抵抗|オームの法則で動作する受動素子

抵抗

抵抗は、導体中の電荷の移動を妨げる性質であり、電圧と電流の比例関係を与える回路定数である。記号はR、SI単位はΩ(オーム)である。金属ではキャリアの散乱(格子振動・不純物・欠陥)によって抵抗が生じ、半導体ではキャリア濃度や移動度の温度依存が大きく寄与する。マクロにはオームの法則V=IRで表され、部品としての抵抗器は定数・可変・温度依存(NTC/PTC)など多様である。また抵抗はJoule熱P=I^2Rを発生し、電力定格や熱設計が重要となる。測定面では2線法に加え、導線・接触の影響を除く4端子(ケルビン)法が用いられる。

物理的定義と幾何学依存

抵抗Rは、材料固有の抵抗率ρと幾何寸法でR=ρ·L/A(Lは長さ、Aは断面積)と表される。微視的には電場によるキャリアのドリフトと散乱過程のバランスが有効移動度を決め、それがρを規定する。単位はΩ、実務ではmΩ、kΩ、MΩの接頭語を用いる。導体の配置・表面状態・温度・機械応力なども実効抵抗に影響する。

導電率とコンダクタンス

導電率σはσ=1/ρであり、回路量としてのコンダクタンスGはG=1/Rである。頻用されるコンダクタンス抵抗の逆数で、並列合成の直感に優れる。材料設計ではσ向上(高キャリア密度・高移動度)が抵抗低減に直結する。

直流回路でのふるまい

  • 直列合成:R_total=R1+R2+…(電流一定で電圧分割)。
  • 並列合成:1/R_total=1/R1+1/R2+…(電圧一定で電流分配)。
  • 分圧:V_out=V_in·R2/(R1+R2)。バイアス・基準生成に利用。
  • 発熱:P=I^2R=V^2/R。定格超過はドリフト・断線・焼損を招く。

等価回路と源変換

線形領域の抵抗はテブナン(V_s,R)とノートン(I_s,R)に等価変換できる。小信号解析では非線形素子の微分抵抗r_d=dV/dIを抵抗として扱い、バイアス点近傍の線形近似を用いる。

交流・周波数依存と位相

交流では抵抗はインピーダンスZの実部であり、Z=R+jXで表される。純抵抗負荷は位相差φ=0で有効電力のみを消費し、無効電力はゼロである。周波数が高くなると配線・部品の寄生成分により実効Zが変化する。関連概念としてインピーダンスリアクタンス周波数力率がある。

スキン効果と寄生成分

高周波ではスキン効果により電流が表皮に集中し、導体断面の有効Aが減少して抵抗が増加する。さらにリード・パターンの寄生L、素子間の寄生Cにより、見かけの抵抗は周波数で変わる。終端やダンピング設計ではこれらを含む等価回路を前提に最適Rを選定する。

温度特性と材料

金属抵抗は一般に正の温度係数(TCR>0)を持ち、半導体やカーボンは負のTCRとなりうる。NTC/ PTCサーミスタは温度検出や保護に用いられる。超伝導では臨界温度以下で抵抗がゼロに近づく。実装では温度上昇に伴うドリフト、自己発熱によるTCR見かけ変化にも留意する。

代表材料と特徴

  • 薄膜(金属膜):低ノイズ・高精度、TCRが小さい。
  • 厚膜:コスト・耐サージに優れるがノイズが大きめ。
  • 巻線:高電力・低温度係数、だが高周波でインダクタンスが顕著。
  • 金属箔:超高精度・低ドリフト。
  • カーボン:安価・広い定格だがばらつきと1/fノイズが大きい。

抵抗器の規格と選定要点

選定では定格電力、許容差(例:±0.1%~±5%)、TCR(ppm/°C)、最大定格電圧、耐パルス、電圧係数、ノイズ特性、実装サイズ(例:0603, 0805)を総合評価する。E24/E96系列は標準値の離散化であり、設計の自由度と在庫性の折衷である。信号経路では低ノイズ膜系、電源シャントでは低Ω・高電力・低インダクタンス構造が有利である。

熱設計と信頼性

自己発熱P=I^2Rに対し、実装の熱抵抗θ_JAを考慮して温度上昇ΔT≈P·θ_JAを見積もる。周囲温度上昇時はデレーティング曲線に従い使用範囲を制限する。サージ・パルスはエネルギE=∫p(t)dtで評価し、過大な場合は断線・抵抗値変化・クラックなどの故障モードとなる。

測定法と校正

一般のDMMは2線法で測るが、リード・接触抵抗が無視できない低Ω領域では4線(ケルビン)法を用いる。微小抵抗は大電流ソースと精密電圧計でシャント法、超高抵抗は静電計・ガードリングでリークを抑える。抵抗率は四探針法で評価される。交流測定ではLCRメータでZを測り、RとXを分離する。

ノイズと長期安定性

熱雑音(Johnson-Nyquist)はスペクトル密度√(4kTRB)で与えられ、温度・帯域・抵抗に比例する。カーボン系では1/fノイズが支配的となり、精密計測では薄膜・箔の採用が有効である。吸湿やはんだ熱、自己発熱は長期ドリフトの要因であり、封止・パターン設計で抑制する。

応用例

  • 電流検出:シャント抵抗でI=V/Rとして測定。実効値演算と併用。
  • プルアップ/プルダウン:論理レベルの安定化と入力バイアス。
  • 終端・ダンピング:伝送線路の反射抑制、リンギング低減(Z0に整合)。
  • ヒータ:Joule熱を利用した安定熱源。
  • バイアス・フィードバック:利得・時定数の設定、雑音最適化。
  • AC電力:皮相電力力率周波数の文脈で純抵抗負荷は有効電力のみ消費。
  • 回路パラメータ:インピーダンスリアクタンスアドミタンスと併せて設計最適化。
  • 計測系:基準分圧、ブリッジ、センスラインでの4端子抵抗活用。