断熱サドル|保温・保冷された配管やダクトを支持するブロック

断熱サドル

断熱サドルは、保温・保冷された配管やダクトの支持点に設置する高剛性の断熱ブロックである。支持部で断熱材が潰れて厚みが失われることを防ぎ、配管の自重・内容物・被覆の荷重を構造体へ確実に伝達しつつ、熱橋の発生を抑制する。適切な選定と施工により、結露やCUI(保温下腐食)を低減し、長期の保温性能と設備信頼性を担保できる。

定義と役割

断熱サドルは、配管ハンガー、サドルバンド、Uボルト、シュー等の支持金具と組み合わせて使用する専用の「荷重伝達用断熱体」である。局所的な面圧で断熱材が圧縮・座屈すると熱損失と結露が増すため、所要の圧縮強度と寸法を備えたブロックで荷重を受ける。結果として断熱連続性を保持し、機械的支持と熱的性能を両立させる。

構造と材質

断熱サドルの材質には、高密度PIR、硬質PU、フェノールフォーム、カルシウムシリケート、グラスエポキシ積層板、樹脂+金属ライナー一体型などが用いられる。選定では圧縮強度、熱伝導率、吸水率、耐熱温度、耐薬品性、加工性を評価する。冷却ラインでは閉孔質で吸水しにくい材料、蒸気・高温ラインでは高耐熱・高強度材料が有利である。外装側にステンレスライナーを設け、クランプ力を広く均一に伝える設計も一般的である。

熱橋と結露の抑制

支持点は金具が介在するため熱橋が生じやすい。ここで断熱サドルが断熱厚を確保し、外装・防湿層を連続させることが重要である。冷水・冷媒配管では露点評価に基づき防湿層(テープ・シール材)を切れ目なく施工し、端部や貫通部は増し巻きで気密を確保する。微小な断熱欠損やすき間からも結露は発生し得るため、面取り・段差解消・ライナー処理で外装の連続性を担保する。

設計要件と計算の考え方

断熱サドルの設計は、(1)使用温度範囲、(2)荷重(管・流体・断熱・被覆・付加物)、(3)面圧と許容応力、(4)断熱厚の保持、(5)支持間隔、(6)熱橋評価、を満たすことが要件である。許容面圧は材料の長期クリープを考慮して設定し、金具締付トルクはそれを超えないよう管理する。ISO 12241等の手法で表面温度・熱損失・露点を確認し、必要に応じて厚さや材質を補正する。

支持間隔の目安

  • 小口径(〜50A):1.5〜2.0 m
  • 中口径(65A〜150A):2.0〜3.5 m
  • 大口径(200A〜):3.0〜5.0 m

上記は自重基準の一般的目安であり、保温厚・外装重量・流体比重・振動・地震・温度によるクリープを加味して見直す。必要に応じて二丁掛けやベース拡大で面圧を低減する。

施工の要点

施工では断熱サドルの位置決め、端部シーリング、防湿層の重ね代、クランプの当たり面を重視する。ブロックは円周方向に段差の出ない高さに加工し、Uボルトやバンドの角部にはライナーを介して面圧を分散させる。外装はシワ・ピンホールを避け、継ぎ目は水下側を重ねる。冷却配管では最終段で気密試験(石鹸水・減圧法等)を行い、結露の芽を事前に摘む。

結露・CUI対策のディテール

  1. ブロック周囲を防湿テープで360°連続被覆
  2. 端部・金具貫通部はシール材で二次止水
  3. 外装板金はブチルテープで重ね代を気密処理
  4. 点検可能な位置にはドレン・点検口を計画

CUI抑制の観点では、素地調整・下塗り・上塗りの系を支持金具・シューまで連続させ、浸水しやすい下向き継ぎ目を避ける。定期点検で変色・膨れ・発錆を早期に捕捉する。

規格・指針の参照

断熱サドルそのものの単一規格は少ないが、関連として配管保温の計算規格ISO 12241、熱伝導率宣言に関わるISO 13787、各種断熱材のJIS規格、建築設備の保温指針が参照される。要求性能は工事仕様書に明記し、圧縮強度・熱伝導率の試験成績書、使用温度範囲、吸水率、難燃性等の証憑で裏付ける。

選定手順

  • 使用温度域・環境(屋内外・薬品・塩害)を定義
  • 管径・保温厚・支持間隔から設計面圧を算出
  • 材料の圧縮強度・熱伝導率・吸水率で候補抽出
  • 金具形状(Uボルト・バンド・シュー)との取り合い確認
  • 防湿・外装の連続性が確保できる寸法を決定
  • 締付トルク・検査項目を施工計画に落とし込む

とくに冷熱系では、防湿層の連続性が確保できるブロック幅と端部処理スペースを確保することが、結露抑止に直結する。

よくある不具合と対策

  • 面圧超過でブロックがクリープ→締付トルク見直し・ライナー追加
  • 防湿切れ目から結露→テープ増し巻き・二次シールで連続化
  • 熱橋で保温性能低下→ブロック厚・材質の再選定、支点の熱絶縁ディテール改善
  • 錆汁・CUI→止水ディテールと塗装系統の連続化、定期点検の追加

施工後の初年度は温湿度の高い季節に重点点検を行い、結露や変形の兆候を早期に是正する。運用条件が変わる増設時には、既設断熱サドルの余裕度も合わせて再評価する。

適用分野

断熱サドルは、空調の冷温水、冷凍・冷媒、蒸気・高温油、化学プラントの各種プロセス配管、屋外配管ラックなど広範に適用される。振動環境では防振金具と併用し、熱伸縮が大きい系ではスライド・ガイド支持と組み合わせて、断熱と可動の両立を図る。