抵抗器
抵抗器は、電流を制限し電圧を分圧し、電気エネルギーを熱に変換する受動素子である。オームの法則 V=IR を満たし、回路のバイアス設定、信号のレベル調整、終端、フィードバック、時間定数の形成など幅広く用いられる。等価回路としては理想抵抗に直列インダクタンスと並列キャパシタンスが付随し、周波数上昇で挙動が理想から乖離する。設計では定格電力、最大使用電圧、許容差、温度係数(TCR)、ノイズ、パルス耐量、環境信頼性を総合的に選定することが重要である。
基本原理と特性値
抵抗器の基本関係は V=IR と P=VI=I^2R=V^2/R である。直列・並列合成、分圧比、ブリッジ回路などの解析に用いられる。抵抗値は公称値と許容差(例:±1%、±5%)で表し、系列は E24、E96 など対数間隔の標準系列に従う。温度による変化は TCR(ppm/°C)で定義され、金属皮膜は低TCR、炭素系は大きめのTCRを示す傾向がある。直流測定ではケルビン(4端子)法が低抵抗の精密測定に適する。
定格(電力・電圧・温度)とディレーティング
定格電力は自由空気中での連続許容損失を示し、サイズと基材の熱拡散能に依存する。一般に 1/8W、1/4W、1/2W、1W などが用いられる。最大使用電圧は抵抗値と無関係ではなく、皮膜破壊やアークを防ぐための上限である。周囲温度上昇に伴い許容電力を低減するディレーティングが必要で、代表的には 70°C 以降で直線的に 0% へ向かう特性を採る。短時間のパルスは平均電力内でも抵抗体や端子の熱時定数により破壊を招くため、パルス許容曲線で評価する。
種類(固定・可変・特殊)
抵抗器は構造と材料により多様である。固定抵抗には炭素皮膜、金属皮膜、巻線、厚膜(チップ)があり、金属皮膜は低ノイズ・高精度、巻線は高電力・低温度係数だが高周波でインダクタンスの影響を受ける。可変抵抗はポテンショメータやトリマで、機械可動接点の摺動による雑音や寿命が設計要件となる。特殊用途としてヒューズ抵抗、サーミスタ(NTC/PTC)、光可変(LDR)、高電圧用グレーズ、精密ネットワーク(RN)などがある。
シャント抵抗(電流検出)
低抵抗(例:1mΩ~100mΩ)で電流検出に用いる。発熱が大きく、温度上昇による誤差を避けるため低TCR合金と大きめの実装パッド、4端子構造、ケルビン配線を採る。レイアウトではホール電圧やグランドの電位上昇を最小化する帰還位置が重要である。
高電圧抵抗
数百V~数kVの分圧やスナバに用いる。体積抵抗率が高く、電界集中を避ける形状設計と長いクリアランス/沿面距離を要する。表面汚染や湿気でリークが増えるためコーティングやポッティングが効果的である。
ヒューズ抵抗
通常時は抵抗として機能し、過電流時には意図的に開放して二次災害を防ぐ素子である。安全規格に適合した溶断特性と回路の突入電流・サージ条件を整合させる必要がある。
周波数特性と寄生成分
抵抗器は高周波で直列インダクタンス(Ls)と並列容量(Cp)の影響を受ける。巻線は Ls が大きく共振や位相遅れを生む。チップ厚膜は端子間の Cp により MHz 帯からインピーダンスが低下する。高速差動終端やRFでは薄膜抵抗やスパイラル抑制構造を選び、実装ではリード長・ランド形状・リターンパスを最短化して寄生を抑制する。
許容差・TCR・ノイズ
許容差は初期精度、TCR は温度変化の追随、長期安定度はドリフトで評価する。ノイズには熱雑音(ジョンソン雑音)と材料起因の 1/f 雑音があり、炭素系で大きく金属皮膜や薄膜で小さい。熱雑音電圧は √(4kTRB) で与えられ、帯域 B、温度 T、抵抗 R に依存する。精密アナログでは低TCR(±5~25ppm/°C)、狭い許容差(±0.1% 等)、低ノイズの薄膜が適する。
表示方法(カラーコード・型式・SMD寸法)
リード品はカラーコードで値・倍率・許容差を示す(4帯/5帯)。SMD は印字省略が多く、部品表と位置管理が重要である。寸法は 1005(0402)、1608(0603)、2012(0805)、3216(1206) などの EIA/JIS 表記が一般的で、サイズは熱容量と定格電力に直結する。型式は抵抗値、許容差、TCR、包装、定格で構成される。
実装・測定・設計留意点
抵抗器の熱はランドへ拡散するため、放熱に寄与する銅面積とビア配置が温度上昇を左右する。はんだのウィッキング差は抵抗値シフトを招くため左右対称のパッドが望ましい。測定では低抵抗は 4端子、絶縁抵抗はガードを用いる。分圧器はトラッキングTCRや自己発熱の相殺を考慮し、差動終端は特性インピーダンス整合とフットプリントの対称性を確保する。高圧ではクリアランス、汚染度、コーティングを設計に織り込む。
信頼性・故障モードと安全
代表的故障は開放、短絡、抵抗値ドリフトである。原因は過電力、サージ、はんだクラック、硫化(Ag 系端子で顕著)、湿熱、腐食などである。対策としてディレーティング、サージ保護、硫化対策端子、コーティング、コンフォーマルコート、適切なクリアランスの確保を行う。安全上は火災拡大を防ぐヒューズ抵抗や難燃基材の採用、発熱部近傍の樹脂材選定、故障時のエネルギー経路設計(安全側へ開放)が重要である。