロードタップで行い、潮流の時変動に追随する。
適用規格・法令と設計手順
電気事業法、電気設備技術基準および解釈、内線規程、JIS・JECを参照する。設計手順は①需要予測②路線選定③機械強度計算④電圧降下・短絡電流計算⑤保護協調⑥雷害・塩害対策⑦施工計画⑧保守計画の順に整理する。環境配慮として景観・騒音・生物影響評価を行い、必要に応じて地中化や景観配慮型の部材を採用する。
地中配電との比較視点
架空配電は初期費用・復旧性で優位だが、景観性と外力耐性では地中配電が有利である。地域特性とライフサイクルコスト、災害レジリエンス指標を用いて最適化するのが実務的である。